【バックナンバー】節税について。

このブログでこれまで、「節税」についてお話しをしてきました。
私の「節税」に対する姿勢・考え方は、私自身これが「真理」と考えて譲れませんから、
多くの経営者に何としてもお伝えしたいことです。
これがきっと世の経営者のためになると思うからこその言葉です。
ということで今日はバックナンバー「節税について」。
初回投稿に、若干の修正を加えております。

--- 以下、2021/09/28の記事より。内容に補正あり。 ---

私は基本的には税理士ですから、節税もその仕事の一環です。
ただ、経営主体で物事を考えてますから、
原則として節税はキライです。
なぜキライなのかを解説したいと思います。

法制度上行うことができる控除等

節税についてまず考えるべきは、
税法の法律で定められている、当然受けることができる制度を利用してのものです。

例えば、給与の支給額が増えた場合の税額控除や、
補助金で固定資産などを購入した場合の圧縮記帳(これは利益の繰り延べですが)などです。

これらは、会社の利益を減らすものではなく、
資金繰りにも影響を与えない(むしろ税金が減る分良くなる)ので、
もっとも正しい「節税」です。

ただ私はこれを「節税」とは呼んでおりません。
なぜなら条件を満たせば当然受けられる制度であり、
税理士が申告する以上当たり前のように適用されるものだからです。

私の感覚からすればこれは「当たり前」であり、
これを敢えて「節税」と呼ぶことはありません。

節税=利益を減らす=会社の資金繰りが悪化する

ではそれ以外に税金を減らす方法はないのでしょうか?
結論としては、多少なりとも存在はしますが、
これには一つ経営判断として大きな問題があります。

税金は基本的に会社の利益の〇%という計算によって算定されます。
したがって、節税(会社の税金を減らす)=会社の利益を減らす、
という行為であることがわかります。

これは真理です。

そして日本の法人税率はおよそ30%程度ですので、
100万の経費支出をしてようやく100万×30%=30万円の税金が減ります。
経費支出するということは当然お金が出ていくわけですから、
結果として100万円経常利益は減少し、
70万円お金は減ります。

この100万円の支払いが本当に必要なものであればまだ良いのですが、
税金を払いたくない一心でそれほど必要でもないものに支払いをしてしまったとしたら、
どうでしょう?
払う先が税務署から別のところへ変わっているだけで、
しかも支払う金額が70万円も増えているのです。

さらには日ごろ経営者として社員の皆さんに
「一緒に利益を出していこう!」
と掛け声を出していたり、
経費削減を社員さんと一緒に取り組んでいたとしたら、どうでしょう?
社員さんからしたら
「何のために利益を出そうと日頃努力させられてるんだろう?」
と経営者に対して疑念を抱くこととなっても仕方がないですよね。

なので、上記の「法制度上行うことのできる控除等」以外の節税というのは、
会社の利益と資金を奪う行為であり、
「税務署には払いたくない」というだけの思いで
安易に節税することは絶対にやめてください。

実は利益の繰り延べに過ぎない

いわゆる世間で言われているところの「節税」は、
保険の契約であったり倒産防止共済の加入であったり、
というのがメジャーどころです。

保険に関してはすでに税法によりほとんど網がかけられた状態となっているので
効果は極めて限定的ですが、
いずれにしてもこれらは支払ったときに一定の経費になって税金は減りますが、
その後解約や満期のタイミングで利益が計上されます。

つまり利益の繰り延べに過ぎないのです。
したがって厳密な意味では節税ではありません。

しかも満期などによって将来において多額の利益が出たときにどうするのか、
ということをきちんと設計しておかないと
逆に大変な税金をそのタイミングで支払わなければならないことになってしまいます。

セーフティ共済はおよそ40か月以上払い込めば
原則元本割れしませんし、
解約のタイミングも自由ですから、
利益の繰り延べとしては有用性が高い、数少ない手段です。

しかしこれも先に支払いが発生して
その支払額の30%程度の税金が減るだけですから、
資金繰りは悪化します。
「税金を払う資金が厳しいから」という理由で
選択する手段ではありません。
余計にしんどいことになりますので、そこは心してください。

基本的に利益の繰り延べを行う節税は、
利益を減らす=お金が減るということですから、
資金に余裕があって余っている会社のすることです。
ある人が言ってました。
「お金がないのに、節税を考えるなんて、おこがましい」と。

さらに言うとセーフティ共済は年間240万円・トータル800万円までしか
支払いできないことになっていますので、限界はあります。

1500万円を超えてくるような利益が出てきた場合には、
何を行っても焼け石に水、というのが現実です。
ですから、節税にむける意識をその分経営の方に割いてください。
それが経営者として健全な発想であり、
正しい経営判断です。

経営者として何を目的とするのか。

あなたの経営者としての目的はなんでしょう?
それが「いい会社を作ろう」ということなのであれば、
ぜひ節税は考えないでください。

節税など考えるよりも、
まっすぐ「よい会社」を作ることに邁進してください。

国に税金払うのがもったいない、という感情は当然あるかとは思います。
私にだってあります。
しかしよい会社を作ろうとするときに、
感情>経営となることが正しいことであろうはずはありません。

節税を前提に会社の仕組みを作ることが正しいとは思えません。
決算間近に社員さんに決算賞与を支払うことや、
社員さんの福利厚生目的で保険に加入することも
「節税」の一種とされることもありますが、
それも「節税」のためではなく、純粋に
「社員さんありがとう」
という気持ちで行うものであるべきである、と私は考えます。

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