経営指標は経営との対話の入口。

私はあまり、いわゆる「経営指標」を重要視していません。
銀行の評価に関係するので気にする程度です。
ですので顧問先とあまり経営指標の話しをすることはありません。

経営指標とは

経営指標とは、財務の数字から導かれる、
その会社の経営状況を数値化して表したものです。

安全性・収益性・成長性・生産性などを表す
いろんな指標があります。

最も皆さんの身近なところでは、
「自己資本比率」などがその代表的なものでしょう。
自己資本比率とは、総資産(=総調達)のうちにしめる、
自己資本(=資本金等+利益積立金)の割合をいいます。
自己資本は本当はもう少し複雑ですが、
小零細企業であれば、これくらいの理解で良いと思います。

あと労働分配率(限界利益のうちにしめる人件費の割合)などもメジャーですよね。

それ以外にも、本当に数多くあります。
そして金融機関がその会社の経営状態を財務の側面から判定するときには、
このような経営指標の数値をもとに行うわけです。
そのために、毎年決算が終わると
「決算書を見せてください」と言ってくるのです。

なぜ経営指標を重要視しないか

それではなぜ私がこの経営指標を重要視しないかというと、
それは次のような理由からです。

会社は経営指標だけでわからない

これら経営指標は、非常に客観的に
会社の状況を表してくれるものではありますが、
裏を返すと決算書の数値からわかる範囲でしか判定できませんので、
それだけで会社の実情を把握されていると考えると、
それはちょっと恐ろしいかなと思います。

その会社の経営状態って、
数値だけから判断できるものではありません。
むしろその会社の可能性を測るには、
経営者自身の能力・考え方であったり、
どんな人材がいるかであったり、
どんな技術力があるのかということの方が重要です。

・へぇ、で終わる。

経営指標は確かに会社の現実を映し出すものではありますが、
これはこれまでの結果としてどんな状態になっているか、
ということに過ぎません。
あくまですでに過ぎ去った過去のことなのです。

ですので細かく経営数値を出して経営者の人に見てもらっても、
「へぇ、そうなんだ」で終わってしまうのです。

経営者の皆さんの興味のあることは、
過去のことよりも未来のことであるはず。
今後会社はどんな方針でやっていくべきなのか。
どのようにして、売上・利益を伸ばしていくのか。
どんな問題・課題があって、それをいかに解決し、成長していくのか。
そんなことの方が経営者にとっては大切なことなのです。

会社のあり方は、それぞれ違う。

経営指標にはそれぞれ、
「これくらいの数値になったら健全」というものがあります。

例えば労働分配率。
適正な数値は50%程度と言われています。
しかしこれは、会社のあり方によって違いますよね。

私もよく「労働分配率って高い方がいいの?」と質問をいただいたりしますが、
確かに高い方が会社は儲かっているかもしれませんが、
見方によっては、利益のわりに給料を支払っていない、
搾取型の経営であるかもしれません。

「うちは社員さんの給料は高くして、それ以外の固定費は工夫してめちゃ低くするよ」
という会社は、労働分配率が60%でも健全な利益が出ていたりします。
そして社員さんの士気が高かったりします。

ですので一概に数値だけで会社の実情を測ることはできないのです。
その会社にとって相応しい状態は、他社との比較ではなく、
自身なりに目標とするところとの比較であるべきと考えます。

あくまで経営を考える入口

それでも私がたまに経営指標を口にするときは、
それを経営を考える切り口にしたいときです。

さきほど「へぇ」で終わってしまう、ということをお話ししましたが、
それは、会社としての目標感を持とうとしないから。

例えば自己資本比率。
これは高ければ高いほど、経営の安定感があることは間違いありません。
もちろん総資産の金額が少なければどれだけ自己資本比率が高くても、
ちょっとの赤字で一瞬にして吹き飛びますが。
それでも、低いよりは高い方がいいに決まっています。

その数値が例えば今20%だとして、
「めちゃ優良な会社の自己資本比率ってどれくらい?」
と尋ねられると、
「50%です」とだいたいいつも回答しています。

そして問題はここからです。
じゃあこの会社が5年以内に自己資本比率50%に高めようとするならば、
どれだけの利益が必要で、
そのためにはどんな事業を行うことでどんな売上をあげて、
それをどんな資金戦略でやっていく必要があるのか。

このように、先の計画・目標という話しとセットにしたときはじめて、
経営指標はその役目を果たしたと言えます。

しかしその役目はほんの入り口としての役割だけです。
実際に欲しいのは50%、という具体的数値ではなくて、
「具体的な目標を定めて、そのためにどんな経営を行うのか」という具体策の話しができる、
という部分なわけですから。

先ほどもお話ししました通り、
世の中には数多くの経営指標が存在し、
それぞれに「適正」とされるおよその数値が定められています。

しかしこれも先ほどお話しした通り、
その適正数値はその会社のあり方によってそれぞれ異なります。

ですからあまり経営指標に振り回される必要はありません。
というか、振り回されてはいけません。

大切なのは、その経営指標を、
自己の経営と向き合い、対話するきっかけにすること。
自分は自社をこんな会社にするんだ!という強い意志をもって、
そこに向かって邁進していただけたらと思います。

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