社会的に求められているからといって、
その事業が必ずしも儲かるわけではありませんが、
「儲かりそうだから」という思いで始めるものは、
だいたいうまくいきません。
もちろんたまに、成功する事業もありますが、
経営者が「儲かりそうだから」と言ってるだけで、
本当はそれだけの理由ではないこともありますから。
また、一時的にうまくいったように見えても、
持続可能性に欠けたりします。
それではなぜ「儲かりそうだから」だけでは儲からないのか、
その理由をあげていきたいと思います。
隣の芝は青く見える。
「自分の事業は、これだけ働いてもうまくいかないのに、
なんであの会社はあんなに儲かってるんだろう?」
と羨ましく感じたり、ちょっとした嫉妬を感じた人は、
意外にいるんじゃないかと思います。
自分の幸せを他人との比較で測ろうとしているいる時点で
いろいろ間違っているとも思うのですが、
それはいったん横においておきまして、
隣の芝が青く見えるのは、普通によくあることです。
そして、「儲けたい」という思いばかりが先に立って、
分析をしたとて、自分に都合のいいようにばかり解釈して、
その儲かりそうな事業に飛び込んで失敗する、というのは
見ていてなかなかイタイものがあります。
その「儲けたい」には
「楽に」儲けたいという思いが
同居しています。
しかしその青く見える隣の芝も、
実はその庭の持ち主が日々丹念に手塩にかけて、
心血を注ぎこんでいるからこそ維持されているのであって、
決して楽して青い状態が維持されているわけではありません。
そこに目を向けず、
「芝が青くてきれい」という事実だけに目を向けるから、
おかしなことになるのです。
そんな人に、青い芝を維持できるとは思えないですよね?
これと同じこと。
その「儲かりそう」な事業も、
ただ楽に儲かっているわけではありません。
もし本当にそうだったとしても、
そんな事業には一瞬で人が群がってきて、
あっという間に過当競争に巻き込まれます。
事業をする以上、儲けることは大切です。
というか必須です。
しかし「儲かるから」という理由が前面に立つと、
そもそも需要があるのかどうか見極めることができていなかったり、
必要なリサーチを怠って、市場動向が把握できていなかったり、
必要な資金やリソースを見積不足してしまったり、
いろいろ、見誤ってしまうのです。
楽に儲かる事業はありません。
これを前提として考えておくことが大切です。
あなたの(良くない)思いは、伝わる。
事業とは、マーケティング的に説明すると、
あなたが提供する価値(商品)を、
その価値を求める顧客に提供することで
その顧客が対価をあなたに支払ってくれる、
というものです。
顧客に、その顧客が価値ありと感じるものを提供して初めて
事業は事業として成立するわけです。
「儲けたい」という思いだけで事業をしているあなたを
儲けさせてくれる人は、どこにもいません。
儲けることだけに主眼が置かれていると、
その目線の先に顧客はいません。
そして消費者は、敏感にそれを察知します。
というか「どうすれば顧客に価値を届けられるか」
という思いが欠落していたり、
その考えが安直だったりで、
結果、提供している商品・サービスが、
消費者にとって魅力あるものとなっていないのです。
以前ある経営者が
「こうしたら、いい商品に見えるやろ」と
何か新しいものを発見したかのように嬉しそうに話してましたが、
「消費者をなめるなよ」と思いました。
その商品を見て「なめるなよ」と思う消費者はいないと思いますが、
少なくとも魅力あるものとして
消費者の目に映ることはないでしょう。
また、たまたま社会のニーズとマッチして、
一時的に儲かったとしても、
ずっと同じものが売れ続けることはありませんから、
少しずつ変化させていく必要があります。
「儲けたい」しか考えていない人は、
自分本位にしか考えられませんから、
そもそもその変化すること自体を怠ったり、
変化したとしてもそれが消費者目線でのものでなかったりで、
結局顧客は離れていきます。
その事業に対する思いが「儲けたい」というだけであれば、
それはそのまま消費者に伝わってしまうのです。
事業領域の三要素。
先にもお話しした通り、我々の行っていることは「事業」ですから、
儲けることを抜きにして考えることはできません。
どれだけ思いが強くとも、そこに収益性がなければ、
それはただのボランティアに過ぎませんし、
そもそも継続することができません。
儲かった方が楽しいことは間違いないですしね。
ですから「儲けるぞ」と考えること自体、
なんら間違ったことではありません。
問題はそれだけが主眼となり、
前面に出てしまうということです。
いつもこのブログでお話ししている、事業領域の三要素
「求められること」「したいこと」「できること」
これらがちゃんと備わっているかどうか、ということです。
この中に「儲けたい」はありません。
この三要素が整った中に、事業というものは成立する可能性があり、
それを追求することで「儲かるように作り上げる」のです。
「求められること」でないと、
社会に需要がありませんから、
そもそも事業としては成立しがたいところがあります。
「イチから自分が需要を生み出すのだ!」というのは、
意気込みは買いますが、オススメはしません。
「できること」でなければ、
それは自社のリソースが生きない事業ですから、
事業の精度を高めていくにも時間がかかりますし、
競合が現れたときに吹き飛ばされてしまう可能性があります。
そして「したいこと」でなければ、
その事業に対するワクワクや、執着のようなものが生まれてきません。
すると、事業を突き詰めて考えることができません。
「顧客のために、こんなことやってみよう!」
というアイデアも生まれてきませんし、
困難にぶつかったときに、
すぐにあきらめてしまうようなことにもなりかねません。
「儲かるかどうか」
というのは、大切な指標です。
しかし、「儲かりそうだからやりたい」というときには、
本当にやるべきことなのかどうなのか、
一度立ち止まって、客観的に分析して、よく考えて行動しましょう。