戦略的な損益計画について考える②。

昨日は、損益計画を戦略的にというテーマで、ストラック図の概要についてお話ししました。
 →戦略的な損益計画について考える
今日はその具体的な実践について。

利益を上げるにはどうすれば?

まずはストラック図の解説の続きです。
ストラック図の構造から、
どうすれば利益を上げることができるのか、
その手段をあげてみましょう。

①売上を伸ばす。

これは当然ですね。
売上高を伸ばして他の条件が変わらなければ、
利益は出ます。

②粗利率をあげる

粗利益額をあげるには2通りの手段があります。
一つは①によって粗利益をあげることですが、
これは結局①と同じことを言っていることになります。
もう一つは、
「粗利率をあげる」。
仮に売り上げがあがらなくとも、粗利率が上がると、
勝手に粗利益は上昇します。

そして、粗利率を上げるにも大きく2通りの手段が考えられます。
一つは現行のビジネスの中で変動費を下げること。
そしてもう一つは、
より粗利率の高いビジネスへと移行してくことです。

③固定費を下げる

昨日お話しした通り、
固定費は大きく4つに分かれます。
1.人件費 2.経費 3.金利 4.戦略費

このうち人件費については、社員を減らしたり給料を下げたりするのは、
いわゆる悪い意味でのリストラであって最終手段ですから、
これは考えないこととします。
(ちなみにリストラとは「再構築」という意味で本来マイナスな意味ではありません)
しかし仕事の効率化を図ることや社員の意識を変えることで、
残業代を減らすことは可能でしょう。
時間給の人たちの労働時間を減らすことも可能となります。

次に経費(その他経費)。
これは意識して徹底的に抑えましょう。
『入るを量りて出づるを制す』
といいます。
まずは無駄な出費を徹底的に削減することです。
「無駄遣いなんて、してないよ」というかもしれませんが、
その経費は本当に必要でしょうか?
それがなくなったら会社に影響ありますか?
厳しい目で見てみると、結構いろんな無駄が見えてくるはずです。

そして戦略費。
これは教育研修費と、広告販促費です。
会社の将来への投資であり、顧客を創造する活動です。
これらは極端な話し、削減しないでください。
もちろんそれらが会社に貢献しているかの判断は必要ですが。
これらの経費は、
今打ち切ったとしてもすぐさま会社に大きな影響はありません。
しかも割と、まとまった金額であることが多いものです。
ですから「経費削減」という話しになったときに
真っ先に手を付けられることになる傾向にあります。
しかしこれらをカットすることは、
会社の将来の成長を阻害することであり、
本来の会社の生命線を断ち切ることとなってしまいます。
経費削減を考えるときに、安易にここから手を付けることはやめましょう。
戦略費については、会社への貢献を冷静に考えて判断し、
打ち切るのではなく、よりよい形にシフトする意識を持つことが大切です。

このように、なにも「売り上げを伸ばす」だけが
利益を伸ばす手段ではありませんよね。
このうち一つだけではなく、これらを組み合わせて利益を創出していくのです。
みなさんの会社では、これらの中でどこから手を付けていくのが最も効果的なのでしょう?
それを考えて計画・目標を策定し、一つ一つ実践していくことです。

実際に作ってみましょう

さてストラック図を使って、
実際に会社や部門の利益計画を実際に作成してみましょう。
前回お話しした手順に従って、まずは経常利益を定め、
そこから逆算する形で一つ一つを記入していきます。
すると「必要な利益」をあげるために必要な「売上高」が
計算されたかと思います。
これで「できた!」とする前に、ここで一度振り返ってみてください。
それは現実的な数値でしょうか?

目標値・計画値は
それを達成する、またはその数値に近づけることを目的として
設定するものです。
達成することがイメージできないようなものは
目標とは呼べませんし、
計画としてはあり得ません。

それではどうすれば、目標利益を動かすことなく
現実的な売上目標に近づけることができるのか。
これを前項の「利益をあげるには」を参考にしながら、
いろんな数値を調整していきます。

なんとか粗利率を向上させることは考えられないでしょうか?
固定費は本当にこれだけ必要でしょうか?
逆にこれだけの売上をあげるために、戦略費はこれで充分でしょうか?
これらを徹底的に考えていきましょう。

そしてどう考えても、現実的な売上にならない場合、
そもそもの目標とした「経常利益」が高すぎた、
と考える必要もあります。
現実的な損益計画を試行錯誤する場合、最終的に
「欲しい経常利益を下げる」
という意思決定も必要です。
安易に志を低くすることもありませんが、
場合によっては勇気をもって経常利益目標を下げましょう。

このように損益計画は、最初からビシッと完璧なものができあがるものではなく、
試行錯誤の末に辿り着くものです。
最初から完璧なものを作ることに固執すると、
全く手が動かないことにもなってしまいますから、
「あとから調整しよう」というくらいの気軽さで
まずは数値を埋めてみるということが大切です。

試行錯誤が前提ですから、仕組みが理解できるようになったら、
エクセルで自動計算できるように作り込んでおくと便利です。

目標売上を達成するために。

こうして現実的な損益目標ができあがりましたら、次は
「その目標を達成するために、具体的に何を行うのか」、
ということを計画します。

具体的な「行動計画」です。

数値計画は、とても大切ですが、
数値計画だけで留めてしまうとそれは
単なる「数字遊び」みたいなものですので、
とても計画と呼べるものではありません。

計画として掲げた数値は、これが「目標」である以上、
何も考えずに経営活動している中で
自然と達成されるものではないはずです。
だからこそ、その目標到達のための
具体的行動計画をたてる必要があるのです。

この行動計画は、一種の仮説です。
「これだけのことをすれば、目標通りの売り上げがあがる『はず』」なだけで、
誰もその目標を達成できる確証を持てるわけではありません。
しかし、この「仮説」というのが大切なのです。
こうやって計画をしておけば実際に結果が出たときに、
その計画(=仮説)との差異がそこに生まれます。
差異が生まれたら、
「なぜその差異が生まれたのか」、
ということを考えることにつながります。

これが、計画を作成する「意味」です。
「単なる仮説でどうせその通りにならないんだから、作らなくて良い」
というものではありません。
この辺りはまた、経営計画についてブログで取り上げるときに
ゆっくりとお話しすることができればと思います。

いずれにしても、まず数値目標があれば、
その達成できなかったポイントが、
売上のせい?
固定費のせい?
粗利率のせい?
というのがはっきりと見えます。
それらの差異を踏まえて次の数値計画と行動計画を策定し、
また実践をしていくのです。


とても地味で面倒な作業に感じられますが、
この地味な繰り返しを積み重なることで
最終的に大きな差を生み出していくのです。

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