10年後は誰にもわからない。

先日、ある経営者の会合で、
10年前の自分自身、そして10年前に今の状況を想像していたか?
という議論をしました。
多くの人が、思ってもいない状態になっていました。

それでも、10年後は思い描く必要があるのでしょうか?

10年後はそんな意味で誰にもわかりません。
だからといって10年後をイメージせずに
経営・運営するのはよくないと思います。

私の10年前。

今から10年前といえば、2012年。
ちょうど娘が生まれたあたりです。

今と事務所の場所も違いますし、
当時の私は、「将来、30名規模の事務所にする」
という野心に燃えていました。

顧客を増やすため、
人脈を増やすため、
自分の学びを深めるため、
そして自己満足のため、
相当忙しく、あちこちを飛び回っていた頃かと思います。

しかしその後、いろいろあって、
今は事務所を大きくする意志はみじんもありません。

顧客をこれ以上増やすことは考えていませんし、
無用に人脈を増やすこともありません。
学びを深めるための場所と手段も変わりました。
自己満足を得るための方向性も大きく変わりました。

そして、「小さな」会計事務所として、
その理想的な一つの形を作り上げたいなと思っています。

もちろん理想の状態など無数にありますから、
あくまでそのうちの一つ。
モデルケースになりうる、一つの形です。

そんな意味で、10年前に今の自社の姿をイメージできたかというと、
全くイメージはできませんでした。

その間に大きく、自分の中での人生観も変わりましたし、
自分及び家族の幸せイメージも変わりました。

それにより、目指す規模感と事業領域などは大きく変わりましたが
独立当初から、社員さん(パートさん含む)にどんな働き方をして欲しいか、とか
自社の仕事を通して社会に提供したい根本的なものは、
ほぼ変わっていません。

むしろ、かつてより自分と仕事に余裕が生まれた分、
まだまだ不完全ながらも、
それがある程度実現できている、できつつあると
思っています。

10年後はわからない。

10年後の自分自身のイメージは、
10年前にイメージしたものと大きく異なるものでしたが、
10年後の社会も、当時イメージしていたものとは異なります。

当然のことながら、コロナウィルスが蔓延して社会経済がマヒすることなど、
その可能性はもちろん考えていましたが、
実際に起こるとは思ってもいませんでした。

確かにそれはこの10年の間にたまたま起こったことなのかもしれません。

しかしこの20年を振り返ってみれば、
リーマンショックもありましたし、
東北の大震災もありましたし、
直近のコロナウィルスもありました。

ですから10年あればその間には、
経済や自社経営に大打撃を与えるような大事件は
当たり前のように発生するということです。

そしてそれが何なのかは全くわかりません。
そんな意味では、10年後がどんな姿になっているか、
想像することは不可能です。

かのピーター・ドラッカーも、
「未来は予測できない」
と断言しています。
だからこそ、「現在から予測できる未来」を大切にしろと言っています。

その代表的なものは人口でしょう。
しかし人口も、現在出生しているところまでは確定ですが、
それ以降の予測については、世界各国とも、
全然当たっていないそうです。

ですから、仮に「自分は10年後を予測できたぞ!」
という状態であったとしても、
それは、たまたま当たっただけ、
という風に理解しておいた方が良いのかなと思います。

「予測できない」と想定しておけば、
不測の事態に対して柔軟な対応ができるはずですから。

わからないが、想定し、思い描く。

それでは、10年後の未来はわからないから、
その想定や10年ビジョンや10年計画を立てるのは必要がないかというと、
それはまた違うんじゃないかと、私は考えます。

確かに人によっては意味がないという人もいますし、
「今を生きろ!」という人もいます(これは視点が少し違いますが)。

しかし、たとえ10年20年先がわからないとしても、
ビジョンや計画を明らかにしておくことは
必要であると私は思っています。

それは、
「今から1年後に想定する10年後は、今想定する10年後とそんなに変わらない」
から。

下図に沿って、どういうことか説明します。

まず10年後にこうなりたいというイメージ(10年後ビジョン:A)を思い描き、
そこから逆算して、1年後の計画・目標を設定します(B)。

そして実際に経営を行ったとき、
1年後に計画通りにはなっていないでしょうが、
目標に向けて進んでいるため、
その実際の1年後はBとはズレたところに到達します(C)。

そして改めて10年後ビジョンを作り直すと、
1年前とは少し世の中も変化していますし、
自分自身の考え方も少し変わっているかもしれませんから、
その10年後ビジョンは、1年前に思い描いたものと、少しだけズレたところに動くでしょう(D)。

これを毎年行っていくと、
確かに環境変化と内面変化によって、10年後ビジョンはズレていきますが、
1年1年着実に、自分の思い描く10年後に近づいて行きます。

当初に、思い描いた10年後ビジョンから実際の10年後は、
きっと大きくズレているでしょうが、
確実に「今」考える自分のありたい10年後に、近づいているのです。

ビジョンを描かずに第一歩を踏み出すと、
それは本来行き着きたいと考えている方向とは
全然違う方向(Z)へ歩んでしまうかもしれないのです。

ですから、10年ビジョンを謳うのであれば、
それを毎年再考して、微調整を繰り返しましょう。

たまに「10年ビジョン」を5年ごとや、
それこそ10年ごとに作成している組織をみかけますが、
当初の10年ビジョンを10年間変更することなく
頑なにそれを守っていると、
10年後にたどり着いた場所は、
ずいぶんおかしなことになっている可能性があるのです。

こんな世の中で、10年後、
自分は自社は、どんな姿になりたいのか。

ぜひそれをイメージしながら歩みを進めていただけたらと思います。

しかしコロナウィルスのような大変化が生じたときには、
柔軟な思考でその方向性を大きく変える勇気を、
同時に持っておきたいものです。

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