経営者の危機管理~最悪からの逆算~について

事業経営を行っていくうえで、
大変なことが起こったときにどう対応するのか、
ある程度事前に考えておくことはとても大切です。
ということで、今日は事業における危機管理について。

東大寺にも、危険がいっぱいです。

事業経営には、危険がいっぱい。

事業を行っていく上で、
「こんなこと起こってほしくないな」
ということは、
小さいものから大きいものまで、
とてもたくさんあります。

例えば、
お客さんからのクレーム
商品の欠品
製造機械の故障
大口顧客の離反
社員さんの急な退職
経営者の事故・死亡
地震・火災・水災
などなど。

およそ2年前からはじまったコロナウィルス蔓延以降、強く認識されるようになりましたが、
パンデミックも会社を取り巻く一つの「危険」です。

小さなことも、会社の成長を阻害しますし、
そんな小さなことでも積み重なったら会社の存亡に影響するかもしれません。
そして大きな危険が発生した場合には、
その瞬間企業活動が停止してしまうかもしれません。

このように経営者の周りは、
ぐるりと危険で取り囲まれているのです。
しかしそれが想定される以上、
これを放置しておくことは絶対によくないことですよね。

リスクマネジメントとクライシスマネジメント

このように、組織や個人を取り巻く危険に備えることを
「危機管理」
と呼びます。
この日本語は昔からあった言葉ではなく、佐々淳行さんという方が作られた
比較的新しい言葉らしいです。

この佐々淳行氏、連合赤軍あさま山荘事件等を指揮した元警察官僚でもあり、
初代内閣安全保障室長をつとめられた方。
もう数年前にお亡くなりになられましたが、私は結構この方の考え方が好きで、
何冊か著書を読んだりもしていました。
「危機管理」と言えば、この人。
ミスター危機管理です。

そしてその「危機管理」には英語にしたときに、大きく分けて二つの種類があります。
一つは、リスクマネジメント(risk management)
もう一つは、クライシスマネジメント(crisis management)です。

危機管理の観点からこの両者は全然別物ですので、
それぞれ分けて考えないといけません。
リスクマネジメントは、
危険が発生しないようにいかに予防するのか、というもの。
そしてクライシスマネジメントは、
危険が実際に発生したときに、それにどう対処するのか、ということです。

クレームが起きないように、どうするのか。
欠品が起こらないように、どうするのか。
社内の事故がおこらないように、どうするのか。
これらすべて、「リスクマネジメント」です。

しかし、どんな危険もどうしても発生する可能性はあります。
とくに自社だけの問題でなく、そこに相手方や外部環境が関わってくる場合。
例えばクレームは相手方のあることですから、
もちろんゼロを目指すとしても現実発生する可能性はあるわけです。
災害にいたっては、もうこちらではどうしようもありません。

ただ、「起こってしまうものはしょうがないよね」では
実際に起こったときにえらいことになってしまうわけです。
だから備えておく必要があります。

比較的近年メジャーになりつつある「BCP(事業継続計画)」などは
まさにこれにあたります。
「中小企業BCP策定運用指針」なるものも中小企業庁から出ていますから、
ぜひ一度どんなものか調べてみていただけたらと思います。

悲観的に準備し、楽観的に行動する

それではリスクマネジメントにしても、クライシスマネジメントにしても、
それをどのように考えるかというところですが、
これについて先にご紹介した佐々淳行氏が金言を残しています。
これが
「悲観的に準備し、楽観的に行動する」
ということです。

人それぞれ、これからどうなっていくだろうかということを考えるときに、
ものすごく悲観的に考えるクセのある人と、
楽観的に考えるクセがある人がいます。
私はどちらかというと、楽観的に考えてしまう傾向があります。

しかし、こと経営や事業の現場では、
場合によっては経営の存亡がかかっていますから
楽観的ではいかんのです。

自社をとりまく「危機」にはどのようなものがあるのか、
一度考えられるすべてを書き出してみてください。
そしてそれぞれについて、
・その予防のためにどのような準備をするのか。
・それが起こってしまったときに備えてどのような準備をするのか。
これらを事前に考えてその準備を実際に実行に移していくことが大切です。
もちろん全て同時に手を付けることは不可能ですから、
優先順位をつけて実行していくことになるでしょう。

しかしその「危険の想定」と「予防・対策準備」を考える局面でも
楽観思考ではいけません。
最悪の場面とはどういった状況なのか。
その状況を前提として、
そこから逆算してどのような対策措置を講じるのかを考えておきましょう。

誰しも最悪のことなど考えたくもありません。
こんなことばっかり考えていると気が滅入ってしまいますので。
しかしそこから逃避して、
「まぁきっとこれくらいのことだろうし、この程度の準備でいいだろう」
という思考をもつことは危険です。
これは危険に備えているようで備えていないのとほぼ同じことです。

最悪の事態を想定し、
そんなことが起こらないために、どのようなことができるのか、
そして実際その最悪の事態が発生した場合にはどう対処すべきなのか、
ということを考えておくことが大切なのです。

例えば新しい事業を始めようとするときに、
その事業がうまくいかなかったら、
ということを考えてますでしょうか?
具体的に撤退の基準までちゃんと準備している方は
実はそんなにおられないんじゃないかと思います。

「これから始めようというときに、最初からうまくいかないことを考えるヤツがいるか!」
という昭和な発想はやめましょう。
その意気や良し、ですが、これが明確でないと赤字を垂れ流し続けて、
万一のときに取り返しのつかないこととなってしまいます。

できるだけ最悪のところからスタートして準備をし、
いざ本当に最悪の事態になってしまったら、なってしまったことはしょうがないので、
楽観的に「なんとかなるさ」と行動する。
これが佐々氏のいう、
「悲観的に準備し、楽観的に行動する」
ということです。

「楽観的に行動する」というのは、
行動まで悲観的になると、判断が鈍って一歩が踏み出せず、
対応が後手後手に回ってしまうからということだそうです。

私も実際最悪のことが生じたときに、
楽観的に行動することができるかどうかはわかりません。
しかしこの言葉を知っておくだけで、
ふと我に返ることができるかもしれません。

「楽観的に準備し、悲観的に行動する」というのが最悪です。
経営者という責任ある立場にいるのであれば、
この佐々淳行氏の言葉を胸に刻んでおく必要があるのだろうと思います。

20年ほど前の本ですが、今でも十分に通用する名著だと思いますので、
佐々淳行氏の著書を一冊、推薦いたします。
興味があるかたは、ぜひ。

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