なぜ経営理念が必要なのか

多くの会社が「経営理念」を有しています。
私の会社(未来創造マネジメント株式会社)にも、理念はあります。

かつては「理念でメシが食えるか」などと言われることがあり、
その存在自体重要視されるものではありませんでした。

しかし現在では経営理念の存在が、小さい会社にとっても
必要なものであるという認識がされてきたように思います。

それではなぜ、経営理念は必要なのでしょう?
その存在意義について考えてみました。

社会に届く言葉

会社とは、この社会において、
事業を行うための器のようなものです。
そしてその存続のためには、
利益をださなければなりません。

それではその利益の源泉はなんでしょう?

これはとりもなおさず、お客様です。
そんな意味で会社というものは、
お客様の存在なくして、存在することができないものなのです。

ドラッカーが事業の目的を「顧客の創造」と定義したのは、
こういうことです。

それでは、その「顧客」って誰なのでしょう?

もちろんそれぞれの会社ごとに、自社にとっての「顧客」とは
どういったものを指すのか定義が必要です。
しかしその顧客は広く一般的な生活者の中に存在するということは、
どんな事業にとっても変わりのない事実。
誰だって巡り巡って、自社の顧客にになる可能性があるのです。

つまり、顧客は社会そのものであるとも言えるのです。

それでは、ずっと利益が出ていない会社というのはどういったことかというと、
その会社は顧客に求められていない、つまり、
社会に必要とされていないということを意味します。

社会からその存在を否定されているのです。

逆に言うと、会社は、
常に社会から必要とされる存在である必要があるということなのです。

その会社が何のために事業を行っているか、という問いに対して、
「自分たちの利益のためにやっている」
と言って、
そんなあなたのために儲けさせてくれる人はいません。

やはり
「こんな思いで、この会社を経営して、こんな価値を世の中に提供していきたいんだ!」
という強い思いがあってはじめてそこに共感がうまれ、
それがお客様や社会からの信用に繋がるのです。

これが社会に向けた「理念」の力。

『理念でメシが食えるか』
という問いかけに対する答えは、
『食えません』
で正解です。

しかし理念がなければ、社会がその存在を認めてくれないわけですから、
会社が永続していくことはできないのだと思うのです。

それではその理念をわざわざ成分化する必要はあるのでしょうか?
会社の存在自体が社会性のあるものであればよい訳ですから、
「自分の中に信念があればそれでいいじゃないか」
という風に考えてしまうかもしれません。

しかし言葉にされない理念は、誰にも伝わりません。

ですからやっぱり成文化し、カタチにすることではじめて
その会社の存在意義・存在価値というものは、
人々に伝えていくことができるのだろうと思うのです。

社内でのベクトルを合わせる。

組織の中で、それぞれの考えが別々の方向を向いており、
なかなかまとまりがない、というケースが
往々にしてあろうかと思います。

こんな場合でも社員の一人一人は、
多くの場合それぞれ良かれと思って行動しており、
「この経営者を陥れてやろう」とか
「この会社をダメにしてやろう」とか考えて
仕事をしている人はあまりいないかと思います。

それでも社員一人一人が一つの方向にまとまっていかないのは、
それぞれの考える「良い」という方向が、
それぞれ異なるからです。

「経営は物理だ」という言葉を聞いたことがあります。

みんなよかれと思って行動していても、
その方向があっちこっち違った方向を向いていると、
その力が合わさったとき、
その力は、あらぬ方向へ向かって進んで行ってしまうことになります。

しかし全員がほぼ同じ方向を向いて進み始めたとき、
その力の総和は、とんでもない力となって、強力な推進力を生み出すのです。

そしてその方向を合わせるものが、経営理念なのです。

この会社はなんのために存在するのか。
経営者は何のために経営しているのか
どんな会社を目指しているのか。

これらを共有することにより方向性が定まり、
「ああ、こっちの方向に向かうんだな」
と全員が理解できることにより、
その会社は全社的に一つの方向に向かって動き出すことができるのです。

経営理念を成文化し、
その言葉一つ一つを丁寧に定義づけしていくことで、
社員一人一人が、
自社においてどのような行動をとっていく必要があるのか、
ということを明確にすることができるのです。

自分が帰ってくる場所

「あの会社の経営はブレまくっている」
という言葉をたまに耳にすることがあります。

この「ブレる」ということはどういうことでしょう?
なぜ、経営はブレてしまうのでしょう?

その経営者に信念がないからでしょうか?

しかしよく話しを聞いてみると、
案外しっかりとした信念があったりします。

それでも経営がぶれてしまうのです。
なぜなんでしょう?

それはおそらく、
その信念(生きる姿勢)が明確なカタチとなっていないからです。

一つ一つの判断がその都度
その明確な信念に基づいて行われているとするならば、
経営判断がブレることはまずありません。

しかし通常人は、
その時の感情に支配され、
欲望に囚われたりもしますから、
ほっておくと気がついたらブレてしまうのです。

だから敢えてその信念(生きる姿勢や会社の存在理由)を明確にして、
そのうえで一つの判断を下すときに、
その信念のフィルターを通すようにするのです。

「これはどのように判断したら良いんだろう?」
「なんか最近判断基準がおかしいぞ」
と感じたときに帰ってくる場所。ホームポジション。
これをしっかりと定めておくのです。

そしてこのホームポジションこそが経営理念なのです。

「自分は一人でやっている会社だから理念はいらない」
と言う方がいらっしゃいます。

しかしこれまでの説明で、決してそんなことはない、ということに
気がついていただけるかと思います。

一人であっても、自社の考え方が社会に発信されることは大切ですし、
社員がいなくとも、外注先のようなビジネスパートナーには、
自社の方向性というものを理解していただく必要があるかと思います。
そして人間そんなに強いものではありませんから、
自分に言い聞かせるホームポジションとしての理念がやはり必要です。

これまで理念について深く考えたことのない方は、
一度じっくり、
「自分はどんな考え方に基づいて、何のためにこの仕事をしているのかなぁ」
ということを振り返っていただけたらと思います。
それが皆さん自身の経営理念につながっていくものですから。

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