経営者は自分が「特殊な人種」と理解しておくべき。

よく、「経営者は孤独だ」とか
「うちの社員は主体性がない」とか
「うちの社員は工夫がたりない」とかいう話しを聞きます。
もちろん経営者自身から。

なぜこのようなことになるのでしょう?

特殊な人種、というか、これはヒトではない。

前提からして間違っている。

これらの「経営者のグチ」ともいうべき事態がなぜ生じるかというと
結論から言うと、
そもそも、その立脚点がまず間違っているということです。
最初からその前提が違うのです。

私含めて皆さんは経営者です。
そして経営者というのは誰でもなれるかというと、
決してそういうものではありません(法律的には誰でも明日からなれますが)。

事業承継や会社の事情でやむを得ずそのようなことになる場合をのぞき、
経営者は基本的には自ら経営者になろうとして、その道を選択しています。
経営者にとってこれはある意味「当たり前」の選択なので、なかなか理解できないのですが、
公務員やサラリーマンをされている方の大多数は、
普通なかなかそんな踏ん切りはつきません。

誤解なきようにお伝えしておかねばならないことは、
これは公務員やサラリーマンが劣ってるとか
そういった意味ではありません。

そもそもの「人種の違い」です。

自分の道は自分で切り開くのが自然であると考えていたり、
日頃から工夫して何か変化を起こすことが好きであったり、
組織の一部として動くよりも、自ら主体的に動くことを好む、
そんな性格だからこそ、
経営者は経営者の道を選んでいるのです。

私だってそうです。
サラリーマンになれと言われれば順応はできますが、
やはり一生息苦しい思いをしてしまうだろうと思います。

ですから、全員がそうというわけではありませんが、
社員さんはそもそも、自らわざわざ工夫するものではないし、
いつも主体性をもって取り組むわけではありませんし、
だからこそ、経営者の考えていることはわかりません。

こんなある意味「自然な状態」とも言えるものに対して、
文句を言ったって仕方ないですよね。

これはそんな人たちを非難して、諦めているということではありません。
これを前提として考えると、
「じゃあ主体性を持ってもらうために、どんな取り組みをしないといけないのか」
という発想になることができる、という意味です。

特殊なのは経営者側。
どうすれば社員さんは主体性を持ってくれるのか、
どうすれば自ら工夫してくれるのか。
そんな環境を創っていくことが、経営者の仕事です。

経営者は(だいたい)優秀である

そして「うちの社員は能力が低い」といって、
文句ばかり言っている人もいます。
「こんなこと言っちゃダメなんだけど」とか前置きしながら、
結局文句ばかり言ってるのです(笑)。

これも前提が間違っています。
それは、経営者は、だいたいの場合、
普通の人よりも優秀、ということです。
自分のことを「優秀」という人はあまりいないでしょうが、
自分の力でやっていける、と思っているからこそ、独立し、
経営者となったんですよね。

その時点で、充分に優秀な人です。

そんな立場の人から「能力が低い」とか言われたら、
つらいですよね。
そう。経営者は多くの場合、
社員さんよりも優秀であって当然なのです。

だから、自分のできることは
当然のように社員さんもできるかと思ったら大間違いです。

これも「社員さんは能力が低い」と決めつけてるわけではありません。
経営者のできることを当然のようにできる社員さんは少ないんだよ、
という前提で社員さんと接するべき、ということです。

そう考えると、「なんでうちの社員は能力が低いんだろう?」
ということにはなりません。

どうすれば、それぞれの能力を発揮してくれるのか、
その環境を創っていくのも経営者の仕事です。

「うちの社員はバカばかり」
といっている経営者は、
「自分には社員の能力を活かす能力がない」と公言しているのと同じで、
いわば、天に向かってツバ吐いてるみたいなものです。

経営者とは立場が違う

人間、その立場に立たなければ、
その人と同じ意識になることは、
なかなか難しいものです。

例えば実際に子供を持つ親になってみないと、
子供を早くに失くしてしまった親の気持ちはわからないだろうと思います。
もっというと、自分自身が完全にその立場にならないと、
その悲しみを完全に共有することはできません。

「いや、私にはそれがわかるよ」と言われても、
そんなつもりになっているだけで、
それはとてもおこがましい発言のように思います。

ですから社員さんに
「経営者の立場で」とか
「経営者と同じ意識で」とか言ったところで、
それは最初からムリな話しなのです。

最初から経営者と社員さんとの間には、
なかなかに埋めがたい溝があるということです。

そしてこれを前提として考える、ということも
「埋めがたい溝があるならしょうがない」と諦めるためではなく、
溝があるなら、その溝をどうしたら少しでも埋めることができるのか、
という発想を持つためです。

「なぜ経営者の気持ちがわからないのか」と文句を言うのではなく、
「わからなくて当然だな、だったらその上でどうしたらいいのか考えよう」
ということですね。

私も含め、人間つい自分主体で考えてしまいがちです。
しかし、経営者という人種が、そもそも特殊なのだなということを
まず認識することが大切です。
そこを立脚点とすることで初めて、
冒頭のような考え方から脱却できるのだろうと思うのです。

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