売上を伸ばすのを、時間だけで解決しない。

事業が成長していく過程で、順調であれば売上が増えていきます。
これは素晴らしいことですよね。
基本的には売上が増えると共に、仕事量が増えます。
しかし、仕事が増えるとき、それを時間と雇用だけで解決するのはやめましょう。

売上の天井がすぐそこに。

売上が増えて仕事が増えてきたときに、
その分たくさん働けばよい!と考えている方はおられないでしょうか?
基本的にはそういうことですので、それ自体は間違いではありません。
しかし時間は、極めて貴重な経営資産です。
一日24時間と有限です。
そして小零細企業は人数が少ないのでトータルとしての時間が少なく、
これは経営資源が少ないということを意味します。
しかも、一度失うと二度と帰っては来ない、資源です。

そんな意味で「時は金なり」ではなく、
「時はお金にもかえられない」と考えるべき。

仕事が増えてきたときに、安易に
「その分たくさん働けば良い」
という風に考えていると、あっと言う間に時間がなくなっていきます。
そして時間がなくなるということは、
それ以上に売上を伸ばすことができなくなる、ということです。

いわゆる労働集約型の仕事は特にそうです。
時間の切り売りに近い仕事になりますから、
仕事量の増加と売り上げの増加が比例し、
売上の増加とそれに要する時間が比例します。

結果として、
「これ以上売上をあげられない!」
ということになります。

特に経営者だけでやっているような事業は、
「自分が働けばいい」という考えに陥りがちですので、
売り上げ増を働く時間だけで解決しようという傾向が強くなります。

そして現状の組織であげることのできる売り上げの限界が
すぐそこに来てしまうのです。
これでめちゃ儲かっているのであればいいのですが、
天井に届きつつあるのに利益がそれほど出ていないというのであれば、
それは大きな問題であろうかと思います。

どんどん儲からなくなっていく。

そして売り上げ増を働く時間だけで解決しようとすると、
「よし、人を雇用しよう」
という方向へ安易に進んでしまいます。

売上が増えて仕事が増え、人を雇用して組織が大きくなっていくのは、
確かに事業の成長とも言えますから、
これ自体はやはり素晴らしいことだろうと思います。

しかし安易に、
「人手が足りないから人を雇おう!」
という発想は危険です。

一般的に社員は、経営者よりもできる仕事が限られていますし、
そもそも経験年数も足りませんから、
できる仕事の能力も経営者よりも劣ります。
さらにそれでも仕事がまわらなくなったときに、
そこで何も考えずにまた雇用に走ると、
さらに全体の経験値がさがります。

しかも人が増えた分、情報共有やその他間接業務がどうしても増えてしまいます。
ということは仕事が増えた分、それを雇用だけで解決するということは、
どんどん非効率になっていくことを意味します。

これは組織の「成長」ではなく、「肥大」と呼びます。

生産性を考える。

そこで、売上が伸びて、時間が徐々にタイトになっていく過程で、
まずは自分を含めた現状の社員全員を、最大限活用できているか、
ということを考える必要があります。

今と同じだけの仕事を、今の組織の規模の中で、
今よりも短い時間で片づけることができるようにできないか、
ということを考えるのです。

仕組みを構築することで、時短を図れるようにもなりますし、
システムを導入することで、より生産性を高めることができるようになるかもしれません。
現状の仕事の流れを川上から順番に確認して、
どこに問題があるのか、どこに改善点が潜んでいるのか、
これらをチェックして拾い上げ、その一つ一つを改善していくことで、
時間当たりでこなすことができる仕事量を増やしていきます。

こういった社内改善は、日常業務の他の仕事となりますので、
その取り組みの段階では逆に生産性が下がることもあります。
少なくともある程度余裕のある状態でないと、
なかなか着手できるものではありません。

ですから仕事量が増えていく過程で
本当に時間がなくなって首が回らなくなる前に着手すべきことです。
生産性が高まると、同じ時間でできる仕事量が高まりますから、
結果として収益性も向上します。

こうして、既存社員の能力をできるだけ活用できる状態を仕組みとして作り上げてから
社員を雇用し、組織を拡大していくことで、
「組織の拡大とともに、より効率的に売上をあげることができる」
という状態になっていくのです。

収益性を考える。

次に考えるべきは、収益性です。

仕事が時間の切り売りである以上は、必ずすぐそこに売り上げの天井はやってきます。
これだと、収益を高めるためには、
どんどんと組織を大きくしていくことでしか実現できない、
ということになります。

前述のとおり、収益が大きくなって組織が大きくなってことは成長とも言えますから、
全く間違ったことというわけではありません。
しかしその一方で必ず、
「さらに効率よく収益を高めるような事業の転換はできないものか」
というところにアンテナを張り続けていただきたいのです。

これこそが「イノベーション」です。

今、自社の持っている強みや、既存の事業を何かと組み合わせることで、
より収益性の高いビジネスモデルを構築することはできないものか、
ということを考えるのです。

いつもお話ししている通り、
事業内容や経営者のキャラによって、
その事業の適正規模というものは存在しますから、
収益性を事業の規模でもって解決しようとすると、
どこかで弊害が出てきます。

「そのサイズのまま、もっと収益力のある事業を展開することはできないだろうか」
経営者は常に頭の片隅でこのことを妄想し続けていただきたいのです。
そしてその妄想がひとたび実現可能なイメージとして出来上がったときには、
ぜひ実行に移していただきたいと思います。

そして、収益性を考えるにあたってもう一つ大切な切り口は、
「値決め」です。

今の値段は適切なのか。
より高い価格設定はできないものか。
そのままではムリだとしても、なにかちょっとしたことで、
これを高めることはできないのか。

特に日頃の価格設定が弱気な方は、
ぜひ自社商品の価格というものを考え直してみてください。

価格は決して原価がいくらかかったから、ということだけから
導き出されるものではありません。
消費者がその商品・サービスの提供を受けて、
喜んで支払うことのできる最大の金額、
これが本当の適正価格です。

安易に価格をあげることには危険な部分もありますが、
まだそこに余地がある場合には、価格を引き上げることで、
これまでと仕事量も、必要な経費も一切変わらないまま売上金額だけが上昇しますから、
値上げ分がそのまま全額利益に乗ってきます。
したがってこれが収益性を高める最も効果的なものです
「いかに最大限の価格を設定するか」ということは常に意識をしましょう。

事業が、より成長していくためには、
組織自体の規模拡大ももちろんありですが、それよりも
「社員一人当たり1時間当たりの限界利益」
を高めることが、重要です。

自社を過小評価することは避けましょう。
そして本当に利益がとれない仕事のあり方になっているのであれば、
それはビジネスモデルそのものに問題がありますから、
より収益性を高めることができる事業へとシフトしていく必要があります。

その転換なくして、厳しい状態からの脱却はないものと考えていただいて、
差支えないかと思います。

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