経営は楽になる日が来るのか。

よくいろんな経営者さんから、
「これを乗り越えたら、これが終わったら楽になる」
という言葉を聞きます。
果たして、楽になる日は来るのか、そのためにできることはあるのか。
そんなことを考えてみたいと思います。

「楽になる」とは?

それではまず「楽になる」というのは
どういう状態を指すのでしょう?

ストレスやコストなどマイナスの現象を分類するとき私はいつも、
次の4つに分類して考えるようにしています。

・面倒(手間がかかる)
・時間(ヒマがかかる)
・お金
・精神(ストレス)

マイナスの現象はおよそ、この4分類のなかに収まりますから、
これらが取り去られた状態が「楽になる」状態であるといって、
差し支えないんじゃないかと思います。

このうち前の2つを「手間ひま」ということで一つにまとめると
「時間的に忙しくなくなる」
「資金的な余裕ができて心配がなくなる」
「その他日常的な精神的負荷がなくなる」
こういうことですよね。

つまり、日々穏やかな毎日を過ごしながら経営をすることができる。
これが経営をしていて「楽になる」ということなのでしょう。
さて、そんな日は来るのでしょうか?

楽になる日はこない。

いきなりタイトルで、厳しい現実をたたきつけているようですが、
現実問題として、楽になる日は来ません(笑)。

導入部分で書いたように、
「これを越えたら経営が楽になる」
という言葉をよく聞くわけですが、
結果楽になったという言葉をきいたことは、ほとんどありません。
あったとしてもそれは一時的なものであって、
多くの場合すぐにまた決して「楽ではない」状態になっています。

そして、
「うむ、わかった。経営というのは、楽になる日はこないんだ」
と悟りを開くようになります(笑)。
ある意味これが正解です。

それではなぜ楽にならないのか。
それは経営が、
ある種競争原理の中に埋もれているものだからです。

「楽である」というが、前項で定義したように
「日々穏やかであること」だとすると、
経営においてそれは、
日々の成長がない状態であることを指します。

競争下において成長がない、ということはつまり、
相対的には退化しているということです。
長いこと日々穏やかな経営をしていると、
徐々に退化をしていきますから、
そのままでは経営は行き詰まっていきます。

そして多くの場合、取り返しのつかないことになるのです。

ではそうならないようにするには、どうしなければいけないかというと、
定期的に事業に刺激を与えなければなりません。

事業を変化させ、進化させなければならないのです。

基本的に人間は遺伝子レベルで
変化にはストレスがかかるようにできています。
ですから、変化・進化には一定の負荷がかかるのです。

そんな一定の負荷をかけ続けなければ、
経営というものは着実に衰えていき、
最終的には「楽でない状態」どころか
「危険な状態」となってしまうのです。

「競争」という中で追い立てられる結果「楽ではない」のか、
自ら「進化」という刺激を与えることで「楽ではない」状態を継続するのか。
もちろん後者の方が理想的ではありますが、
いずれにしても、継続的に日々穏やかな状態には、
まずならないと考えておくべきだろうと思います。

ストレスなき経営を。

それでもやはり、
できるだけ「楽な経営」に近づけるに越したことはありません。

日々変化・進化をしつつも、
極力負荷の少ない状態を目指したいものです。

そのためにはストレスをなくさなければなりません。
全くゼロにすることは不可能でしょうが、
できる限り少ない状態を目指したいものです。

そのときの切り口もやはり、
①時間的な余裕がうまれるように
②資金的な余裕がうまれるように
③その他の精神的負荷が少ないように
ということになります。

①と②は、いつもお話ししている、
独自性ある事業で、いかに時間あたり粗利益の高い仕事ができるか、
ということがキモです。

そして、経営者が精神的負荷を感じているのは、
「ヒト」と「カネ」。
この2つでストレスの8割以上を占めていると思います。

カネは②の問題ですから、それ以外で精神的負荷を少なくするには、
ヒト問題をどれだけ軽減できるかにかかっています。

「どんな人でも受け入れて、どんな人でも働きやすい場所を作るんだ!」
という思いを持っていて、それを実行するパワフルな人もいますが、
多くの経営者はそこまでの器量はないでしょう。

少なくとも私には、ありません。

だから経営は、「誰とするのか」がとても大事です。
自分の会社が何を目指している会社で、
そのために日々どんな仕事と仕事のやり方を行っていて、
その人に何を求めるのか。
それを明確にして、可能な限りミスマッチのない雇用を行いましょう。
人不足の現在、そんなことを言っている場合ではない、
ということかもしれませんが、
入っては結局やめていく、
または経営者にも周囲にも多大なストレスと迷惑をかける、
ということになるようであれば、
安易に雇用することで誰一人として幸せになることはありませんからね。

継続顧客との取引が必要な事業であるならば、
どんな顧客と取引をするのか、ということも
人間関係という意味では上記と同様です。
ここにおいてもミスマッチが生じると、それは経営において
大きな精神的負荷へとつながっていきます。
ですから、特に小零細企業においては、
「誰を顧客とするのか」
ということも、とても大切なことなのです。

こんな観点で、経営に常に刺激を与えて進化を促しつつ、
日々可能な限り穏やかな心で経営ができる姿を目指しましょう。
目指さなければ、近づくことはありませんからね。
私もそんなことばかり考えて経営をしてますが、
余裕ができるとすぐに新しいことに取り組んでしまうので、
きっと永遠に「楽になる」ことはないのだろうと思います。

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