一人一時間当たり限界利益を計算する具体的手法

少し前に、一人一時間あたり限界利益の大切さについてお話ししました。今回はその具体的な手段について。

ホテルの一室にて。

前回記事はこちら
「一人一時間あたり限界利益を求める!」

まずは、記録から始まる。

一人一時眼当たり限界利益を知るためには、
まずは全社員がそれぞれの行った仕事を記録していく必要があります。
当然のことですが。
でもこれが結構大変なんですよね。
しかし、これができないと結局、
「だいたいこれくらい」という感覚的なものとなってしまい、
分析に使えるような代物ではなくなってしまいます。

分析の前には現状把握。
現状把握は数値で正確に。
感覚と現実の差異を知るということも、
数値で把握することの目的の一つです。

数字は嘘をつきません。入力を間違えない限り。
だから数字で知ることで、
「実際はこんなことになってたんだ、思ってたのと結構違う!」
ということが結構あります。
現状分析において数値は絶対的に必要なものですので、
ここのところはしっかりと押さえておいてください。

実際にどのように記録するのか

ここでは私の例をあげて説明します。
まず基本的には時間や数値の記録ですからエクセルが思い浮かびます。
ただ私の事務所では、仕事をしながら都度記録をしていくといことを想定しています。
したがって、全員が常にそのファイルを開いていて
同時に入力をしていくということになりますので、
エクセルでの入力は相応しくありませんでした。
なので、私はGoogleのスプレッドシートを使用しています。
ちなみに現状はmicrosoft365を活用して同時編集は可能なようです。
その後の編集のことを考えるとエクセルが便利なので、
近いうちに移行を考えています。

左から
日時、担当者No.、顧客No、顧客名、業務No.、業務名、時間、分、時間換算
という形になっています。
顧客名と業務名は、それぞれマスタを作成してあって、
No.を入力するとマスタから拾ってきて入力されるように作成してあります。
要は、vlookupです。
Googleスプレッドシートでもエクセルと同じように使えます。

最後集計して分析することが目的ですから、
全員同じ基準での入力が必要です。
例えば会社名でも㈱をつけるかつけないかで集計上は別の会社となってしまいます。
ですから文字で入力するのではなく数値で入力し、
それにより同じ文言が入力されるようにしておかないと、
後で集計のための修正作業が膨大となってしまいます。

業務マスタ

そして業務マスタですが、私は大きく、
「通常業務」「スポット業務」「R&D」「間接時間」
の4つにわけ、それぞれの中でさらに細分化しています。
こうすることで、例えば
・全体の中で関節時間がどれくらい占めているか、
・「R&D」にどれだけ時間を使えているか、
などがわかりやすくなります。

社員ごとにシートが分かれており、
社員はそれぞれ自分のシートを日常の業務に合わせて
ひたすら入力していきます。
そしてデータ分析する際には、それらのシートを
一つのシートにまとめる必要があります。
分析のときにつなぎ合わせても良いのですが、都度は面倒なので
私はそれらのすべてのシートをつなぎ合わせた「全体」シートを作成し、
各々が入力した内容がここに飛んでいくようにあらかじめ設定してあります。

そして1ヶ月ごとにこのスプレッドシートをエクセル形式でにダウンロード。
その後この「全体」シートをピボットテーブルで集計します。
ピボットテーブルの作成については詳しく書きませんが、また機会があればこのブログで紹介しようと思います。いつになるかはわかりませんが(笑)。
ピボットテーブルで集計するとこんな形に表にすることができます。

エクセルでの集計表

この表の場合、
縦の列にお客様名、横の列が業務内容、その縦横の接点が時間集計、
という形です。
どのお客様のどの業務にどれだけ時間がかかっているか、
一目瞭然です。
この情報と、お客様ごとの粗利益情報をもとに、
一人1時間当たり粗利益を計算しています。
その数値が異常な場合、
「なんでこんなことに?」というのを
業務別の時間を見ることでだいたい知ることができます。

その後は改善策を講じて実行に移す、
ということですね。

ちゃんと生かすことが大切

記録方法の説明にずいぶんとボリュームを使ってしまいましたが、
このようにして私の事務所では記録をしています。
しかし、これだけ苦労して
(実際に毎日これに充てている時間はたいしたことではないですが)
記録した情報を、活用しなければ意味がありません。

小零細企業あるあるですが、
毎日業務日報や営業日報を書かされているが、
それがなんの役に立っているのかさっぱりわからない、
ということがあります。
実際に上司がその日報に目を通して印鑑を押しているだけ、
ということも本当に多いのではないでしょうか。

もしこんなことになっているのであれば、
その日報の存在意義は皆無で、むしろ時間の損失ですから、
即刻廃止してください。
それだけでみんな喜びますし、
上司の「仕事したフリ」時間もなくなります。

そして、社員からすると
日常自分が作成している日報が何の役に立っているかわからなければ、
やる気が起こりません。
もし何らかの形で活用されていたとしても、
「これって意味あるのか?」
と思われると社員さんはその記録をないがしろにしてしまいます。
不満も溜まります。
私も部下時代には同じように思いましたし、
上司時代にフィードバックできずに部下の不満を呼び込んだ経験もあります・・。

だからちゃんとフィードバックをしましょう。
そしてその改善の議論を社員さんと一緒に考えるべきだと思います。
その改善のネタはその現場に落ちているわけですから。

習慣化するまで、工夫する

この記録は、分析に足る正確性が必要です。
めちゃ適当な情報をもとに分析すると、
それはめちゃ適当な分析になりますから、
間違った意思決定をするもととなってしまいます。
そのためには、社員さん全員がこれを記録する習慣が必要です。

でもこれがなかなかに大変なのです。
先に述べた「これって意味あるの?」となった瞬間、
あっという間に記録が止まったりもします。
まずはいかにみんなにちゃんと書いてもらうのか、
工夫しましょう。

業態によっては困難かもしれませんが、
最初のうちは全員で一斉に記入する時間を設けてもいいかもしれません。
そして、あまり細かすぎないことも大切だと思います。
「分析に足る正確性が必要」と先ほど書きましたが、逆に言うと
「分析に足る程度の正確性で充分」なのです。
私の事務所が分単位で記載するようになっているのは
細かさを求めているからではなく、
その方が計算がしやすい場合もあるからです。
(開始時と終了時をボタンを押すとその業務にかかった時間が計算されるものをシートの右上に設置しています)

集計したときには何十時間何百時間の数値になるのですから、
5分や10分の誤差はどうでもいいのです。

皆がやらないから「やれ」と言い続けるだけでは芸がありません。
どうすれば皆がやってくれるようになるのか。
どうすれば、もっとみんなの記録が楽になるのか。
習慣化するまでは、ここに知恵を絞る必要があるかと思います。


何事も「気合と根性」で乗り越えるのはやめましょう。
「工夫と仕組み」で解決していくのが
あらゆる場面で大切なことだろうと思います。

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