経営を俯瞰する④

経営を俯瞰する、の最終章です。
これまで見ていました通り、経営者は売り上げを伸ばす、とか
それだけ考えていればよいということではありません。
そんな意味で経営者は日々、自信の会社のことを考えるだけで精一杯です。
だからこそよく見受けられることなのですが、経営者が自分のライフプランや会社のリスクマネジメントを放置してしまっていることが多いのです。

これもリスクへの備えの一種です。

これまでの「経営を俯瞰する」記事
 経営を俯瞰する①
 経営を俯瞰する②
 経営を俯瞰する③

『経営を俯瞰する』、最後の2項目は、⑤と⑥に該当する「ライフプラン」と「リスクマネジメント」です。会社のリスクマネジメントはどのように考えるのでしょう?また経営者にとってのライフプランと経営全体とはどうつながっているのでしょう?

リスクマネジメントとクライシスマネジメント

一般的に日本語で「危機管理」と呼びます。
これは内閣安全保障室の初代室長をつとめた佐々淳行氏が生み出した言葉です。
しかし「危機管理」という言葉の中には
「リスクマネジメント」と「クライシスマネジメント」の
2種が含まれます(佐々氏が取り扱ったのは後者)。
リスクとクライシス、共に「危機」と日本語では訳されますが、
その意味するところは少し違います。

リスクとは「もしこんなことがあったら、こんな大変なことになってしまうよね」
というレベルの危機です。
日々生じるであろう問題をその発生前に事前につぶしたり、
問題が生じたとしてもその被害を最小限にとどめる対策をうっておく、
これがリスクマネジメントです。

そして「クライシス」とはなにか。
「これが発生したら、破滅してしまう」というレベルのものです。
国家に例えると、大災害とか他国からの攻撃とか、
いわゆる有事レベル。
経営にあてはめても、こういったことは十分に考えられます。
「これが発生したら、会社はふっとぶぞ」
こういったこと、考えられないでしょうか?
可能性が低いとしてもその影響が甚大であるからこそ、
目を背けず備えをしておかなければならないポイントだともいえるのです。

しかし、結構な方がここから目を逸らしてますよね。
一度向き合ってみて、その時に何ができるのか、考えてみてください。
ここ数年でいっきに知れ渡って導入する企業も増えている
「BCP」の必要性はここにあります。

まずは、どのようなリスクやクライシスが
会社として考えられるのかをリストアップします。
そのうえで、そのそれぞれについて、
具体的にどう備えるのかを考え、
そのための備えを行います。

これまでのBCPに災害は想定されていましたが、
ウィルス感染の蔓延は想定されてませんでした。
想定されていなかったため備えができておらず、
結果として全世界が振り回されてしまったわけですね。
このことからも、
「想定と備え」というのがとても大切だということがわかります。

経営計画とライフプランニングは車の両輪

経営者は自社の経営計画は
しっかり考えていらっしゃることだろうと思います
(これを考えていないのであれば、それはそれで大きな問題です)。
しかし自身と家族のライフプランは
ちゃんとできてますでしょうか?

会社のことに一生懸命すぎて、
家庭のことがおざなりになっていないでしょうか?
家庭のことや家族のことをほったらかしにしてしまうことで、
家庭がうまくいっていないという経営者、
とてもよくみかけます。

しかし本来家庭は、
自分が安心して根を下ろせる
安らぎの場であるはずです。
家庭がうまくいっていないのに、そんな不安定な状態では
経営はうまくいきません。
特に小零細企業においては、経営者の状況が会社に与える影響が甚大ですから、
その傾向が顕著であると思います。

人間、そんなによくできたものではないですから、
仕事のことは家庭に持ち込んでしまいますし、
家庭の不和や不安は仕事に悪影響を及ぼします。
ですから、会社のことばかりでなく、
「家庭の経営」にも光をあてましょう。
会社の経営計画を立てているんでしたら、
同様に人生計画もたてましょう。
経営計画の必要性がよくわかってらっしゃる方は
充分にご理解いただけることだろうと思います。

社員さんにもライフプランを

自分自身のライフプランを描く必要性がわかれば、
社員さんにもそれが必要であることが
容易に想像つくかと思います。

経営者も社員も、
一生活者であることには変わりありません。
そもそも社員さんにライフプランを描けるようなだけの給与の支払いができているのか、
ということがもちろん大前提です。
その前提のもとですが、社員さんが安心して暮らしていけるようにするためには、
社員さん一人一人が自身の将来に目を向け、
「これなら安心だ」というイメージを持っていただくことが大切です。
そうして社員さんが自身の生活への安心感を持つことができれば、
安心して会社の仕事に取り組んでもらえると思います。

ですから社員さんへのライフプラン教育も
積極的に行っていただくことをオススメします。
社員さんそれぞれが持っているライフプランに介入することは越権行為ですが、
それを考える機会をもっていただくよう促していくことは
双方にとってメリットのあることだと思うのです。
ぜひ、会社の福利厚生の一環として取り入れてみてください。
案外みんな、漠然とした不安をかかえてますから。
そしてそれを取り除いたり、その解決の道筋が見えたりすることは、
その社員さんの人生にとって、とても大きな事だと思うのです。

ここまで飛び飛びではありますが、
4回にわたって、『経営を俯瞰する』、というテーマでブログを書いてまいりました。
このそれぞれの大分類の中にさらに奥深く考えていただくテーマがあり、
そのテーマ同士、それぞれが綿密につながって経営の全体はできあがっています。

部分最適ではなく、全体最適をめざす。
これが私の経営者の方に訴えかけたい主要テーマです。
ぜひ、会社の全体最適のために、その全体像の中でどの部分にどのように取り組むのか。
そんな考え方ができるきっかけてしていただけたらと、思います。

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