黒字も赤字もスパイラル。

何事においてもそうですが、
会社の業績向上も業績悪化もスパイラルします。

黒字が出ていい方向に向いていくと、
どんどん良くなっていきますし、
赤字になって悪い流れに乗ってしまうと、
どんどんと悪い方へ流されて行ってしまいます。

黒字のスパイラル

事業は「顧客の創造」がその存在目的です。
事業である以上収益をあげる必要があり、
その収益を上げるためには「顧客の創造」が必要です。

ですから、言うまでもないことですが、
まずはマーケティングを通して売上をあげていくことから始まります。
そして付加価値の高い売上をあげることで、
限界利益(粗利益)は高まっていきます。

その過程において、発生する固定費をしっかりとコントロールすることができれば、
最終的に経常利益を残すことができます。

この「経常利益」から税金を引いた残りが「税引き前利益」となり、
借入の返済の原資になっていきます。

借入返済によって借入残高が減少するとその分当然利息は減ります。
利息が減るということは、
それは固定費がその分減ることを意味しますから、
さらに経常利益がでやすい状態になります。

そして経常利益のうちから返済に充てたものの残りが、
次なる販促や設備などの投資の原資となっていくことで、
それがまた次の売上を安定・増加させることにつながっていきます。

こうして損益上だけでも利益は上方スパイラルを描きます。

数字の世界だけでなく、
利益が出ていればその会社は全社的に時間的・精神的にゆとりがありますから、
事業を維持発展させていくことをゆっくりと考える余地がうまれます。

さらには経営者に金銭的・精神的ゆとりが生まれていますから、
それを福利厚生など社員のために使い、
良好な社内コミュニケーションを構築することができて、
会社全体のモチベーションが高い状態で維持されます。

そして会社はさらに売上と利益が生まれやすい環境へと育っていくのです。

これ以外にもまだまだありますが、
好循環が生まれている会社というのはこういったものです。

赤字のスパイラル

逆に赤字が続いて資金力が乏しくなってしまっている会社は、
負のスパイラルを描きます。

売上は減少し、それを維持するために取引先の値引き要求に応えざるを得なくなってしまい、
限界利益(粗利益)はどんどん下がっていきます。

すると経常利益がさがるだけでなく、
限界利益に占める人件費割合(労働分配率、といいます)はどんどん高くなり、
さらに利益が出にくく、赤字になりやすい体質となります。

赤字になるとお金がなくなってきますから、
それを運転資金の借入でつなごうとします。
事業を拡大するための運転資金の借入はまだ良いとしても、
赤字による資金不足を補うための借入には、
経営をプラスの方向へともっていく要素はありません。

そして借入が増えると支払利息が増え、
これによりさらに経常利益が出にくくなるどころか、
赤字がさらに拡大する、ということにつながります。

そしてその環境で資金状態が改善することはありませんから、
運転資金で借りた融資の返済が、
さらにその後の資金不足に拍車を掛けることになるのです。

こうして損益的にも資金的にも負のスパイラルを描いてきます。

この経営状況の延長線上に、
この会社の改善はありえませんから、
なんとかこの状態から脱却する必要があります。

しかし利益率の低い仕事を繰り返しているため、
必然的に労働時間は長くなり、
時間的・精神的ゆとりがなくなっているため、
この悪循環からの脱却のための方針を考える時間を確保することができず、
社内の改善が進んでいかないのです。

継続的に相当の赤字が発生する状態になったうえで
資金的にもギリギリの状態が続くような状況に至ってしまうと、
そこからの脱却は困難を極めることとなってしまうのです。

スパイラルから脱出するために~まずは支出を抑える。

そうは言っても、このまま手をこまねいていては、
負のスパイラルに沿って、さらに状況が悪化し、
いずれは倒産、
ということになってしまいます。

ですからなんとしても、
今の事業方針の延長線上ではなく、
根本的に事業のあり方を変化させ、
このスパイラルから脱却することを考えなければなりません。

とにかくまずは赤字の状態から脱出しなければいけません。
資金がどんどん流出していって、
どんどん体力を失っていっている状態ですから、
まずは、出血を止めるのが何よりも優先されます。

したがって、最初に考えるべきは、
経費の見直しです。

私の経験上、赤字の会社ほど、
経営者がちゃんと会社の数字を把握できていないことが多いですから、
その経費の中に無駄が多い状態になっていたりするものです。

普通の感覚からしたら、
「儲かってないんだから、なんで不要な支出してるんだよ」
となるかもしれませんが、
そんなことよりも売上の確保に必死になってしまっているのが現実です。

