子曰わく、近き者説べば、遠き者来る。

論語の、子路第十三の十六です。
論語の中でも個人的にとても好きな言葉です。

論語の一節。

身近なところから大切に。

「近き者説(よろこ)べば、遠き者来(きた)る」
孔子が、とある県の長官から「政(まつりごと)の要諦は?」と訊ねられて答えた言葉です。

「領内のものが喜べば、領外のものもやってきます」という意味です。

要は、
「身近な人から大切にしなさい」
ということですね。

会社の経営だけでなく、
人生全般で大切なことだろうと思います。

遠くのことに興味をもって、そっちばかりに気持ちがいくと、
足下が疎かになって、足下から崩れていきます。
遠くを求めて遠くのものを手に入れようとするほど、足下が崩れていくので、
遠くのものを手に入れられないどころか、
どんどんと弱体化したり、不安が増していったりするものです。

まずは足下を大切にすれば、自然と自分の求めるものが周りから集まってきて、
徐々に足下が積み上げられていくということですね。

今の社員さんを大切に。

「うちの会社には、いい人がいない、いい人が来ない」
と嘆いている経営者を、よく見かけます。
そういう方に限って、今、自社にいる社員さんを大切にしていません。

時給は安いし、働く環境は改善されないし、働いている人たちの顔が暗いし・・
そんな会社に、いい人が集まってくるわけはありません。

実際にそこの社員さんと顔を合わせていなくとも、
そういった空気感は会社のオーラとして、会社全体から感じ取れるものです。
ですから不思議と同じように求人を出していても、
そんな会社にはそもそも応募がなかったりします。

まずは、今いる社員さんを大切にするところから始めましょう。
今いる社員さんが楽しくいきいきと働ける環境を作ることを考えましょう。

一度淀んでしまった空気感を立て直すのは、極めて大変なことですが、
そんな空気感になってしまっている責任はだいたい経営者側にあります。
もちろん世の中には問題社員もいてますが、
そんな問題社員が会社内にずっととどまれるようにしていることまで含めて
経営者の責任です。
社員全員がいきいきと働いている空間になっていれば、
そこには自然と人が集まってくるようになってきます。


また、人が入ってはやめていく会社もよくみかけます。
社員さんの回転率の高い会社は、
間違いなくその組織に問題があります。
そして回転率が高いということは、
一向に能力・ノウハウが蓄積されていきませんから、
元々あった組織の力はどんどんと失われて、弱体化していきます。

そんな会社が組織内を見直さずにまた新しい社員を雇用しても、
結局はすぐにやめてしまい、
負のスパイラルを描いていきます。

人を雇用するコストも、新入社員を教育するコストも
ハンパないということは誰もがわかっていることです。
「社員がやめないで、経験と能力が積み上げられていく会社」というのはそれだけで、
とても強い力を持っています。

まずは、足下から。
離職率の高い会社は、なぜそのようなことになっているかということに目を向けて、
人がやめない会社にすることからはじめましょう。

今のお客様を大切に。

売上を求めて、今のお客様をないがしろにして、
どんどんと外へ外へとお客様を求めていく会社、
たまにありますよね。

私たちの業界(税理士業界)でも結構見かけます。
たまにDMで、
「年間新規契約100件!その秘密を公開!」
などというFAXが届きますが、
その事務所の規模が5年前とそれほど変わっていなかったりします。
100件のお客様が増えて、同じだけのお客様が離反しているということですよね。
「そんな秘密、公開していらんわ」と心の中でつぶやいてスルーしています(笑)。

こういった事務所はだいたい、そのうち弱体化して消えていきます。
当然ですよね。
今のお客様を大切にしていないのですから。

今の地方銀行の姿を見ていてもそう思います。
優秀な担当者ほど最前線(主にその地銀の地元の周辺他府県)に配置されるため、
地元が手薄でスカスカになっています。
そして自分の地元は、よその地銀にとっての最前線ですから、
結果として地元の顧客を少しずつ削り取られていくという、
わけのわからないことになっています。

まず大切なのは足下です。
既存のお客様です。
今のお客様に満足していただいていれば、
新しいお客様は自然とやってくるのです。

逆に今のお客様をないがしろにして、新規ばかりを追い求め、
釣った魚には餌をやらないということを繰り返していると、
足下が脆弱なだけに、いつか一気に崩壊してしまいます。

業種業態にもよりますが、
急拡大を目指す会社はこのような状況に陥りがちです。
規模はそれほど大切なことではありません。
足下を固め、少しずつ育っていく「年輪経営」こそが大切なことだろうと思います。

特にサービス業は、
社員さんが育った分だけしか事業を伸ばすことはできません。
社員さんの成長を超える売上の成長は、
単なる膨張です。
破裂する前にいったん膨らむのをやめて、
内なる成長が内部を満たしていくのを待つ必要があるのです。

一番身近な存在は?

では一個人にとって一番身近な存在は誰でしょう?
それは家族ですよね。
家庭は生活の基盤です。
これがゆらいでいるのに、その周辺のことがうまくいくはずがないと思うのです。
ですからまずは家族を大切にしましょう。

家族内が不和になると、それがストレスとなり、
経営に悪影響を与えます。
逆に家族が誰よりも強い味方となってくれると、
これほど心強いものはありません。

まずは身近な人(=家族)を幸せにする。
この意識が大切です。
確かに経営者は忙しいです。
なかなか家族のことを振り返っている時間がないということもわかります。
ですが、だからしょうがない、ということではなくて、
そんな中でもできることを考えて、
ちょっとのことでも実現しましょう。
その心がけと積み重ねが重要なことなんだろうと思います。

そして、実は家族よりも身近な存在、ありますよね。
それは自分自身。
自分自身を大切にしましょう。

「甘え」との境界線は非常に微妙なところではありますが、
自分を磨り減らしていきていくことが、
正しい生き方であるとは思いません。

「今、自分は身を削ってしまっていて、苦しいな」
と感じているのであれば、
どうすれば自分にとって自然な状態に近づけるのか、
どうすれば自分にとって楽しくてしょうがない状態に近づけるのか、
これを常に考えて、
少しずつでも仕事のあり方をその方向に仕向けていきましょう。


いろんな偉い人が言ってますが、
自分が不幸なのに、他人を幸せにすることはできないのです。

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