先日、イギリスのエリザベス女王がご逝去されました。
それに伴い感じた、事業承継について。
チャールズ国王(73)
ほとんどテレビを見ることがない私は、
エリザベス女王が亡くなられたことを新聞で知りました。
なにより25歳で即位され、その後70年以上もの期間にわたり、
イギリスの女王の座を全うされたエリザベス女王には
尊敬の念しかありません。
しかし、新聞記事に書かれていた次の内容に
不謹慎ながら笑ってしまいました。
「チャールズ国王(73)が即位」
73歳・・・。
通常でしたら、とっくに引退しているおじいちゃんです。
もちろんすでに国王が為すべき仕事の一部を
担ってきておられるでしょうし、
王室のこれまでの歴史がありますから、
それを支える周囲の仕組みもあることでしょう。
このご年齢で国王に即位されることで生じる
承継時の問題というのは、特にないのだろうと思います。
しかしこれが一般企業であるとするならば、
このようなわけにはいきません。
事業承継が遅れている
すでに危機感をもって語られていることですが、
日本の経営者の高齢化がとまりません。
現在社長全体のうち、25%以上が70歳以上。
そして、「2025年問題」と言われているものがあります。
これは、2025年には、70歳以上の経営者が245万社まで増加し、
そのうち約127万社が後継者不在で倒産・廃業の危機に直面するだろう
とされる問題です。
これは由々しき事態です。
近年、国がM&Aにやっきになって取り組み始めましたが、
相当遅いですよね。
M&Aを取り扱える専門家が全く足りておらず、
誠実にM&A案件を抱えると、年間5件程度しかこなせませんから、
専門家が1万人いたとしても、年間で5万件しかさばけません。
そしておそらく現在、全うな専門家は1万人もいません。
これが最近M&A市場がにぎわっている背景でもあります。
それによって、おかしな専門家と
ハゲタカのような会社買収企業の存在が目立つようになり、
M&Aというもの自体の印象がマイナスなものになっていくという
負の現象もおきています。
もちろんすべての会社が残る必要はなく、
若い人が新たに会社をつくることによる新陳代謝は歓迎すべきものです。
しかし、いかんせん、
廃業件数が多いと同時に、新規設立件数が少ない。
日本全体を考えたときにこれは大変な問題です。
経営者は自分自身の引き際を。
前述したのは高齢化と後継者不足による廃業問題ですが、
現実的に、後継者がいるにも関わらず、
いつまでも経営者が交代しない、という事例がたくさんあります。
私も本当にたくさん目にしてきました。
いつになったら、社長を引き継ぐんですか!?
という会社が山のようにあります。
小零細企業の場合、
後継者は自分の子であることが一般的です。
そして親子間において、親の目からみると、
子はいつまでたっても子供なのでしょう。
「あいつはまだまだ頼りない」
って、もう50歳ですよ、という話しです。
最もやる気と体力と熱意に満ち溢れた、
30代~40代を通り過ぎたあとで、
人によっては、すでに経営に対する熱意が衰えかけていたりします。
そろそろ信頼して任せてあげてもいいんじゃないでしょうか、と。
そしてそんなに心配なのであれば、自分は会長職として
後ろからその足りない部分を
そっと支えてあげればいいんじゃないでしょうか。
このブログで何度もお伝えしている通り、
企業が生き残るためには環境変化に対応することが必要です。
しかし残念ながら70歳にもなって、
今のこの目まぐるしく変化する社会環境に
対応することができるとは思えません。
できるだけ早く、若い世代にバトンタッチし、
次の世代の感性を経営に活かしていくということが
必要なんじゃないかと思います。
ですから経営者も、
いずれ承継を考えているということなのであれば、
せめて70歳までには承継を完了するという方針をさだめ、
いつまでもその地位にしがみつくのではなく、
〇歳で引退と決めたら本当にその年齢でいさぎよく身を引く、
ということが大切です。
一度決めた年齢を経過してしまうと、
そのままズルズルと引き延ばされ、
引き際を失ってしまいます。
事業承継は、経営の一部です。
しかも何十年に一度しかない、非常に大切なイベントです。
であるならば、経営自体がそうであるように、
目標を定めてそこから逆算し、
計画的に進めていく必要があります。
事業承継を考えるに、早すぎることはありません。
遅くとも55歳までには法人の行く末を明確にし、
その来るべき日までにやらなければならないことを整理して、
安心してその日を迎えるべく、
準備をしていただければと思います。