お金が増えない落とし穴②

今日は、昨日に引き続き、
会社に「利益のわりにお金が増えない」落とし穴について。

この公園の砂場のどこかに、娘の掘った落とし穴が。(ちゃんと埋めてから帰りました)

お金がないのは、税金のせい?

よく利益が出ているのに資金繰りの悪い会社の経営者が、
税金を支払う資金の余裕がなくて、借入をしなければならなくなり、
「なんで、税金払うために借入しな、あかんねん!」
と言っているのを耳にします。
税金を支払うことが資金が減少する理由の一つであるということは否定しませんが、
それを支払う資金の余裕がないというのは、
税金の問題というよりも、
経営上の資金政策の失敗です。

利益が出ているのにお金がないのは、
税金のせいではありません。
税金のためにお金を金融機関から借りることになったとするならば、
それは税金のために借りているのではなくて、
たまたま納税が現金支出として一番最後だから、
借入のタイミングが納税のときになっただけです。

本来は、もっと前に借りておく必要があったのです。
毎月の利益のうち、税金の分として横にとっておかないといけない分を、
資金繰りに使ってしまっていただけの話しなのです。
すこし厳しい言い方かもしれませんが。

とても重要な話しで、これだけはどうしてもお伝えしておきたかったので、
本題前に書かせていただきました。
さてそれではここから今日の本題に。
会社の現金が、利益のわりには余裕がない理由として考えられる、
前回に続く大きな要素を3つ、お話しします。

借入金の返済

借入の返済は、
以前借りたものを返す、
ということですから、
その金額はもちろん経費ではありません。

じゃあ、借りたお金はいつ経費になってるんだ!
とよく訊かれることもありますが、
そのお金を経費支出などに使用したときに経費になっているのです。
借りたときに収益として税金の対象になるものではありませんから
当然返す時も経費ではないわけです。

ですから、返済額が大きいと、
利益のわりにお金がたまっていきません。
ちょっと正確性を欠きますが、乱暴な言い方をすれば、
会社は利益を出して税金を払ったその後の当期純利益の中から
借入を返済します。
当然と言えば当然のことです。

したがって、当期純利益を超える返済額で返済が設定されていると、
利益を出してもキャッシュは減少していくこととなります。
しかも利益は出ていますから税金は払う必要が当然あります。
これは純粋に
「返済スピードが速すぎる」ということでもあり、
「その返済に見合うだけの利益が出ていない」ということです。

返済期間を延長することは条件変更といって、
赤字で資金繰りがどうしてもまわらない会社がすることですから、
返済期間を延長するのではなく、
追加融資を受けることで資金繰りを健全化させます。
返済スピードが速すぎるわけですから、その一部を借り戻して、
返済スピードを和らげるようにする、ということです。
具体的には年間3000万の返済が厳しいので、
運転資金として2000万借りる、ということです。
こうすると事実上年間返済額は1000万。
このようにして、徐々に借入金を減らしていく資金政策をとります。

固定資産の購入

固定資産は原則として
「取得価額が10万円以上の資産」
がこれに該当します。
こういったものを購入した場合には、
その支払った金額が全額その時に経費になるのではなく、
減価償却費として何年かにわたって経費になっていきます。

例えば事業年度が始まってすぐに
300万円の車を買ったとして、
これが6年間で減価償却として毎年経費になるとすると、
その年は50万だけしか経費になりません。
残りの250万円は来期以降の経費です。
この250万円分だけ、利益と資金出費に感覚のずれが生じます。

さらに土地にいたっては、
それがいかに少額であったとしても、
一切経費にはなりません。
時間の経過で価値が減少するわけではないので、
減価償却費として経費に落としていくという発想がないのです。
ですから土地を購入すると
その分利益は全く減少しないのに、
お金だけがマルっと減少します。

そして、先ほど「取得価額10万円以上」というお話しをしましたが、
逆に言うと10万円未満であれば一括で経費に落ちます(土地以外)。
そして現在、青色申告の事業者であれば、
30万円未満のものであれば、
年間300万円までは一括で経費にしてもいいことになっています。

ここでたまに耳にするのが、
「じゃあ、領収書を何枚かにわけてもらえば」
という言葉です。
1個80万の買い物を、例えば
28万・28万・24万の3枚の領収書に分ける、
とかっていう話しです。
賢明な本ブログの読者の方は、
「そんなアホな(笑)」と思うかもしれませんが、
まさにそんなアホな話しはなくて、
領収書の金額の刻み方ではなく、
「現実にいくらのものだったのか」で判定されます。
ぜひ、業者さんの
「領収書わけましょうか?」
みたいな口車に乗らないようにしてください。
税務署が見れば一発でわかります。
もっと言うと、バレるバレないという話しではなく、
「正しく経理・納税しましょうよ」という話しです。

保険積立金

最後に保険積立金。
会社で保険の契約をしたときに、
その保険が掛け捨ての保険のようなものであれば、
その保険料は普通に保険料として経費に落ちます。
しかし、中には全額が経費に落ちるわけではないものがあります。

原則、解約返戻金のあるものは、
現在は経費にならない部分があると思っておいていただいて、
だいたい間違いありません。
かつてこの「解約返戻金」のある保険は、
節税(単なる利益の先送りですが」に利用されました。
税法改正と新しい保険商品開発というイタチごっこをずいぶんと繰り返した後、
現在はそのほとんどが封じられました。
ほぼ節税(利益の先送り)はできない状態です。
出来たとしても解約返戻率が低すぎて、
会社にとってほぼメリットはありません。

保険はあくまで「保険」です。
節税(利益繰り延べ)商品が跋扈していたころから
ずっと私は言い続けていましたが、
保険は本来の保険の目的のために入りましょう。
単なる利益の繰り延べでしかありませんから。

全額経費にはなりませんが、
満期を迎えたときに、それまでにかけた保険料よりも
多少増えて帰ってくるというものもあります。
満期返戻率が100%を少し超えているというものです。
この場合、長い目で見たときに、
実質保険料を支払わずにその満期までの期間、
保険の機能を買うことができたということになります。
とてもお得な気もしますが、
その期間は資金が固定化され
換金できない(中途換金すると率が下がる)状態となりますので、
本当に資金に余裕のある会社がすることです。
しかし、会社は基本的には「機を見るに敏」で
投資を行える必要がありますから、
変に資金を固定化させておくべきではないかと思います。

保険会社の言われるままに保険に入り続けて、
保険積立金が資金繰りの邪魔をしているような会社を
たまに見かけます(特に歴史のある会社)。
そんなことにならないよう、保険についても
「会社の資金政策の一環」として、
よく内容を理解したうえで慎重に加入しましょう。


以上、前回を含めて、6大落とし穴でした。
もちろんこれ以外にもいろいろあります。
しかし、基本的には貸借対照表を理解して、
貸借対照表計画を策定できるようになれば、
100%回避・準備できる落とし穴です。

来年4月くらいより、経営計画のための財務セミナーを
動画セミナーとして開講予定です(もちろん有料ですが)。
貸借対照表の完全理解だけでなく、
経営計画を実行力あるものとするための会計セミナーです。
また追々告知していくこととなるかと思いますので、
ご興味のある方はぜひ。

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