お金が増えない落とし穴①

会社には、利益のわりにお金が増えていかないという落とし穴があります。
今回は久しぶりに、財務の基本のお話しをしたいと思います。

昨日、この穴にはまって足を捻挫しました。穴というより、うっすらした窪み(笑)。

落とし穴がたくさん

会社がお金を増やすためには、
利益を出さなければいけません。
利益を出さなくても借入をすればお金は増えますが、
これは当然返さなければいけないお金ですから(笑)。

しかし、利益を出せば必ずしもお金が増えるわけではありません。
そこには、たくさんの落とし穴があるのです。
正しくB/Sを理解していればわかることでもありますが。
その落とし穴にはどんなものがあるのか理解して、
正しく資金計画をたてましょう。

売掛金

会社の資金が思った以上に増えていかない要素として、
まずあげられるのが、売掛金の存在です。

通常営業していて、現金商売であれば問題になりませんが、
締め日が到来して請求→入金という流れになっている場合には、
最低でも1か月ほどはお金にはなりません。
でもすでに売っているわけですから
売上にはカウントされています。
したがって、売掛金が増えるとその分だけ、
利益ほどにはお金が増えないのです。

「どうせしばらくしたらお金になるんだから」
と油断することなかれ。
相手先が2か月先入金の会社ばかりになると、
それだけ資金を圧迫します。
常にお金になっていない状態のものが
売り上げの2か月分滞留するわけですから、
地味にイタイのです。

例えば元手200万円で事業を始めて
1年目で利益を100万円出したとしましょう。
期末で売掛金が250万円残っていたら、
他に資金に与える要素がないと仮定すると、
期末のお金は50万円です。
「最初の200万と利益の100万どこ行ってん?」
となります。
なんてことはない、それは「売掛金」へと変貌したのです。

資金の回収サイクルはできるだけ早く。
そして滞る相手先へは商品を売らない
(または現金回収に切り替える)のが鉄則です。

受取手形

次に受取手形。
資金を圧迫する原因の種類としては、
売り上げた金額が現金になっていないという意味で、
前項の売掛金と同じ類のものです。
資金化までの期間が長いことや、
金額が大きいこともあるので、
ある意味売掛金よりタチが悪いとも言えます。

受取手形は入金までに、
締め日到来→請求→相手方の支払日→手形で受け取り→手形期限到来→入金
という経緯をたどります。
手形の回収期限が3か月のものであれば、
請求から相手方の支払いまで1ヶ月くらいあることを考えると、
資金化までに4か月かかることになります。
もっとタチの悪いものでは6か月とかいうものもあります。
資金化までおよそ7か月、ということですね。

受取手形は相手方の資金繰りが悪かったり、
相手方が大きい会社であったりした場合に発生しがちです。
前者もたいがいですが、後者の方がタチが悪いと個人的には思っていて、
結局取引関係における立場の強さに乗じて、
自社の資金繰りを良くするためにこちらが利用されている状態です。
前者は本当に払えないという切羽詰まった事情があります。
貸し倒れリスクとしてはもちろん前者の方が圧倒的ですから
怖いのは前者ですが。

これまで30年事業をやってきて、
自己資本比率が50%を超えるような会社で、あるとき
「なんでこんなにお金がないんだ?!」
ということになったことがありました。
原因は受取手形の増加。
これだけ歴史があって、毎年ちゃんと利益を積み上げてきた会社でも、
こんなことになるくらいダメージの大きいものです。

残念ながら力関係であるならば、
手形で受け取ることを拒否することは困難なわけですが、
極力こんな取引先と取引しなくて済むよう、
自社の力と独自性を高めていきましょう。

結局自社を守るのは、自分の力です。

在庫

いわゆる「棚卸資産」と言われるものです。
会社の粗利益は、売上ー売上原価で計算されます。
ですから「売上原価」は経費です。
そして売上原価は、仕入れたもののうち
売り上げたものだけが反映する仕組みになっています。
そうでないと正確な粗利益がわかりませんから。
つまり在庫は、
お金は外に出ていっているが、それが売れるまでは経費にならない、
ということです。

ですから在庫が増えると、
その分利益のわりにお金が増えません。
今のが理屈上の「在庫」の資金への影響ですが、
もっとシンプルに説明すると、
在庫は「お金が商品に化けて目の前に残っている状態」ということです。
当然、お金は減っていきます。

商品を売るためには、
ある程度の在庫は必要です。
欠品をすることは取引先に大きな迷惑をかけてしまうので、
一定の在庫を保持しておくことは大切なことです。
しかしその中で、いかにこれを最小限にとどめるか。
トヨタなどは「カンバン方式」によってこれを実現しているわけです。

ただ在庫の滞留を下請けに押し付けているだけとも言えますが。
そして在庫のおそろしいところは、
お金から姿を変えると
その価値が正しく認識できなくなってしまうことです。

お金そのものであれば、たった50円でも
自らドブに投げ入れることなど絶対にできませんが、
在庫の姿になっていると1000円を超えるものでも
不良在庫化したときに「仕方ないなぁ」と言って
平気で捨てられてしまうのです。
目の前の在庫は、ただお金が姿を変えたものです。
つまりお金そのものです。
その認識を、社員も含めて全体で理解し、
不良在庫を生まないよう、
不必要な在庫をかかえないよう、
そして欠品は出さないよう、
知恵を絞ってコントロールする意識を持ちましょう。



今日の3つ(特に売掛金と在庫)は、
事業が成長して売上高が増えていくと、
事業拡大に応じてある程度増えていかざるを得ないものです。
しかし、出した利益より「売掛金と受取手形と在庫の増加額」の方が多ければ、
お金は1円たりとも増えません(むしろ減ります)。
だからこそ、これらをいかに増やさないようにするか、ということは
経営上とても大切なことなのです。

まだまだ、お金が増えない落とし穴はあります。
続きは次回。
いつもは連続モノでも間に他の記事が入り込んできたりしますが、
今回はちゃんと明日のテーマにしようと思います。

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