ゆっくり進む。でもとまらないで進む。

「ゆっくりでも、とまらなければ、けっこう進む」
私の座右の銘の一つです(もう一つは「一燈照隅」)。
ブログ開設当初に取り上げたテーマですが、
とても大切にしている言葉ですので、改めて整理してみました。

時間をかけて、ゆっくりじっくりと。

幸せにする順番

私はかつて、「大きな事務所にする」ということを目標にして、
突き進んでいたころがありました。
今から振り返ると7年くらい前です。
早いものですね。

「私の周囲の人たちを幸せにする」、ということを目的に走り続けてきたわけですが、
細かいことは置いときまして、
結果として体調を崩して事務所を半ばリセットすることとなってしまいました。
このときの私の大きな教訓は、
「大切にしなければいけないのは、身近な人から順番に」
ということです。

最も身近な人、それはやはり自分と家族です。

経営のために家庭を犠牲にしてしまっている経営者、
結構いらっしゃいますよね。
そして最も身近な理解者であるとの理由で甘えてしまいます。

結果、ないがしろにしてしまっています。

経営・仕事は人生すべてではありません。
あくまで人生の半分です。
もう半分は自分を含めた家族・両親との生活。
「ボリューム」としては半分ずつかもしれませんが、
幸せな家族との生活が安定した人生の基盤になってくることから考えると、
家族あってこその人生ですし、
安定して家庭生活があってこその仕事です。
そういう意味で、重要性という観点では全く半々ではありません。

だからこそ、
経営者も家族を絶対に大切にしないといけないと考えています。
家庭を犠牲にすることを前提にしている経営は、
中長期的に破綻することが多いです。

今、仕事が大切な時期で、家庭を顧みる余裕がない。
その気持ちはとてもわかります。
しかし、「いつかは」ではなく
「いついつまでに」家族の時間を持てるようにする。
そしてそこから逆算して今具体的にこんなことに取り組む。
この思考が大切です。

座右の銘の話しから少し離れてしまいましたので、本題にもどします。
この辺りのお話しはまた別の機会に。

ゆっくりでも、とまらなければ、けっこう進む。

これは、小惑星探査機はやぶさの責任者を務めている、
國中弘氏の言葉です。

はやぶさのエンジンは小惑星に到達して帰ってくるまで燃料切れをおこしてはいけないので、
超超省エネでできています。
そのエンジン(イオンエンジン)の推進力は、
地球上では1円玉を少し動かすだけの力しかないそうです。

しかし無重力で抵抗がゼロの宇宙空間では、
この推進力を重ねていくことで最終的に時速10万キロを超えるそうです。
まさに、この言葉を象徴する逸話ですよね。

そして私はこの言葉に、二つの意味を重ねています。

1.積小為大

一つは、二宮尊徳翁がおっしゃるところの「積小為大」。

ちいさなことを少しずつ少しずつ積み重ね、
それを怠らず続けることで最終的にはすごいところに到達する、
ということです。

あのイチローですら言っています。
「結局は小さいことの積み重ねでしかないんですよね」と。
イチローは天才なので参考にならないかもしれませんが、
凡人だからこ、その小さいことの積み重ねが本当に大切なんじゃないかな、
と思っています。

ただ気をつけないといけないのは、
何も考えずに積み重ねるのではなく、
目標感をもって積み重ねる、ということです。

何も考えずに続けていることは、
積み重なっているのではなく、
単なる同じ事の繰り返しに過ぎません。

なりたい状態に向けて、
日々少しずつ少しずつ薄皮を重ねていくように続けていくことが、
最終的に自分自身を面白いところへ連れて行ってくれるのではないかと思います。

2.ゆっくりでも。

『目標をもってそこに向かって全力で!』
というのはよく聞く話です。
しかし、人それぞれ精神力は異なります。
常に全力という状態を継続することはなかなか困難です。

そして理想が高い完璧主義な人ほど、
なかなか自分の思うところに到達しないことに焦りを感じます。
この焦りと「絶対そこに到達しなければ」という
「こうでなければ精神」が
徐々に心をすり減らしていきます。

人間、できることはたかがしれてます。
だからゆっくりでいいんだと思います。

この言葉のいいところは、
ひらがなだらけでストイックさを感じさせないところです。
ゆっくりでいいんです。
止まりそうでも止まらなければ。
しんどいときは、カタツムリ状態でもいいと思うのです。

無理なく楽しくゆっくりと。

人間、目標を立てるとなるとやはり
「頑張ろう」という気持ちが強くなるので、
ハードルの高い計画を立ててしまいがちです。

そしてその目標に向かって焦って突き進んでしまうと、
相当の確率で頓挫してしまいます。

目標が高いことはいいですが、
そこに向かって「ゆっくり」進んでいくという気持ちが大切です。
あとは取り組む内容が、
・自分に向いているか、
・自分が心から楽しめるか、
ということも重要です。

周りに影響されて、
本来の自分に向いていない方向へ高い目標を伸ばしてしまうと、
最初のうちはいいですが、
最終的にそれは苦行でしかなくなります。

自分が自然と楽しく取り組み続けられる。
そんな目標がいいんじゃないかと思います。

そういう意味で、仕事はやはり、
自分が自然と楽しく取り組めるもの、
というのがベストですよね。

経営者はありがたいことに、
その仕事の選択権をもっています。
社員さんでも小さい会社でその経営者に理解があれば、
ある程度の裁量権で仕事ができます。
大きい組織や公務員ではなかなかこうはいきません。

せっかく自分に与えられた選択権、
これを活かさない手はないかと思います。

自分が無理なく楽しくゆっくりと、
でもとまることなく続けることができる。
そんな事業が、
その経営者やその会社にとってふさわしい事業です。

もちろん社会がそれを求めていないといけませんが。
ニーズ・ウォンツのないところに、仕事は生まれませんから。

ただ、それを求める人が世の中にいるのであれば、
ゆっくりでも、とまらず進むことのできる道を事業領域としましょう。
そうすればゆっくりでも、
最終的に誰も手の届かない領域に、到達することができると思うのです。

そして今はそれが何かわからなくとも、
それを求め続けることが大切なんじゃないかと思います。

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