入るを量りて、出ずるを制す。

本日は、久しぶりにバックナンバーを。
利益を上げるための基本的な考え方である、
「入りを量りて、出ずるを制す」より。

ーーーー以下、2019.12.10の記事より転載しますーーーー

誰でも知っている、とても有名な言葉ですが、案外みんなできていません。
今日はこの意味から考える損益統制について。

この言葉の意味するところ

この言葉はもともと、
中国の「四書五経」と言われるものの一つである
「礼記」に記されている言葉だそうです。
原文は「量入以為出」。
書き下すと、
「入るを量りて、以って出ずるを為す」となります。
ブログタイトルには一般的に使用されている
「制す」の方を使いまいした。

この言葉の意味は、
『最低限入る量を厳しく計算したうえで、その範囲内で出す量を決める』
ということです。
これが出来てないと
国であれ会社であれ家計であれ、
お金がなくなっていきます。
赤字の会社は結局、基本であるこれができていないように思います。
さて、皆さんの会社はどうでしょう?

入るを量りて・・という時点でこれは、
「計画を立てる」、ということですから、
損益計画すらない会社は、
そもそもできていないということになります。
小零細企業に至ってはこの時点で多くの会社が
ふるい落とされるのではないでしょうか。

入るを量れていない。
だからといって、出ずるを為しているわけでもない。
赤字になってからでは遅いのです。
健全経営を行っている会社は、
日頃からこういったことを徹底しています。
ですから経営計画がなにもできていない会社でも、
まずは最低限の損益計画を作りましょう。
それも「数字合わせ」「数字遊び」ではない、
現実に即した損益計画を。

そうやって毎年少しずつ
どれだけのお金を貯めていくのか、
ちゃんと計画するのです。
結果論ではいかんのです。

よく銀行に「お金貸してくれない」といって
文句を言う方がおられます。
ちょっと厳しいことを言うようですが、
そういう会社ほど、まずこれが出来ていません。
こんな会社や人に、自分だったらお金を貸しますか?
ってことだと思います。

出ずるを制す

私は、財務健全化のためには、
まず大切なのはこちらだと思っています。
なぜかというと、
経営者が100%コントロールできることだからです。
「入る」の方は売上であって、相手方のあることですから、
どこまで綿密に計画しても
100%制御することは不可能です。
でも経費の方は違います。
自分が「使わない」と決めたら出ていかないお金です。
だからこそ、自分の会社が
どんなことにいくらお金を使っているかを知りましょう。

小さい事業者や会社であれば、
その支出の意思決定はほとんど
経営者自身が行ってきているはずです。
しかし何年も経営していると段々と
何にどれだけ使っているのかということが
あいまいになってきます。

「100%、オレは一切、無駄遣いしてへん!」
と胸を張って言い切れる経営者は
案外少ないように思います。
もし言い切れたとしても、
そう勘違いしていることが多い印象です。
そんな方は、まず
自社がどんなことにいくらお金を使っていることに、
徹底的に目を向けてみましょう。

毎年決算をすると税理士から
「総勘定元帳」というものをもらっていると思います。
もらっていないのであれば、言えばすぐに出てきます。
これを見れば、
どの経費項目に何を使っているのか一目瞭然。
自社で会計入力をしている会社であれば、
その会計ソフト内ですぐに確認可能です。
それを一つ一つ、次のように自分に問いただしながら
精査してください。
「これは、『本当に』必要な経費だろうか」、と。
すでに赤字が常態化している会社であれば、
「明日会社がつぶれるとしても、この経費は支払うだろうか」
という厳しい視点で。

しかし、このブログでも何度か触れていますが、
販促・広告や教育費用は安易に削らないようにしてください。
会社の将来を奪ってしまうことになりかねません。
もちろんその効果を精査して
効果がないのであればやめる、
もしくは、より効果の高いものにシフトする、
ということは当然のように必要です。

入るを量る

次に入る方。つまり「売上」です。
こちらの方が難しいですよね。
前項で触れた通り、相手のあることで、
こちら側で100%コントロールできませんから。
しかし、この「入るを量りて~」の格言にある通り、
100%でないにしても、
ちゃんと計画・想定をしないと
どれだけ経費が使えるのかわかりません。
そして売上計画を立てている会社でも、
案外これが甘々(アマアマ)になっているのをよく見かけます。

売上計画の見込みが甘いと結果その売上は達成されないため、
容易に赤字に転落してしまいます。
だから売上計画も
「だいたい、こんなもん」とか
「これくらいは、いけるやろ」
とかいった形ではなく、
「どんな売上を」
「どうやって稼ぐのか」
という具体性をもって作成する必要があります。
もっと言うと、これを粗利ベースで考えるべきです。
「どの売上を」
「どうやって稼いで」
「どれだけの粗利をあげるのか」
という形です。

そしてこれを数字合わせにしないためには
行動の具体性が必要ですから、
綿密に
「こんな行動・活動を、これだけ行えば、これだけの売り上げがあがる」
という仮説を立てるのです。
これをできるだけシビアに策定しましょう。

経営計画は、会社の「目標」です。
目標ですから、高く設定されがちです。
「高みを目指す!」という美しい言葉が
シビアさの隠れ蓑にされているのです。
志を高くもっているようで、実は詰めが甘いだけ。

ただ、本当に志高く、高い目標を掲げるのであれば、
その目標とは別に
「最低クリアできるライン」
「最低限クリアしなければいけないライン」
というのを同時に定めましょう。
そうでなければ「出ずるをなす」ことができなくなってしまいます。



以前のブログで、
「損益の目標は利益から逆算する」、
ということもお話ししました。
今回のお話しはその逆のような話しではありますが、
「成り行きにまかせない」という意味では同じことです。
・利益から逆算して、必要な目標売上を掲げる!
という高い志と同時に
・徹底的に経費を最適化して、
 最低限の売上でも利益が出る体質を作り上げる!
という、
両面の思考を持っておいていただきたいと、思います。

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