小零細企業だからこそ生産性を高める必要がある。

ちょっと前から、日本の中小企業は生産性が低いということが言われるようになりました。
国がそのようなことに言い出して、政策に反映させようとしてきていることは事実です(政権が変われば変わるかもですが)。
その社会の動きに対して、私たち小零細企業はどのように考えて、どのような行動をとるべきなのでしょう?

私の生産性向上に寄与してくれている大切な道具たち

やっぱり生産性が低いと感じます

私自身20年以上この仕事を通してさまざまな中小企業の経営を見てきた中で、
確かに中小企業は生産性が低いなぁと感じます。
きっとそれは事実です。
だからこそ、その国の方向性を批判することよりも、その事実を真正面から受け止めて、
「自社の生産性を高くするにはどうするべきなのか」
これを自社の経営資産の隅から隅まで考えて改善を繰り返すことが必要なのではないでしょうか。
もし「中小企業の生産性が低い」ということが事実ではないとしても、
せっかく与えてもらった問題提起です。
これを機会に自社の経営資源を洗い出して、行動を起こすのが経営者として正しい行動ではないかと思います。

安易に人を雇いすぎ

私が見てきているなかでいつも感じるのが、
「少し安易に人を雇いすぎるなぁ」ということです。
もちろん人を雇用することは社会貢献ですから尊いことなのですが、
裏を返すとその人の人生を背負う責任が生まれるということになります。
あからさまに固定費は増えますからもっと慎重に考えるべきです。
それが「責任」というものだろうと思います。
社員に対する経営者の責任は、雇用する前から始まっているのです。
少し仕事がまわらなくなると、
「人手が足りなくなったから、人を雇用しないと」
と考え始める。
確かに人を雇用することは会社の成長にとって大切なことなのですが、まず考えるべきことは、
「果たして今の社員を100%活用しきれているのか」
「もっと今の社員だけでさらに生産性を高めることはできないのか」
「なぜ今の社員で仕事が回らなくなっているのだろうか」
ということだろうと思います。


「人を雇用することは社会貢献なんだから」
という美しい言葉で安易に人を雇用するのは判断基準が間違っています。
むしろ生産性が低いという事実にフタをして見えにくくしてしまうおそれがあり、
危険であると考えます。

社員さんの力を本当に100%引き出せているか?

会社としての生産性が極めて高い、例えば経営安定率(経常利益÷限界利益)が20%近くあるなどという状態であればなにも言うことはありません。
その状態が組織として仕組みとして実現できていて、そこで社員を雇用すれば、
会社は成長できる方向へ足を踏み出せます。
しかし現状、利益がほんの少ししかできていない状態でなんの知恵も使わずにただただ人を雇用すると、
社員の数に応じて無駄な仕事だけが増え、さらに非効率な組織が出来上がっていきます。
組織がどんどん非効率な状態で膨れ上がっていく。
このような組織に将来性はありません。
必ずどこかで破綻することになります。
そうなったときにはもとのスリムな状態に戻ることはほぼ不可能です。
もし戻せたとしても、大変な痛み(経営者・社員双方。特に社員)を伴うものとなります。
ですので、まず考えるべきことは、
「現状で自社の有する経営資産を本当に最大限に活用できているか」
と自身に問いかけることです。
「本当に私(経営者)は、自社の社員の能力を100%活かしきることができているだろうか?」
「今の社員の人数で、もっと利益率の高い組織を作っていくことはできないだろうか」
と問いかけてください。
その先に企業の生産性の成長があるのだろうと思います。
私の経験上、ほとんどの小零細企業がこれを実現できていません(自社も含めて)。
しかしこの事実は、まだそこに生産性を高めるポテンシャルがあるということですから、
そこは前向きにとらえて問題課題を整理して解決していくことに専念すればいいんじゃないでしょうか。

