事業の目的は、利益でなく顧客の創造。

かのピータードラッカーは、事業の目的は「顧客の創造」と言っています。
そして事業の目的は利益ではないと断言しています。
ということで、事業の目的と利益の関係についてまとめてみます。

顧客へのメッセージと、そのメッセージ感あふれる店舗

なぜ事業の目的は利益でないのか

ここで前提としておきたいことは、
問うているのは「事業の目的」であって、「経営の目的」ではありません。
経営の目的ということであれば、
「そりゃあ、利益が経営の目的ではないでしょう」
となりますから。

ここで問うているのは「事業の目的」です。
それならば
「利益を出すことじゃないの?」
という議論も出てくるだろうと思います。

もちろん、会社は利益を出さなければいけません。
むしろいかに利益を最大化するか、ということは
常に考えないといけないところだと思います。

会社は利益が出ていないと継続できませんし、
利益が出てこそそれが成長と安定の糧になりますから。
しかし、ドラッカーは、次のような意味合いの事を言っています。

「利益は目的ではなくて、条件である」

利益は、事業が継続する ための条件であって、
それ自体を目的とするとおかしなことになるということです。
考えてみればそうですよね。
「利益」そのものを目的ということにしてしまうと、
「稼いだものがエライ」ということになりますから、
何をおいてもその瞬間最大限の利益を出すことを目指すことになります。

すると目先の利益を追うことになり、
必ずしも顧客の求めない、自分自身の儲かるものを優先して売ってしまうことになります。
こう考えると、事業の目的が利益ではない、ということは明らかかと思います。

だから、事業の目的は「顧客の創造」

事業というものは、継続してこそ意味のあるものです。
多くの顧客をだまして変な商品やサービスを売りつけて、
ひと稼ぎしたらそれはやめて次の商売を始める、
などというのは、事業とはいえません。

それでは、事業を継続させていくために何が必要かというと、
それは「顧客」です。
必要なだけの顧客を獲得し続けることさえできれば、
その会社は継続することができるのです。
逆に利益だけを求めていくと、次第に顧客は離れていき、
中長期的に利益を生み出すことは不可能となってしまいます。

ですから、まず最初に考えるべきは、
いかに顧客の求める価値を提供できる商品・サービスを開発し、磨き上げるか、
ということです。
そしてそれをいかに会社の利益につなげていくか、ということは、
その次に考えるべきことなのです。

ここで注意点は、利益はその次に考える「べき」ことであって、
考えなくてもよいということではありません。
良い商品・良いサービスを掲げていればそれだけで売り上げがあがって
利益が自然に生まれるかというと、
全くそんなことはありませんから。

社員さんにメッセージとして伝わるもの

経営者が、事業の目的をどこに据えるかによって、
もちろん社員さんの動き方も変わります。
経営者が発するものは、社員さんへのメッセージですから、
経営者が
「事業の目的は利益だ」
というメッセージを伝えたら、
社員さんはそれを受け止め、そのように行動します。

しかしこのメッセージ、
直接その通り言葉にしていなくてもそのように伝わってしまったりします。
例えば「顧客第一」を理念として掲げている会社で、
営業会議になったら売上がどうなっているか、ということばかり詰められる、
という状態になっていると、
現場の営業社員は
「結局、売上を取ってくればいいんでしょ」
と考え行動するようになります。
メッセージが誤った状態で伝わってしまっている、ということです
(または経営者が実際には顧客よりも利益のことばかり考えているか)。

理念や行動指針みたいな、成文化されたお題目のようなことではなく、
経営全体の動きの中に
「事業の目的は、利益よりも、顧客の創造だ」
ということが行きわたっていなければ、
メッセージは正しく伝わらないのです。

ですから、
経営計画を作りこむときにも、
それを伝えるときにも、
そして会議の場や、日常の社員さんとの何気ない会話の場でも、
この「メッセージ」という部分に
注意を払う必要があります。
経営者の一挙手一投足が、経営者の発するメッセージなのです。

最終的に利益につながらなければ、
会社も事業も継続できないことは事実であり、
それが現実です。
だからこそ、利益を上げることを意識する習慣を身につけることは大切です。
ただその前提に「顧客の創造」それも
「永続する顧客の創造」
というものがあるということを同時に語り続ける必要があるのだと思います。

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