競争相手による商品の陳腐化を防ぐ手立て。

どんな事業であっても、そこには競合が存在します。
そして競合は、新たな商品を開発したり、
場合によっては自社の商品に追随したりパクったりして、
自社の事業の脅威となります。
そんな、競争相手によって自社商品・サービスが陳腐化してしまうことを防ぐ手立てについて。

競合の定義

まず最初に、「競合」や「競争相手」というのは
どういったものかという定義づけを行っておきます。

一般的に「競合」というと、同業他社をイメージします。
これ自体は間違っていませんし、最も影響を与える競合は同業他社です。

しかしそれだけではありません。
経営の分析手法に「5F分析」というものがあります。
このFは「3C」のように3つの言葉の頭文字ではなく、
「Force」という一つの単語の頭文字です。
「フォースと共にあらんことを」
の、あの「Force」です(笑)。

「Force」とは「力」という意味です。
ものを動かす、物理的な力という意味です。
ですから経営の現場で言う「5フォース」とは、
自社に影響(脅威)を与える力をもっているもの、ということですね。

この5フォースとは
・既存の競合他社
・新規参入企業
・代替品
・売り手
・買い手
を指します。
これでおわかりいただけると思いますが、
これだけのものが「競合」となり得るということです。
それぞれの解説をしているとそれだけで大変なことになりますから、今回は割愛いたします。

ドラッカーが
「キャデラックの競争相手はフォードなのかミンクのコートなのか」
と問うている通り、
何が既存の自社商品・サービスを脅かすかということは、
同業他社だけで考えるのでは、狭すぎるのです。

キャデラックを買う人は、
単なる交通手段を買っているのではありません。
彼らが買っているものは、富のシンボルなのです。

商品そのもののではなく、その商品の提供している「価値」がなんなのか。
その切り口で「競合」というものを考える必要があります。

自ら進歩するしかない。

さてそれではそんないろんな方向から競合が、既存の自社商品を陳腐化させようと迫り来る中、
その陳腐化を防ぐために、何ができるかというと、
これに対してもドラッカーが一つの答えを示しています。

「自らの製品、サービス、プロセスを陳腐化させることが、競争相手による陳腐化を防ぐ唯一の手立てである」
ピーター・ドラッカー


結局は、自分の力でなんとかしろ、ということですね(笑)。

ただここで大切なことは、
今の自社の商品・サービスでちゃんと利益がでているからといって、
それに甘んじることなく、自らどんどんと進化をしていきなさいよ、
ということです。

自らの進化を止めて、他社がそこに覆い被さってくるからそれが脅威になるのであって、
相手が追いつくよりも前に自ら変化しておくと、
それは脅威ではなくなるのです。

競合の追随を無力化する

北海道の赤平という場所に、
「植松電機」という会社があります。
この会社は、重機などの先っちょに取り付けるような
電磁石のマグネットアタッチメントを製造している会社です。
ずいぶん前から、宇宙開発もやっています。

もう20年ほど前になりますが、
この社長が講演で話されてた内容がとても印象的でした。
当時、このマグネットアタッチメントのシェアが80%くらいだったそうですが、
もし競合が同じような製品を作ってきたとしても、
脅威でもなんでもなかったそうです。

というのも植松電機では、ある製品を開発すると同時に、
その製品を無力化する製品の開発を始めるから、ということでした。
しかし結局誰も自社の製品を追随するだけのものを作ってこないので、
「無力化するための製品が、日の目を見ることがなくて寂しいなぁ」
とおっしゃってました。

とても極端な話しですけれども、
一つの理想のカタチだなと思いました。

同時に開発を始めるまですることはないにしても、
今の自社の商品の価値が失われたときに備えてあらかじめ準備をしておくことや
競合が追いつけないように、追いつかれるよりも前に商品を進化さえること、
そして事業自体が陳腐化することに備えて、
新しい事業の準備を始めるべく異なる売上の柱を作り始めること、

こういったことが、経営を守るために必要なのだろうと思います。

利益が出ている今だからやる。

では、これらをいつ始めるか、ということですが、
やはり「今すぐにでも」ということにしかなりません。

競合だって自社を維持発展させることに必死ですから、
待ってはくれません。
競合が自社の商品・サービスに追随してきたり、追い抜いたりしてきた瞬間に、
そこから不毛な「競争」がはじまります。
過剰な競争に巻き込まれないためには、
常に競合とは違ったステージに身を置く必要があります。

ですから、今の商品・サービスで充分に利益がでているからといってその場に安住するのではなく、
そんな状況だからこそ今の商品をさらに進歩させたり、
また新しい商品・サービスの開発を行ったり、ということに取り組む必要があるのです。

商品が陳腐化して、利益が出なくなってしまった段階では、すでに手遅れです。
ここからは会社の商品力も財務力もどんどんと失われていきますから、
そこから変化をしていこうという中で、どうしても焦りが生じてしまいます。
焦りが生じると、正常な判断ができなくなっていきますから、
既存商品を進化させるにしても、新規事業に取り組むにしても、
その方向性を誤ってしまう可能性がグンと高くなってしまいます。

ですから、新しいことを始めるのは、
利益が出ている今だからこそ、です。

まずは既存の商品・サービスをさらに深掘りしていくことが大切だろうと思います。
そのうえで、既存商品の価値がこの世から完全に失われてしまう場合に備えて、
新たな売上の柱の構築に目を向けましょう。

そのタイミングであれば、お金も時間も人材も、そして会社の強みも
充分に備わっていると思いますから。

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