自分の強みは自分には見えないから、人に訊く。

事業を成功に導くにあたり、最初に問うべきは、
「自分自身の強みは何か」ということです。
しかし、自社の強みや経営者自身の強みは自分ではよくわかりません。
その理由と解決法について。

自己評価の問題

昨日ふと、とあるテレビ番組(私の高校時代の同級生がレギュラー出演している、ローカル番組)を見ていたら、知っている人が出ていました。
ゲストハウスを運営されている女性経営者(以下、Mさん)です。

5年ほど前、「奈良あきない塾」というところで、私がメイン講師を務めさせていただきました。
奈良(およびその近辺)で事業を起こして間がなかったり、
これから事業を起こす予定であったり、という方を対象にした
1期8回の講演&講義形式のセミナーです。

Mさんはそこに参加くださってた方で、
全回を通して欠席されず、真面目に参加いただいて、
すごく一生懸命私の話しを聞いてくださってたのが印象深かったので、
とてもよく覚えていました。

昨日たまたまその方をテレビで見かけて、
当時Mさんが質疑応答で投げかけてくれた内容が蘇ってきましたのです。
「強みを生かす」というテーマでSWOT分析とその活用方法をお話しした回。
確か、
「私の弱みとして、継続性がないというのがあるんですが、これってどうすれば良いでしょう?」
といったような質問だったと思います。
それに対して、私は少し笑いながらこう回答した記憶があります。

「継続性がないというのは、弱みと言うより、
 経営者の資質として根本的に問題ですよね(笑)
 でもほとんどの方が何かにつけ欠席をされる中で、
 学びを得ようと毎回欠かさずこの場に来ておられるということは、
 充分に継続性がある方だろうと推察します。
 きっと自分でそう感じているだけで、
 Mさんは十分に継続性のある方だと思いますから、
 もう少し自己評価を高めてもいいんじゃないかと思います」

このように人は(もちろん人によりますが)、
一般的に自己評価は低めになります。
自分の良い部分より、自分の欠点をあげる方が、
きっとたくさん出てくることでしょう。

会社だって同じことです。
自社を振り返ったときに、特に小零細企業の場合、
自社の欠点ばかりが目についてしまいます。
もう少し、自社についても自己評価を高めてみてあげてもいいのにな、
と思います。

強みが見えない理由

かのピーター・ドラッカーも言っています。
「強みは内部からは見えない」と。

なぜ、自分自身では自分の強みが見えないかというと、
自分が当たり前にできていることは、それほど苦も無くできるので、
他の人や会社も当然同じように苦も無く出来るんだろう、
と思いこんでしまうからです。

どれだけ自分が時間をかけて、
苦労して手に入れた能力であったとしても、
自身が当たり前にできるようになった瞬間それは自分の中で、
「誰でもできること」
になってしまいます。

すでに知っている仕事は自分にとってはやさしいのです。
だから自分のもっている知識や能力には特別の意味はなく、
誰もがもっている(少なくともちょっと努力すれば身に着けられる)と
錯覚してしまうんですね。

逆に、自分にとって難しいものや苦手なものは、
自分ができないので、
それができる相手がとても大きく見えてしまいます。

とかく自分のことは見えないものです。
「自分を客観的に眺める」といっても、
どこまで行っても自分は自分、主観でしかありませんから、
客観性をもつにも限界があります。

自分の強みが見えないだけでなく、
弱みが必要以上に大きく見えたり、
また逆に、
本当は強みでもなんでもないものが強みに見えているかもしれないのです。

強みを見分ける方法

それでは、自分や自社の強みを見いだすために、どんなことができるのでしょう?
それはだいたい、次の3つかなと考えます。

・何が強みか、意識する。

まずは自分の強みがなんであるかということを
知ろうとする訓練をすることです。

基本、自分の強みは主観では見えにくくなっていますから、
日常的にそれを見ようとする努力をすることと、
自分の強みがなんであるかということを日々意識しておくことが
とても大切だろうと思います。

・他社と比較する

前項で書いた通り、主観には限界がありますから、
客観的視点に立つ手段が必要です。
それが、「他社と比較する」ということです。

日頃私は、他社との比較をあまり推奨していません。
自分は自分、他社は他社で、
ヨソを意識しても隣の芝が青く見えるだけですから。

しかしここで取り上げている「他社と比較する」というのは
少し意味合いが違います。
その目的が、他社と比較することで
「自社を明確にする」ことだからです。
自社が比較的簡単に手に入れることのできた能力で、
他社が同じものを手に入れるには苦労をするだろうと思えるものはなんでしょう?
他社も同様に、容易にゲットできるようであれば、
それは強みとはなり得ませんし、
逆にゲットするのが大変だろうな、とか
うちだからこんなに簡単にゲットできたんだろうなという能力は、
間違いなく自社の強みです。

・人に訊く

最後にこれ、
「人に訊く」です。

自分でわからないものは、人に訊くのが一番です。
ただ、人はずっと自分のことを見てくれているわけではないですから、
こちらのことをよくわかっているわけではありません。
むしろ「わかっている度合い」からすると、
自分の方が自分のことはよっぽどわかっています。

しかし人は、「客観的視点」という、
こちらが持ち得ない視点を持っています。

ですから、人に訊くことで得られる答えは、必ずしも正解ではありませんし、むしろ間違ったものも多いのですが、
その中に、自分では得ることのできなかった正しい答えというものを、
見つけることができます。

ドラッカー曰く、
顧客に訊くことで、
顧客は常に答えを知っているわけではないが、
いかにとりとめなくとも、
どこに正しい答えを見つけるべきかは明らかになる。

人の意見、顧客の声に耳を傾け、
そのどれを無視してどれを取り入れるのか、ということが大切です。

その取捨選択のときに必要となるのが、
経営理念であったり、
経営者の経営哲学とか経営の軸とかいったものです。
それが欠落していると、
いちいち他人の意見に振り回されることになりますから、
まずはそこの部分を明確にするところが、スタート地点。

ぜひ、自社の軸というものを、明確にしたうえで、
いろんな人の意見を聞いていただけたらと思います。

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