新年のごあいさつに行く理由。

私は毎年新年に、
自分が独立する前に勤務していた会計事務所の先生のところにだけ、
新年のごあいさつに行っています。今日はその理由について。

当時よく通っていたお店。夜は居酒屋になるので、おいしい日本酒がずらり。

税理士法人中央総研

税理士の中には、独立する前、
いくつかの事務所をわたり歩いて経験を積む人もいますが、
私は一か所だけ6年間の勤務・修行の後に
独立開業させていただきました。
その修行していた事務所は、
滋賀県の税理士法人中央総研(当時、山川会計事務所)です。
今は滋賀県で3本の指に入る規模の事務所(ひょっとしたら滋賀No.1)に成長してます。
その事務所の会長(1年半ほど前に引退されました)でいらっしゃる
山川晋先生のところへ独立以降17年、
毎年欠かさず新年のご挨拶に行ってます。

その事務所を円満に退社できたこと、
そしてその後も良好な関係性をもってお付き合いさせていただいていることを
誇りに思っています(退社後その事務所の新年会に呼ばれたのも、数十年の歴史で私が初めて)。
これまでその事務所を退職して独立している税理士もとても多いですし、
その何名かとは今でも個人的に関係を持っています。
しかし毎年今でも「山川先生詣で」をしている人は
私くらいなんじゃないかと思います。

そんなレアな存在になっていることを改めて振り返り、
なぜ今でも新年ご挨拶の訪問を欠かさないのか、
その理由を自分なりに整理してみました。

純粋に感謝の意を示すため

私は大学卒業後から独立するまでの間、
社会人として税理士として経験を積んだのは、
先ほどお話しした通り、山川先生の元だけです。
ですから私の会計人・税理士・コンサルとしての根っこは、
やはり山川先生の思想でできあがっています。
そしてそれがあるからこそ今こうして、
一税理士・一コンサルとして独り立ちできています。

我々の業界、独立の際には喧嘩別れになっていたり、
そこまでの状態になっていないにしても、
勤務していた事務所の先生に対する感謝の念を持っている人が少ないように思います。
確かに一従業員として勤務している時代にはいろいろと不満もあるでしょう。
私もめちゃ理不尽に怒られたこともありますし、
干されたこともあります(笑)。
そこの部分だけ取り出したら感謝なんてことにはならないと思うのですが、
それでもやはり、自分の基盤となるものを与えていただいたわけですから、
そこには感謝の思いしかありません。
そしてそういった感謝の思いを忘れてしまったら、
なんだか人としてとてもマズいと思うのです。

今、してもらったことに「ありがとう」ということは簡単です。
でも過去にしてもらったことに「ありがとう」というのは、
気恥ずかしい部分もありますし、
「なんで、今?」という感じで、
その思いを伝える機会というのはそうそうないと思うのです。
自分の親に、
「育ててくれて、ありがとうなぁ」
という機会がなかなかないのと同じです。
多分いきなりそんなことを親に言ったら、
「え?何、突然?気持ち悪い」みたいなことにしかならないと思うのです。
それでも感謝の思いというのは「思っている」だけでなく
「ちゃんと伝える」ということが大切なんじゃないかと思っています。
「新年」というのはその機会としてとても良いタイミングです。
「新年のごあいさつです。あの頃はありがとうございました。」と
とても自然な形で伝えることができるのです。

そして新年は1年に一回、必ず訪れます。
ですからこのタイミングで行うことで、
1年に一回は必ず感謝を伝えることができます。
「感謝の思いを伝えたい、そのうち行こう」では、なかなか実行できず、
本当に感謝していたとしても結果一度も訪れず、
なんてことにもなりかねないのです。
だから「新年」という機会を使わせていただくのは、
いろんな意味で適切なんじゃないかと思っています。

謙虚さを忘れないため

私も、いわゆる「アラフィフ」という年齢になりました。
そしてまがりなりにも「先生」といわれる立場でもあり、
「社長」と呼ばれる立場でもありますから、
もう今の私に説教をしてくれる存在は、ほぼいません。

しかし山川先生は違います。
山川先生は私の社会人・税理士としての父親のような存在だと思っています。
親から見ると私はどれだけ年をとっても
いつまでも自分の「子供」であるのと同じように、
山川先生から見れば私は、
いつまでたっても私の勤務時代の関係のままです。
だから今でも年に一回お伺いすると、私に
「谷口くん、こういう生き方しなあかんで」
ということをお話ししてくださいます。

勤務時代は反発する思いもありましたが、今のこの関係になると、
その先生の言葉がスッと心に入ってきます。
これが私にとってはとても大切なことのように思っています。
同じ言葉を他の人から聞いたり、本で読んだりするのとは、
また違った形で受け止めることができます。

謙虚さを忘れないようにすることは
日常的に意識して日々のルーチンにも組み込んでいるわけですが、
こうして年に一回、自分を(社会人として)育ててくださった方に会うことで
また違った形で謙虚な気持ちになることができます。

「じゃあ、頻繁に行けば?」ということになるかもしれませんが、
そこに「億劫さ」が出てしまうといけないので、
年に一回くらいがちょうどいいのかなと思っています(笑)

初心に帰ることができる

中央総研とその周辺の環境は、
まだ私が社会人として右も左もわからない頃から、
ある程度税理士として独り立ちできるまでの間を過ごした場所です。
今でもその場所を訪れると、そのときの至らない自分だった頃の記憶が、
いろいろと鮮明によみがえってきます。
懐かしさとともに、
「よくあんな若造に、仕事ができていたなぁ」
という思いがこみ上げてきます。
良い思いでだけでなく、むしろ、
大変だった・辛かった経験の方がたくさん思い起こされるわけですが、
それが自分を初心に帰らせてくれます。

今年、私は税理士になってちょうど20年になります。
そのことも実は山川先生から聞かされるまで忘れていました。
独立開業からの年数は数えていましたが、
税理士になってからは意識していませんでした。
20年も立つと流石になかなか初心に帰るのが難しくなってきます。
しかし私はありがたいことに、その「初心」に帰れる場所があります。
私は基本、生まれ育った場所でずっと今も生活をしていますが、
この修業期間中の6年間だけ、今住んでいる場所から離れて生活していましたから、
その周辺にいくだけで、当時のことを思い起こすことができます。
これも頻繁に訪れていると徐々に薄まってしまいそうなものですが、
1年に一回だからこそ、その場を訪れるだけで初心の思いを抱くことができるのでしょう。

当時、頻繁にお昼ごはんを食べに行っていたお店があります。
新年のごあいさつの時間をできるだけお昼に合わせて、
時間が合えば、できるだけこのお店でお昼ごはんを食べるようにしています。
そうやって当時の自分を振り返り、噛み締めるようにしています。
これも私を初心に帰らせてくれる、大切な年中行事の一環です。


こうしてまたこの1年間、新鮮な心持ちで新たなチャレンジをし、
毎日を豊かなものとしていきたいと思っています。

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