「やること」は一個でいい。

経営者は基本「やりたがり」なので、
いろんなことを思いついては、いろいろやりたがります。
そんな自分に、いかに歯止めをかけるか、ということが大切です。

やることは「一個」でいい。

経営計画のことを経営者の人と一緒に考えようとするときに、
「今期は何がやりたいですか?」
というようなことを聞くと、
5個も6個も、やりたいことを挙げてこられます。

やっぱり経営者は、日頃から自分の事業のことばかり考えてますし、
そこに対して問題意識・課題意識をもっていますから。

そんな意味でこれが何一つ出てこないのは大いに問題です。
これが出てこないのは、本当に何も考えていないか、
頭の中がぐちゃぐちゃで整理されていなくて何もアウトプットされないか、
このいずれかですから。

しかしこうやって挙げられたたくさんの「やりたいこと」を
とにかく全部、今年の経営計画にはめ込んでしまわないと
気が済まない方がおられます。
これはこれで、大いに問題です。

その一つ一つが微に入り細に入り、
という細かいことであればまだしも、
大テーマみたいなものを3つも4つも経営計画に詰め込んでも、
まぁ、実現されることはありません。

大テーマは一つに絞り込みましょう。
そしてそれをいかにして実現していくのか、内容を細かく分割して、
そこに人材を当てはめて、
組織としてスケジューリングしていきましょう。

そこまでしても実際に手掛けていく中で、当たり前のように、
当初の段階では想定もしなかったようなことが起こりますから、
それらを一つ一つ解決して、その大テーマを深めていくには、
「やること」は一個で充分なのです。

中途半端がよくない。

先ほど、「詰め込んでも実現されることはありません」
と書きましたが、
これは本当にそうで、まず実現されることはありません。

そもそも私たちは小零細企業。
人的資源も金銭的資源も足りませんし、
結果として時間的資源が極めて少ない。

だから、あれこれ手を出している場合ではありません。
「なんとなく」であれば形にすることはできるでしょうが、
まあ、中途半端なものになってしまいます。

中途半端なものには力が宿りませんから、
それが社内改善のことであれば、たいした効果を生みませんし、
それが新規事業であれば、まず成功しません。

特に中途半端な新規事業は、
こだわりも弱く、独自性も乏しく、
極めて競争力の弱々しいものとしてできあがります。
顧客にはちゃんとそういうことが伝わりますから、
そこに価値が見いだされることはありません。

事業は、「とりあえず、始める!」というスピード感は大切ですから、
完成度が低くともまずは始めることが大事です。
しかしそうやって始めたあとも日々更新していって、
改善を積み重ねて、塗り重ねて、
スキのないものを作り上げていく必要があるのです。

経営は、数多くのことに手を付けるのがエライわけではありません。
一つ一つ地道に積み重ねて、一つ一つしっかり形にしていく。
そんな地味な作業ができる人が、
案外優れた経営者なのだろうと思います。

大テーマが1年に一つ、ということは、
10年で10個ほどのことしかできません。
でも30個手を付けて、どれも中途半端になっているよりも、
遥かに良い会社になっているだろうと思います。

余裕があれば、足せばいい。

ただ、アイデアとして5個も6個も出てきたのであれば、
実際に手を付けるもの以外を、
全てなかったことにしてしまうのはもったいない。

しかし手を付けられるのは限りがあるから、優先順位をつけて、
同時並行ではなくて、順番にしっかり完成させましょう、ということです。

ですから手を付けるもの以外は、そのままストックしておいて、
「一個」手を付けるものが完成したら、
その次につけ足せばいいのです。

その最優先の「一個」も、実際に手を付けてみないことには、
「完成」にいたるまでにどの程度時間を要するものか、わかりません。
だいたいは、イレギュラーなことが発生しますから、
当初の計画よりも時間も手間もかかります。

ですから最初は計画に入れずに、
一つ目の完成が具体的に見えてきたときに、二つ目を付け足して計画をはじめる、
というくらいでも十分です。
もし最初から計画に二つ目も入れている場合には、
一つ目の完成が後ろにずれこんだら、
同時に延期する勇気が必要かと思います。

「やる」ことが目標ではなく、
効果のあるものとして「完成させる」のが目標のはず。
ですからいわゆる「拙速」というのは避けましょう。

私も今期は、「間人地域の地域活性化事業」の一環として、
新たな貸別荘を設置運営する、ということだけが、大テーマです。
需要の濃い、夏休みまでには立ち上げたいので、
それまでにオープンというのは必須ですが、
オープンしてもその後、こだわりを積み重ねていく必要があるので、
次のやりたいことには手を付けません。

やりたいことは、めちゃたくさんあるんですけどね。
ここはじっと、我慢です。
そして、「すごいものができた!」と思ったら、次に進みます。

経営者はホント、我慢することが、たくさんあるのです。

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