移動年計グラフ。

事業における様々な数値を分析する手法はたくさんありますが、
その中でも「移動年計グラフ」はとても重宝します。
ご存じの方も多いとは思いますが、
今日はその作り方と使い方について

実際に作成した、移動年計グラフ

移動年計グラフとは

移動年計グラフとは、
ある月を基準にして以前1年間の数値を合計(年計)し、
その合計する1年間のとり方を1ヶ月ずつずらしていって、
その合計数値をグラフにしたものです。

こんな説明では何がなんだかわからないですねw。

例えば、売上の年計グラフをつくるとして、
2022年1月の売上の年計数値は、その月を含む1年間、
つまり、2021年2月~2022年1月の合計額とします。
そして2022年2月の売上の年計数値は、同様にその月を含む1年間、
つまり2021年3月~2022年2月までの合計額とします。
そしてそれ以降も同じように、
3月年計売上:2021年4月~2022年3月
4月年計売上:2021年5月~2022年4月
・・・
というように、年間売上を合計する月を1ヶ月ずつずらしていくのです。
そうして計算されたそれぞれの合計額(年計)を縦軸、
月を横軸として、グラフを作成します。
これが移動年計グラフです。

移動年計グラフの読み方

このように集計すると、
例えば3月の年計と4月の年計の差は
何を表す数字になるのでしょう?
3月の年計は、前年の4月~今年の3月までの合計
4月の年計は、前年の5月~今年の4月までの合計
です。
集計している数値は、前年の5月から今年の3月までは
この両方に含まれていますよね。
ですから3月の年計から前年4月分を引いて、今年の4月分を足したら、
それが4月の年計になるのです。
ということは、3月年計と4月年計の差は、何の金額かというと、
前年4月と今年4月の金額の差ということになるのです。

ですから、年計の金額をプロットして折れ線グラフを作っていくと、
前月よりもグラフが上に向いているときは、
前年同月よりも金額が上昇していることを意味し、
逆に前月よりもグラフが下に向いているときは、
前年同月よりも金額が下落していることを意味します。

通常売上のグラフを作成するときには、
その月の売上金額でプロットして
折れ線グラフまたは棒グラフで作成されるかと思います。
しかしどうしてもある程度の季節変動などが出てきますので、
この作成の仕方では全体として売上の傾向がどうなっているのか、
ということがわかりにくいのです。

しかし年計グラフは、
その月を基準として、前1年間の合計額で計算しますから、
そのプロットする金額には常に1年間のすべての月が含まれます。
結果として季節変動を完全に排除したグラフが作成できるのです。
さらに対前年でどうであったか、ということでグラフの向きが変わりますから
売上の趨勢・増減の流れを一目でつかむことができるのです。

どうやって使うか。

移動年計グラフは、会社全体の売上、といったような
全体の数値で作成するよりも、
もう少し絞り込んだものの数値で使用すると、活きてきます。

例えば店舗ごとの売上、商品ごとの売上、取引先ごとの売上など。

季節変動のない売上であれば、
売上が上昇傾向か下降傾向か、前月との比較でわかるので、
なんとなく感覚でつかむことができます。

しかし季節変動がある場合は、
前月との対比でその趨勢をはかることができませんから、
感覚と実体にズレが生じることが多いのです。

実際に顧問先に作成いただいたときに、経営者さんから、
「それほど期待していない商品が、じわじわ伸びていることに気が付いた」
とか
「この取引先は順調だと思っていたけど、実はゆっくり落ち込んでいた」
ということを目の当たりにして驚かれてました。

ただ、年計グラフはその性質上、
1年分のグラフを作成するのに2年分の情報を必要とし、
2年分のグラフのためには3年分の情報が必要となります。
つまり、グラフを作成するための情報が多く必要であるため、
作成がめんどくさいのです。

一度出来上がってしまったら、更新していくだけですのでそれほど手間ではないのですが。

ですから、例えば取引先で年計グラフを作成するときに、
自社のすべての取引先のグラフを作成するのは、
あまりに負荷がかかり過ぎで、非現実的です。

会社運営上重要な取引先の趨勢は知りたいところですが、
正直売上にほとんど貢献していない取引先の情報は不要ですよね。

それではその線をだいたいどの辺りで引くのがいいのかというと、
「会社の売り上げ全体の80%を占めるところまで」
が一つの目安です。
ご存じの方も多いと思いますが、パレートの法則といって、
だいたい上位2割程度の取引先でその会社の8割くらいの売上をつくっているのが一般的です。
これは取り扱い商品の多い事業であれば、商品についても当てはまります。

必ずしもパレートの法則が当てはまるわけではありませんが。
一つの参考にはなります。
取引先で作成するなら、全取引先の上位2割ほどだけ、
移動年計グラフを作成して、その動向を追いかければよいのです。
あとは、その「2割」には入ってこなかったけれども、
今後取引先が増大していくであろう取引先や、増大させたい取引先、
その他何らかの理由で注目をしておかなければいけない取引先は、
別途ピックアップするようにしましょう。

人間の勘は大切にしなければいけませんが、
勘だけで経営判断をすると
判断を間違えてしまうことになります。

情報は出来る限り数値で把握し、
それに基づいてロジカルな判断をくだしていきましょう。

数字は無機質のようでいて、その向こうには現実が広がっています。
そして絶対にウソをつくことのないものなのです。

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