私が税理士・コンサルとして仕事をしていてよく感じることは、
多くの会社が、人の雇用についてものすごく安易だなぁ、ということ。
企業は人が命。特にスタートアップや小零細企業は、「誰とやるか」ということが
極めて重要です。
最近もまたそんな「安易な雇用」の場面に出くわしましたので、
今日はバックナンバーより、『人の雇用は計画的に』より。
----以下、2021/10/06の記事を転載。----
会社を経営すると、バイト・パート・社員(以下「社員さん」)を
雇用することになる可能性があります。
それも結構高い確率で。
今日は、計画性をもって人を雇用することについてお話ししたいと思います。
目次
人の雇用に関する疑問
人の雇用に対する疑問ずっと昔から抱えている疑問というか、
社会的な問題だなぁと感じているのが、
「景気が悪くなったら、人員縮小する。景気がよくなったら、新入社員をたくさん雇う」
という大企業の動きです。
これって日本のバブルが崩壊して以降30年以上
変わっていないんじゃないかと思います。
その間にも景気が悪くなったり良くなったりを繰り返しているわけですが、
すごく短期的な視点に思えてしょうがないんですよね。
景気が悪くなって売り上げが下がると、ずっとそのまま下がり続ける想定なんでしょうか、
結構な人員整理がはじまり、
学生の就職活動が厳しくなります。
そしてその後事業が回復したらいきたり雇用市場が活気づいて、
就職活動がいっきに楽になります。
また雇用し直すくらいなら、人員整理するなよ・・と。
もちろんそんなシンプルな話しでないことは百も承知です。
これが理想論に過ぎないこともわかっていってます。
でもやっぱりあらかじめ会社の売り上げが下がることを想定して、
もし売り上げを大きく落としたときには、
それ以前の内部留保で雇用を維持できる状態を作り上げる。
稼げるときにそれに必要なだけの会社の体力をつける!
というのが、本来あるべき姿であると思います
しかし大企業には株主の目がありますから、
単年度での利益をいかに最大化するか、または
赤字をいかに最小化するかということを意識しなければなりません。
だから実際には難しいところなのでしょうね。
どうしても短期的な視野でしか動けなくなってしまうのでしょう。
新人育成には時間がかかります。
ただ、新人が本当に仕事ができるようになるまで
最低でも3年、業種によっては5年~10年かかりますよね。
マニュアルである程度対応できるとしても、
本当のプロと呼べるレベルにはやはりそれくらいかかると思います。
私も3年目くらいで、当時の感覚としてはまともにお客さんと話しできるようになっていましたが、
10年目くらいであの時を振り返ると、
よくあんなレベルが低い状態で仕事してたな、と思います。
だから会社の景気が良くなったときにいきなり
新卒社員の門戸が開放されるのがナゾなのです。
その人たちが一人前になるのに3年くらいかかりますよね。
でも本当に社員さんの力を必要とするのは「今この瞬間」なんじゃないですか、
と思うわけです。
その何年か前に人員整理とかしてたのに・・。
その時の社員がいれば、もっと戦力になってすごい力が発揮できただろうにな、
と感じるわけです。
小零細だからできること
しかし、小零細企業であれば、きっとこれが可能なんじゃないかと思います。
小零細企業は、基本同族会社がほとんどです。
長期的視野にたって企業の運営を行うことができます。
ただ一般的なこれらの企業を見ていると、実に計画的ではないな、と思えます。
社員さんは会社に帰属するわけですから、その会社のために自分の力を尽くすことは当然です。
逆に会社は社員さんを雇用したからには、
その雇用を維持する責任があります。
だから、安易に人を雇用するのはよくないことだなぁと思っています。
恥ずかしながら自分の経験上も。
自社のビジョンによって変わる
社員さんを雇用すると同時に、雇用の責任が生まれるということは、
小さな会社が雇用をする(特に正社員を)ときには、
「将来的に自分の会社はどうなるのか」
ということをちゃんとイメージして、
それにあてはめて計画的に雇用を進めていくことが必要です。
大きくわけて次の2パターンがあるかと思います。
事業承継やM&Aなどで永続的な会社
基本的に会社の永続を前提としているわけですから、
3年~5年くらいのスパンでどの部門にどのような人材が必要になるのかを計画して
それに合わせて雇用していきましょう。
「今困ってるから、今来てもらう」
といったような雇用に走りがちですし、そうなってしまう現実はよくわかるのですが、
ずっとそのままでは「継ぎはぎ」のモザイク組織ができあがってしまいます。
今はしょうがなくとも、いずれは「計画的な雇用」になんとか切り替えましょう。
経営計画を策定する場合には、社員採用計画・配置計画を盛り込んでおくとよいかと思います。
自分で廃業する会社
一方で小さい会社である場合には、
「自分の代でこの仕事は畳むよ!」
ということもあろうかと思います。
これはこれでその経営者の考え方ですので否定はしませんし、
これはこれで一つの選択肢です。
かく言う当社:未来創造マネジメントもその方向性です。
この場合最も注意しなくてはいけないのは、
会社を畳むときの社員さんの処遇です。
自分は何歳で引退して会社を畳む予定なのでしょう?
そのとき社員さんは何歳なのでしょう?
こう考えると自分より極端に若い社員さんを雇用することは
なかなか難しくなりますよね。
もしそういった社員さんが現にいる場合には
その時のことを今から考えてあげてください。
「自分は会社を畳むから、あとは好きにせい!」ではあまりに無責任ですよね。
きっと本人も漠然とした不安を抱えていることかと思います。
中堅相当の年齢であっても他の会社でもちゃんと通用する社員さんに育ててあげて、
ちゃんと次の就職の世話をしてあげる必要があるのではと思っています。
ちなみにうちの会社は先ほど述べた通り私の代で終わりですので、
正社員の雇用はしません。
パートさんも追加雇用予定はありません。
しかし、もしちょっと年齢を離れたパートさんを雇用することになる場合には、
最終的に自分が引退した後でもそのパートさんの仕事が10年程度は維持できる、
という作りこみはしておこうと考えています。
そしたら私より10歳若くても最後まで面倒見れますよね。
雇用は先行投資だ!社会貢献だ!病にかからない
よくよく考えていただきたいのは、人を雇用する前に
「本当に雇用する必要があるのか」
ということです。
人を雇用する前にもっと社内の効率を高めて
今の人員でもっと利益を出せる体制を作れるんじゃないか、
ということです。
よく、「将来を見越して先行投資」という大義名分のもと、
赤字を垂れ流しながら新規雇用される方がおられます。
これは非常に危険なことと思います。
人を一人雇用しても大丈夫な収益状態を作ってからでも遅くはありません。
というかそういう状態でないと非効率な会社が膨張していくだけの組織となりますので、
いずれどこかで破綻する可能性が高いと感じます。
そしてもう一つたまに見受けられる大義名分は
「会社は大きくならねば!そのための社員雇用は社会貢献だ!」
というものです。
もちろんその考え自体間違っているわけではありません。
社員雇用は社会的にとても大切なことですから、その貢献は計り知れません。
しかし、それもこれも、その会社が正しく成長してこそです。
会社にはそれぞれの「適正な規模」というものが存在します。
大きくなればそれが正義、ということではありません。
肥大化することでかえって危機を招くことも大いに考えられます。
これは逆に多くの社員を不幸にする結果に陥りますから、注意してください。
安易に社員を雇用するのは厳禁です。
ちゃんと会社の収益性は確かなものであるのか。
そしてどんな将来絵図を描いたうえで社員さんを雇用するのか。
これを十分に意識していただきたいと思います。