利益率よりも利益額が大切。

事業を行っていると、
当然皆さん、売上が気になります。
そして粗利率が気になることでしょう。
もちろん粗利率も大切ですが、それよりも粗利額が大切なケースもあります。
業種にもよりますが。

利益額が大切なわけ

売上が100円の商品があるとして、
その原価が40円であれば、粗利益は60円。
つまり粗利率は60%となります。

そして、原価が20円であれば、粗利益は80円。
この場合粗利率は80%になります。

このように基本的には粗利率が高いほど利益が出やすいため、
粗利率を大切にする、というのは基本的に間違いではありません。
しかし次のような場合はいかがでしょう?

あるお客さんが原価8000円の商品を1万円で買ってくれた、
という場合と、
別のお客さんが、原価1000円の商品を2000円で買ってくれた、
という場合です。

粗利率は前者が20%に対して、後者は50%もあります。
ただ、それぞれの粗利益額は、前者が2000円に対して後者は1000円です。

それぞれのお客さんに商品を販売する手間が変わらないとするならば、
どちらが会社にとって良いかというと、
当然前者の方となります。

このように小売店などで、
一点の商品販売に対する手間が変わらないような業態の場合には、
利益率よりも利益額の方が、より大切になってくるのです。

客単価が、ものを言う。

上記のような業態で考えると、
1点の商品で1万円の売上に対して粗利益が2000円だったときと
10人が1000円の買い物で粗利益が200円ずつだったときで、
損益計算書に現れてくる数値は、
売上1万円、粗利益2000円、という同じ数値です。

しかし手間は、単純計算で10倍。
手間が10倍ということは、人件費は10倍かかります。
人件費が多くかかると言うことは、
必然的にそれ以外の経費も少しずつ増えていきます。

結果としてこの両者は、
売上も粗利率(粗利額)も同じでも、
めちゃ儲かる会社と、全く儲からない会社に
わかれてしまうのです。

極端な話し、粗利率が90%の商品であっても、
客単価が100円であれば、それは全くもうかりません。
逆の極端な話し、粗利率が20%であったとしても
客単価が10万円であれば、こちらの方がおおいに儲かるのです。

ですから、こんな業態でものを言うのは、
実は客単価なのです。

例えばネット販売の事業で考えるとわかりやすいのですが、
10万円のものを買ってもらった場合と、
1000円のものを買ってもらった場合で、
その受注から入金確認・発送までの作業・手間というのは、それほど変わりません。

このように考えると、ネット販売の業態ではどのような事業をどのような方向に
持って行かなければいけないかということは、
おのずと明らかになってきますよね。

客単価というのは、一般的に考えられている以上に、
とても重要なものなのです。

人を雇う前に考えること。

先で例示したネット販売事業に限った話しではありませんが、
売上があがって忙しくなってくると、
経営者は人を雇用したくなります。

ただ、そのように安易に人を雇用する前にやるべきことがあります。

それが、
「客単価を上げること」
「仕事の手間を減らすこと」
つまり、「人一人当たり、一時間当たりの利益を高める」ということです。

これが充分でない状態であるということは、
売上は上がれども実は儲かっていない、ということです。

そしてその状態を放置したまま
人を雇用してさらに売上を上げようというのは、
その儲かっていない状態を放置して組織を拡大しようという暴挙なのです。

これは企業の「成長」ではなく「肥大」です。

組織は大きくなり、人の数が増えると、
それにともない組織も一般的には複雑化しますし、
それにともなって経営サイドが考えなければいけないことも増えます。

そして利益が確保できないからといって、
また社員を増員したり、店舗を追加出店するなどして、
さらなる膨張を繰り返すのです。

既存店舗が儲かってもいないのに店舗を増やすなどと言うのは、
儲からない店舗をコピーして再生産しているようなものですから、
外部から見ていてこれほど不安なことはありません。

ですから、これまで以上に売上を伸ばす前に、
そして、社員の増員を考える前に、
今の自社は、充分に儲かる仕組みが整っているか、
考えてみましょう。

そしてそのカギを握るのは、
人一人当たり・一時間当たりの粗利益、です。

会社が儲かっていない、または赤字なのに、
経営者も社員もなんだか忙しい、
という会社は例外なく、ここに大きな問題を抱えています。

「忙しいのに儲からない」
というのは、根本的に何か大きく間違えているのだ、と
強く認識してください。

普通は、
忙しいと、儲かっているものなのです。

タイトルとURLをコピーしました