しかし売上は顧客があってこそ。
自分自身で100%コントロールできるものではありませんし、
そもそも今の売上先は利益率が低くて
それが会社の負のスパイラルを生んでいますから、
必死で売上をあげることは
スパイラルからの脱却にはつながりません。

しかし、経費は違います。
その経費を支出し続けるかどうかは、
100%経営者の意志決定で決まります。

だから経営者が覚悟をもって、
経費を徹底的に削るところから始めるのです。

「なんとなく、この支払は続けておかないと」
などという甘い考えでは、一向に前に進みません。

「明日会社が潰れるとして、それでもその経費を支払いますか?」
という気持ちで減らしていきましょう。

この時の注意点としては、
その削減により会社の成長力を大きく損なうようなものは
手を付けるべきではない、ということ。
広告費・販促費・教育費などは
削減しやすく瞬間的な効果も大きいモノですから、
最初にこれらから手を付けてしまいがち。

しかしこれらはどちらかというと後回し。
ちゃんと検討をして、本当に不要と判断してから削減しましょう。

スパイラルから脱出するために~1時間あたり限界利益を高める

次に売上の改善です。
この場合にまず考えるべきは、
売上がなくて毎日がヒマなのか、
売上をあげるために毎日朝から晩まで働き詰めだけれども儲からないのか。

前者であれば、それはただの営業不足。
時間があるなら売上を伸ばす余地があるのですから、
営業活動やマーケティングに力を入れて、
売上そのものを向上させます。

今の商品が売れない、ということであれば、
新規商品の開発などを行うのも良いかもしれません。
なんせ時間はあるわけですから。

そして後者のように、所謂
「貧乏暇なし」の状態になっているのであれば、
事はより重大です。

時間がないということは、
基本的にこれ以上売ることはできないからです。

売上を増やすために雇用を増やすとなると、
もともと利益率の低い仕事のために固定費を増やすということになりますから、
もっとしんどいことになっていくことは目に見えています。

ですから順番としては、なかなか大変なことでしょうが、
「利益率を高める」というところに
焦点を当てていくことが求められるのです。

商品を安く売りすぎている、ということでしたら、
その商品の値上げを考えてみましょう。
それによって買ってもらえなくなったら困る、
ということかもしれませんが、
そこは冷静に計算をしてみましょう。

例えば原価800円のものを、これまで1,000円で販売していたとします。
これを1,100円に値上げしたとします。
「買ってくれる人が減って困る!」ということかもしれませんが、
これまで1個当たりの利益が200円だったところが300円になっているのです。
買ってくれる人が今より1/3減少しても、会社に残る利益は同じです。
しかも販売数が少ないということは、
それだけ手間がかからないということですから、
社員一人当たり一時間あたりの粗利益は増えている、
ということになります。

このように、ただしく原価を計算し、
それによってどれだけの値上げでどれだけの販売減少が許容されるのか。
数字で把握することが大切です。

かつて私の顧問先で、
月200万の売上金額となっている商品の販売を
完全にストップしましたが、
会社の利益はほとんど変わらなかった、
ということがありました。

そしてその製造に関わっていた人の手が丸々空いたのです。

利益率の極めて低い売上を失うことを必要以上に恐れないこと。
するとそうやってできた時間を、
より利益率の高い売上にシフトすることができるようになります。

いかにして今までよりも短い時間で利益をあげるのか。
どこに力を注ぐことで、それが実現できるのか。
ここに集中して取り組むことで、徐々に
利益を失うことなく時間を確保することができるようになっていったり、
時間が変わらず利益を増やすことが出来るようになっていくのです。


負のスパイラルから脱出する特効薬はありません。
世間では「V字回復!」といったことがもてはやされたりしますが、
それはほんの一握りのこと。

一発逆転の軌跡のV字回復を起こそうとするのではなく、
現状を正しく分析して、
地道に少しずつ正しい道へと足を踏み出すことが大切です。
その積み重ねによってあるときスパイラルから抜け出し、
抜け出した瞬間から、
これまでの苦労が何だったのかと思うくらいに、
利益が出るようになっていくのです。

負のスパイラルにあるということは、
今のやり方が大きく間違っているということ。
ぜひ、違った方向に足を踏み出して、
ちゃんと儲かる商売をしていきましょう。

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