その利益は適正な利益か。

会社は、利益を出さなければいけません。
むしろ、良い会社をつくっていくためには、
最大限の利益を出すことが求められます。
しかし、同じ「利益を出している」といっても、
その中身はずいぶんと違うことが往々にしてあります。

その利益は本当の利益か。

会社は、売上規模ではなく、
結果として利益を出しているかどうかが最も大切です。

いくら売上が多くても、
最終的に利益として残していなければ、
それは内部留保として蓄積されるものではありませんから、
当然ですよね。

しかしその利益は果たして、「本当の利益」なのか、
ということを考えなければいけません。

小零細企業は99%同族会社です。
したがって、役員報酬は
経営者が自分自身で決めることができます。

ですから役員報酬を調整することで、
極端な話し黒字にも赤字にもすることが可能です。
役員報酬が年間3,000万円で1,000万円の黒字を出している会社と、
役員報酬が年間400万円で同じ1,000万円の黒字を出している会社、

同じわけはないですよね。

多くの経営者は法人に利益が出て税金を支払うのがイヤですから、
役員報酬を多く取ろうとする方が多いでしょうが、
会社に利益を残そうとして、
極めて低い役員報酬に設定する方もおられます。

会社の健全化、という意味ではこれはとても正しいことですが、
だからといって、それで
「うちの会社は利益が出ている」
ということではない、
ということは肝に銘じておく必要があります。

逆に言えばそれは、
「それだけ役員報酬を下げなければ利益がでない会社」
です。

小零細企業であっても、一経営者ですから、
やはり年間1,000万円くらいの役員報酬をもらっても、
しっかりとした利益(例えば限界利益の10%程度)を出してこそ、
「しっかりと利益が出ている会社」
だろうと思うのです。


そして交際費がほとんど計上されていない会社が
たまにあります。

もちろん、自分の遊興に近いものを会社に付けていない、という意味で、
とても健全なことだろうと思います。

しかし、交際費の中には、
本当に経営者としての自分のため、そして
本当に会社のためになっているものもあるはずです。

そういったものを除外するのは、
逆に実体が見えなくなっているも同然です。

商品の仕入も、
営業に本当に必要な交際費も、
会社の経営のために必要なのであれば、
それは必要経費ですから、
経費に入れるべきものです。

それなのに仕入は除外すると粉飾扱いで、
必要な交際費を除外するのは健全、
というのは違うんじゃないかと思います。

「これは本当に会社のため」
と旨を張れる交際費は、
むしろ堂々と経費に入れるのが、
「実体を現す会計」
という意味では正しいのです。

充分に伝わっているとは思いますが、
交際費をどんどん経費に入れましょう、
と言っているのではないですからね。

その利益は将来性ある利益か。

会社はその時利益が出ていれば、
それでOKという存在ではありません。

少なくともその先何十年と、
存続し続ける必要がありますから、
将来のことを考えず今だけ利益が出ていても、
それはどうかと思うのです。

たまに、人件費以外の経費が極小で、
とても利益の出やすい体質になっている会社があります。

もちろんこれも素晴らしいことです。

固定費が抑えられていて利益が出やすい、ということは
これは筋肉質な会社ですから。

しかしその中でも
ちゃんと将来に向けた投資を行っている会社と、
本当に何の経費もかけずに
「利益が出ている」と旨を張っている会社もあります。

しかし会社が将来にも渡って
継続的に利益体質の会社になろうとするならば、
将来への投資というのは、
基本的には絶対必要です。

製造業が試験研究にお金をかけていなかったり、
ノウハウ提供型の会社が、研修教育費に全くお金をかけていなかったり、
というのは、
やはり今の経費を削減することで、
将来の収益性を奪ってしまっているように思うのです。

これは「筋肉質」な経営ではなくて、
「骨と皮」だけの経営です。

骨と皮がほとんどで筋肉がちょっとだけだと、
今は動けるかもしれませんが、
ほどなく筋肉がなくなって身動きが取れなくなります。

もちろん無駄遣いをしてくださいと言っているのではありません。
ちゃんと設備・開発・教育にもお金を使って、
その上でしっかりした利益が出せる会社というのが、
本当に利益が出ている会社である、ということです。

誰かの犠牲の下の利益ではないか。

「うちの会社、ちゃんと利益が出ているよ」
と損益計算書を見せていただいたときに、
私がやはり気になるのは、社員さんの人数です。

社員さんとパートさんの割合にもよりますが、
パートさんがほとんどいないとすると、
その損益計算書に上がっている給与の総額を社員さんの人数で割ると、
簡単に一人あたりの利益がすぐにわかります。

「これだけの給料しか払ってないんだったら、それは利益が出せているとは言わんなぁ」
と感じる会社もたくさんあります。

それを口に出すかどうかは、相手を選びますが(笑)。

いくら会社に利益が出ているとしても、
社員さんの平均年収が300万円台だったら、
ちょっとどうかと思いますよね。

一度あげてしまった給与を下げることは相当に困難です。
ですから将来への不安を常に抱えている経営者が、
なかなか給料をあげるのをためらうという気持ちも、
まぁわかります。

でもだいたいそんな経営者に限って、
自分の給与や退職金はちゃんと取る算段でいたりします。

これでは人は付いて来んですよね。

そしてそのくせ、
「うちの会社には、いい人材が来ない」
などと言うのです。

心当たりはありませんでしょうか?

いい給料を支払っていないのに、
社員さんのことを心から大切に思っていないのに、
そこにいい社員さんが集まってくるわけはありません。

当然、いい給与を支払えばそれだけでいい社員さんが集まってくるわけはありません。
ある程度ちゃんとした給料を支払っているという事実は、
いい社員さんが集まってくるための、十分条件ではなく、必要条件です。

これが本当に会社の状態が悪くて、
役員報酬も全然取れていなくて、
「すまんけど今はなんとかこらえてくれ」
という状態であれば、止むなしかもしれません。

しかし利益が出ているにも関わらず給与をあげられないのは、
それはきっとケチくさいんだろうな、と思います。

「今は確かに利益が出ているけど、今はまだ上げられへんのよ」
とおっしゃられますが、
「じゃあそれ、いつ上げるんでしょう?」
ということです。

社員さんの給与が抑えられた結果出ている利益は、
社員さんの生活の犠牲の下、成立している利益です。
そんな利益は、本物の利益ではありません。

しっかり給与を支払い、
しっかり社員さんが最大限の力を発揮できるような組織をつくり、
しっかりと将来を見据えた投資を行って、
そのうえで経営者自身もしっかりと報酬をもらい、
ちゃんとした利益を出す。

これが本当に胸を張って言える
「うちは利益が出ている」
という状態です。

実際にそうなっていない会社は、
シミュレーションでも良いので、
それらの経費を本来あるべき金額に置き換えて、
利益計算し直してみましょう。

それでもしっかりと利益が出ているのであれば、
ぜひ待遇面の改善や、
明確なビジョンに基づく将来への投資に目を向けていただけたら。

そしてそんな良い会社を作っているのであれば、
堂々と役員報酬を取ればいいと思うのです。

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