経営資源を活かし切る

経営資源とは大昔は「ヒト・モノ・カネ」。
その後これに「情報」が加わりました。
そして場合によってここに「時間」が付け加わります。
ただ、イマドキこれだけでは不足です。
これら経営資源のうち、「情報」と「時間」を除くと、これらは全て目に見える経営資産です。
目に見えない経営資産にも、目を向けてみましょう。
それが「ノウハウ」と「企業風土」。
会社がこれまで蓄積してきた技術とブランド。そしてその会社が培ってきた企業文化です。
この7つの切り口で、自社にはどのような経営資源があるのか、一度整理してみましょう。
実際に書き出してみるのが、一番良いと思います。
頭の中だけでは整理整頓は難しいですからね。
そのうえでそれら全てが最大限活用できているか、さらにそれらの一部を組み合わせてさらなる付加価値を生み出すことができないか、ということを徹底的に考えてみましょう。

さっさと『仕事』を終わらせる。

生産性のポイントはいかに短い時間で、いかに少ない人員で、
さっさと仕事を終わらせることができるか、ということです。
これまでの日本は、長い時間仕事をすることがえらいと考えられてきましたし、
いまでもその風潮が大いに残っています。
しかし「非効率」は、その延長線上にころがっています。
30年以上前のように単純に物を作っているだけでしたら、
時間と限界利益は比例しますし、効率性は逓増しますからそれでよかったのです。
しかし今は製造業よりもサービス業。
しかも知恵とアイデアを生み出すクリエイティブなサービスに価値があります。
長い時間働くことはえらいことでもなんでもありません。
むしろこういった仕事は長く働くと生産性が逓減していきますから、
アホなことをしていると言わざるを得ないのです。
全労働時間のうち何割が直接売り上げに直結する仕事に充てられているのか(便宜上この記事においてこれを「稼働率」と呼ぶことにします)。
これが9割とかなっていると、その企業には全く余裕がありません。
将来の成長に充てる時間がありません。
でも中小企業はこういった会社がとても多いように思うのです。
そして経営者サイドも「社員が直接収益に関わっている仕事が長い=遊んでいないから良い」と考えている人が多いように感じます(もちろん就労時間中にダラダラしているのは論外ですが)。
いかに稼働率を例えば5割以下とかにするか。その状態でいかに利益を稼げるようにするか。
ここにもっと心血注いでみませんか。
その先に、大企業をも超える生産性の高さが生まれます。
こうして余った時間を将来の投資に充てることで、
その会社に収益性の上方スパイラルが生まれます。
大企業だから生産性が高いのではありません。
私は大企業で勤務した経験はありませんから外から見聞きした印象ですが、
あまり何も考えていないとむしろ大組織ほど官僚主義に陥りますから無用な間接業務(例えば書類作成)などが増えて非効率になります。役所などがその悪い例です。
生産性の良し悪しは組織の大小の問題ではありません。
常にイノベーションを起こしている組織だからこそ、極めて生産性が高い状態が作られ、維持されていくのです。

文句を言っても始まらない

「中小企業は生産性が低い!」と指摘されて、
「いやいや、下請けをいじめてそれによって大企業は利益を出しているのだから、
大企業はそれで生産性が高いだけじゃないか」などと議論するのは本質ではありません。
少なくとも経営の現場では(政治運動の場では必要です)。
ただ、さまざまな中小企業を見てきた私からすると
残念ながら日本の大企業にはそんな会社が多いようにも思います(他の国のことは知りませんが)。
そう考えると大企業の生産性の犠牲になっているのが中小企業、という見方も
充分にできるとは思います。
そこで、中小企業はその状態に対して反逆する必要があります。
ただしそれは政治的な運動ではなく、
自社の商品・製品の付加価値と独自性を高めて、自社が「なくてはならない存在」に近づいていくことです。
そして、大企業に対し「我々をそんな扱いするヤツには売ってやらんぞ」と言えるようになる。
これが中長期的な中小企業の独立運動であると考えます。
「そんなん理想や」とおっしゃる方もおられると思います。
でも大企業はいじめてくるし、国はたいして守ってくれないし(実は結構守られてるとも思いますが)、という事実があるのであれば、
自身の力を高めて自立していくしかないのです。
「取引先に言われるがままではなく、自社独自の商品を開発し、価格決定権を有し、それを販売することで生産性を高める」
すごく楽しいことだと思いませんか。
最終的に小零細企業の生きる道はそこにしかないのでは、と私は考えています。
競争力のない会社には永遠に効率的な瞬間など訪れないのです。

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