高い給与を支払う前提で考える。

価格設定をするにも、損益計画を立てるにも、
社員さんには高い給与を支払う前提で考えておく必要があります。

原価計算は大切。

見積を求められたときに、
特に製造業などの場合は、
まず原価計算をするところから始めることが
多いんじゃないかと思います。

価格というのは、顧客が得られる「価値」をもとに決まるものですから
価格の決定は、そもそも原価を元に計算するものではありません。
少なくともそれだけを判断材料にするものではないでしょう。

しかしそうはいっても、
ある程度の基準みたいなものは必要ですし、
その価格設定で、会社としてどれだけの利益を残せるのか
把握することは必要ですから、
原価計算は必須です。

それなのに、案外ちゃんと原価計算していない会社って多いんですよね。
特に小零細企業の場合。

どの商品がどれほど儲かるものなのか把握していないと、
適切な販売戦略すら立てられませんから、
すべての商品に対して原価計算は必要です。

それができているとしても、その計算が何年も前になされたものを
そのまま使っている場合もあります。

昨今の資材価格高騰のようなことがなくとも、
結構原材料価格というのは変化しているものですから、
何年も前の情報を元に計算したものは、
もはや現状を示していません。

ですから面倒なことかもしれませんが、
こまやかに単価を修正しつつ、
現状に沿った原価計算を心がけましょう。

人件費をいくらで設定しているか。

こうして計算した原価計算をもとに、
そこに人件費(「加工賃」と表現される方もおられますね)を
いくら乗せるか、というのが大切です。

まずそれを適切に計算するには、
その製品・商品が顧客の元に届くまでに、
何人で何時間の労働時間がかかっているのか、
それを知っておく必要があります。

さらには、そのうえで、その時給をいくらで設定しているか、
というのが問題です。

最近とある経営者と価格決定の話しになったときに、
ひょっとしたらものすごく安い加工賃で計算しているんじゃないかと思ったので、
「人件費の時間単価をいくらで計算に入れてるんですか?」
と聞いたところ、案の定
「1200円です」
という返事が。

しかもその会社のパートさんの時給は900円台でしたので、
それでも高い金額で計算している気になっていたようです。

これって非常に危険ですよね。
できるだけ安い金額で潜り込もうという、
下請け根性が完全に刷り込まれた、染みついた状態です。

確かにその時給のパートさんだけで仕事が出来ているのであれば、
それで利益が多少は出るのかもしれませんが、
その計算によってはじき出された金額で商売をしている限り、
その時給を上回る給料を支払えない、ということです。

永遠にその会社で勤務している人は、
時給1200円を超えることはできないのです。

最終的に年収600万とか700万とか支払える会社になろうと思うならば、
時給3000円以上の計算で加工賃を考えておかないと、いけないわけです。
なんて夢のない会社だ、と言わざるを得ません。

いくらの給与を支払いたいのか。

決算書を見せていただいて、
その会社のことをあまり良く知らないときには、
私は必ず
「社員さん・パートさんはだいたい何人ですか?」
ということを確認するようにしています。

給与をその人数で割ってみて、
それがとても低い金額である場合には、
その辺からその経営者の人に対する姿勢がうかがえます。

どれだけ黒字が継続していて、立派な経営者扱いされていようとも、
社員さんの給与が低いと、
もうちょっと払ってあげてもいいんじゃないかなぁと思ってしまいます。

もちろん人件費というのは、簡単に下げることのできない固定費ですから、
安易にただ高くすればいい、というものではありませんけどね。

ただ、経営計画で中期計画を作成するときに、
給与を一人当たりいくらで設定するのか、というのは
非常に大切なこと。
これを今の現状の金額をもとに計算すると、
中長期的に現状よりも給料をあげてあげることは
できない体質の会社となってしまいます。

今の社員はこれから何年働こうとも給与があがっていかない、
ということでもありますし、
そもそも「高い給与を払ってあげられるようになろう」という志が、
そこから感じられないのです。

重ねて言いますが、ただ高ければいい、というわけではありません。
ただそこで自分が「支払ってあげたい金額」として計画上設定しておかないと、
それ前提の会社が出来上がってしまいますから、
その計画を超える給与を支払える会社には、
なかなかなることができないのです。

給与を高く設定すると、
それだけ限界利益はたくさん必要になりますから、
より高付加価値な経営が求められます。
そうして初めて、
「もっと付加価値の高い商品開発を行わなければ」
という発想にいたります。

前提の部分でケチケチするのではなく、
ぜひとも志の高いところで、価格設定・計画設計を考えるように
していただけたらと思います。

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