いろいろ試して、うまくいったものを残す。

私は、経営計画の策定と、長期ビジョンを持つことを推奨していますが、
そこには、
「ビジョン達成の手段は柔軟に変更する、そして無理ならやめる」
といった柔軟性を持たせるのが
ベストであると考えています。

まだ試行錯誤、進化の途中だった、某ラーメン。

事業の成長・キャリア形成は偶発的。

詳しいことは知りませんが、
かつてスタンフォード大学の教授が調査を行い、
アメリカのビジネスマンで結果的に成功した人たちの、
そこに至るまでのキャリア形成のきっかけは、
80%が「偶然である」ということが明らかにされました。

もちろん彼らのほとんどは最初から、
キャリアプラン、つまりビジョンと計画を持っていたと推察されますが、
必ずしもその通りにはならなかったということです。

思ったようにならなかったことが積み重なって積み重なって、
様々な偶然が重なって、結果として今の「成功」がある、
ということです。

私も、別に成功しているわけではありませんが、
現状ある程度楽しく豊かな人生を歩んでいる今に至るまで、
それは「偶然」の積み重ねでした。
もちろん一定の努力もしてきましたが、それよりも
偶然目の前に現れたもの、訪れたものに相対しているうちに、
今の状態になった、というイメージの方が圧倒的に強い。

この調査で判明したビジネスマンのキャリアを、
事業に当てはめて考えると、
事業は偶発的な事柄に導かれて成長していく、
ということです。

これが真実である以上、
「絶対これしかない!」と方針を定めて、
その目標を達成するための手段を決めて、
それを頑なに実践するという
ガチガチで融通の効かない計画は
むしろ成長を阻害すると考えて差し支えありません。

やってみないとわからない。

計画段階で決定したことを頑なに貫き通すことが危険であるのは、
昨今の不確実性が強く、曖昧な世の中では、
とにかくやってみないことにはわからない、ということに基因しています。

最初に計画したこととその手段が、絶対に正しいと思っていると、
それによって結果が出なかったことが、手段の間違いではなく、
「努力不足」という根性論で片づけられる恐れがあります。

私もコンサルの現場で頻繁に、
「うん、やってみないとわかりませんから、とりあえずやってみましょう」
という発言をします。
「それでもコンサルか!」とお叱りを受けるかもしれませんが、
事業にも経営にも正解なんてものはありません。

正解のないものにムリに正解を求めて、
それが正解であると断じることはリスクでしかありません。

そしてその手段が間違っていたときに方向転換するまでに
時間を要してしまいます。
それならば、「やってみないとわからない」と考えて、
とにかくすぐに着手することです。

すぐに着手すればすぐに結果が出ますから、
その結果を踏まえて次の方向転換を考えれば良いのです。

ですからむしろ「これが正解です」という方が、
ウソだろうと思います。

生命の進化と同じ。

このように、たくさんのことを試してみて、
実際にうまくいったことは継続し、
ダメだったことは早く見切りをつけて撤退する、
ということを繰り返すのが、
結果として効率的でリスクが低いと考えられます。

ただ、いかに
「ダメなときにすぐ撤退する」
といっても、
同時に粘り強さ、というものは必要です。
どんなことでも新しいことは最初はうまくいかなくて当然ですから、
なんとかうまくいかないものかと試行錯誤を繰り返すことは大切です。
その中からまた偶発的な出会いやアイデアが生まれて、
次の新たな展開につながっていきます。

そして、この
「たくさん試してみてうまくいったものを残す」
というのは、
実は生命の進化と同じです。

進化は生物が、
「こんな方向に進化してやろう!」と念じて進むものではなく、
偶発的に生じた突然変異のうち、
環境に適したものが残る、という形で起こるもの。

ですから、
「スピード重視でいろいろ試して捨てて残す」
という手段は、
生物進化のメカニズムを経営に取り入れているということなのです。

そして偶発的に生じる突然変異の回数が多いほど、
環境に対応できるチャンスも増大します。
このことからも、
「とにかく試してみる」というアプローチの仕方が
非常に強力なものであるということが
わかっていただけると思います。

ガチガチに固めて根性論を元に、頑なに実践し続ける、というのは、
環境変化のスピードについていけず、滅びの道に進んでしまうかもしれません。

将来ビジョンを見据えて、まずは計画を策定し、
この計画を起点として、柔軟に、しかし粘り強く、さまざまなことにトライし、
事業のあり方を進化させていきましょう。
これがきっとこれからの事業計画のあり方であると思います。

タイトルとURLをコピーしました