税金に、振り回されない。

3月も終わりが近づいてきました。
3月決算の会社、結構多いですから、
この時期になると多くの人が「節税」に走り始めます。
全ての節税が悪いとはいいませんが、
それよりも「自社の経営のあるべき姿」を大切にする方が
はるかに重要です。
節税に振り回される人で溢れかえるこの時期だからこそ、
あえてこのバックナンバーを。

----以下、2021/11/26の記事を転載します。----

この仕事をしていると、本当に多くの人が「税金」に振り回され、
踊らされているように思います。
損得に振り回されるより、大切なものがありますよね。

経営の美学を説くつもりはありません。
結果その方が、経営がうまくいき、実益があると思っているのです。

節税に振り回されない

みんな、税金は嫌いです。
少なくとも好きな人はいないと思います。
かく言う私も税金は好きではありません。

しかし税金や社会保険を支払うときに
「ああ、もったいない」とか
「なんでこんなもの払わなあかんねん」
とか思ったことはありません。

なぜなら、当然払うべきものだからです。
そして、会社の財務の仕組み上、たくさんの利益が出れば
その分税金はたくさん発生するとしても、
結果手元に多くのキャッシュが残りますし、
それによって会社の状態が良くなる、ということを
正しく理解しているからです。

税金を支払うことを意識していない日常では、
会社の経営のためのことを思うと
「できる限り経費を削減する!」
という意識をもっていることだろうと思いますし、
会社によってはそれを社員さんにも求めていることだろうと思います。
なぜならその方が利益が出て自由にできるお金が増えて、
経営が良くなっていくからですよね。

でもいざ利益が出て税金が多額になる、となったときに、
「どんなものにお金が使えるかなー」
ということを考え始めたりします。
これって、なんだか不思議なことだなと思うのです。
本当に必要なものであるならば買う必要がありますし、
不要であるもの、不急であるものは、買う必要がないのです。

せっかく出た利益を、社内の環境整備のために使うのは賛成です。
これは税金を減らす、ということではなく、
利益の社内還元ですから。
でもそこに「税金を減らすくらいなら」という意識が絡むと、
社内還元が無駄遣いへと変貌します。
ここの線引きは、微妙なようでとても大切なものです。

そして、人間の脳力には限界があります。
「税金がもったいないからなんとしなくちゃ!」という思考を少しでも
「よりよい経営をするにはどうすればいいか」という思考に振り分ける方が、
結果として儲かって、
手元にたくさんのお金が残るのではないかと思います。
少なくとも私はそんな部分に、私の大切な脳力やメモリーの一部を
持っていかれたいとは思いません。

国の思惑に 振り回されない

税法は、毎年なんらかの改正がなされます。
もちろんそこには国の思惑が働いています。
改正の中にも
「国民のため」という改正と、
「国のため」という改正がありますが、
いずれにしても国の思惑であることには変わりありません。

やや専門的ですが、特に租税特別措置法は時限立法ですから
大いにその時勢に対する思惑で満ちているわけです。
今だったら、
「30万円未満の資産は1年で経費に落とせるよ」、
とか
「雇用を増やすと、税額控除があるよ」、
とかいったものです。

これら、利用できるものはもちろん利用すればいいことですし、
利用すべきものであるとも思うのですが、
まずそれよりも大切にすべきは、
「経営の軸」です。
「こういう経営をするんだ」という具体的な意志です。

「こうすれば税額控除になるから、実行する」は、
前項の「節税に振り回される」とまさに同じことで、
経営の軸がぶれてしまいます。

国が設けた制度が、自社の経営軸と一致する。
だからその制度を利用する。
それが経営判断としての正しい在り方であると思います。
この順番を間違えないようにしましょう。

補助金に振り回されない

新型コロナウィルス蔓延の影響で、
様々な補助金が設定・拡大されました。
これにより、それまで「知っている人が使っているもの」だった補助金が、
極めて一般的なものとなりました。

補助金はもちろん税金とは違います。
しかし似たようなものであり、結果としては同じものです。
なぜなら、これも「国の思惑」だからです。
「こうしたら税金が下がる」というのと
「こうしたらお金がもらえる」というのは
その分手元にお金が残るという意味では一緒のことですよね。
だからこそ、ここでも、
「経営の軸」というのが大切です。

補助金の存在など関係なく、
自社の経営方針の中で実行することが決定している事業があり、
それがたまたま補助金にはまる事業であるならば、
当然のように補助金は活用すればいいと思います。

しかし、補助金をもらえるからといって
あえてそれに沿った投資や事業を行う、というのは、
本来のその会社の経営の軸がぶれてしまうようで全く賛成できません。
「補助金があるからする・しない」というのは、
本来の在り方ではないように思うのです。

ただし、
「自社の経営の軸にはまる事業だけれども、
 投資回収計算や資金繰りを考えたときに実現できない」
ということについては、
補助金のあり・なしで実行判断を行い、
是非補助金を活用して実現すべきだろうと思います。

これまでも私は、
補助金がもらえるからという理由で手を出さなくてもいい事業に手を出し、
わけのわからないことになっている会社をたくさん見てまいりました。
ぜひ、そのようなことになりませんよう、あくまでまずは、
自社の経営の軸と方針を明確にしてください。
そしてそれにキッチリと当てはまる補助金なのであれば、
それは積極的に活用してください。

この順番を間違えて、
国の思惑に踊らされないことを、
切に願います。

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