弱みについて考えてみる。

SWOT分析の一部である、「弱み」。
「弱み」を分析することで得られるものとはなんでしょう?
今回はこの「弱み」という部分にフォーカスして考えてみました。

SWOTで軽視されがち

経営分析手法の中でも最も有名なものの一つ、SWOT分析。
その中で「弱み」というのは比較的軽視されがちです。

基本的に事業は、
その強みでもってしか成立・継続し得ません。
事業はどこまで行ってもやはり、競合との競争であり、
同じ土俵にあがっていないとしても、
消費者から競合との比較の対象とされる中で優位に立つことで
存続しうるからです。

ですから企業経営を考える時には「強み」にフォーカスをあてて、
その強みを最大限に活かす方法や、
強みをさらに強化する取り組みを
推進していくことが大切であって、
それは間違いないことです。

このような背景があるため、
弱みについて考えることは
強みについてよりも
圧倒的に力が注がれないものだろうと思います。

しかし弱みは弱みで、
充分に光を当てるべき存在です。

基本は捨てる

それではまず、分析の結果洗い出された弱みについて、
企業はどのように考えどのように行動するべきか、
ということです。

これは基本的に、
「捨てる」
ということになります。

「なんだ結局、光を当ててないんじゃん」
と思われるかもしれませんが、
決してそういうことではありません。

このブログでもいろんな角度から何度もお話ししている通り、
「何をするか」ということを決めるのと同じくらい、
「何をしないか」ということを決めるのは大切なことです。

小零細企業は、その経営資源も経営資産も非常に乏しいのが常。
ヒトもカネもモノ(設備)も情報も、
非常に限られています。

それらを最大限活かすためには、
あれこれといろいろ手を出している場合ではありません。
というか、手を出してはいけません。

本来力を注ぐべきところに、注ぎ切ることができませんから。

しかし「何をしないか」「何に手を付けてはいけないか」
ということが明確になっていなければ、
これに対して、うっかり手を付けてしまうのです。

そして人間、
自分の強みよりも弱みの方にどうしても目がいってしまいがち。
ですからその弱みをどうにかしたくて、
中途半端にその弱みの部分に着手してしまうのです。

だからこそ敢えて「弱み」に光を当てて、
「これは、やらない!」
ということを決めるのです。
これはめちゃ大切なことです。

やばいものはフォローする

SWOT分析はまず現状分析として、
強み・弱み・機会・脅威のそれぞれについて、
自社がどのような状況にあるのかを考え、
その中で出てきた事柄に対してどのような手を打つのかを考える手法です。

そしてその一歩進んだ使い方として、
クロスSWOT分析があります。
これは
横軸に強みと弱み、
縦軸に機会と脅威
を配置して、
そのそれぞれの交差点について、
具体的に何を行うのかを考えるものです。

例えば「強み」と「機会」の交差点は、
「現状の機会の中で強みを最大限活かす具体策は?」
となります。
こうしてクロスSWOTは、
4つの象限が生まれるマトリックスとなるのですが、
この4象限のうち、『「弱み」と「脅威」の交差点』が、
最も経営にとってキビシイものとなります。

自社にとって弱みであり、
同時に外部環境から考えて脅威でもある、ということですから。

ここから考えられるもののうち、
放置しておいても大きな問題にはならないだろうと思われるものは、
前述の通り「捨てる」ということになります。

しかし問題は、
放置しておくと事業や経営に多大な悪影響を与え、
大きなダメージを与えてしまうものです。

「弱み」に対する基本スタンスは「捨てる」だとしても、
このように非常にやばいものは、
事業の存亡に関わることですので、
必ずフォローする必要があります。

何が自社に最悪の事態を巻き起こすのか。
これはきちんと分析をして、
必要に応じて確実に手を打ちましょう。

他社の弱みで自分の強み

さてこれまでは自社の弱みについて考えてきましたが、
少し視点を変えて、
他社の弱みの視点に立ってみましょう。

世の中の一般的な感覚として、
他人の弱みにつけ込むということは、
卑怯なことであると捉えられがちです。
しかし前述の通り、企業経営は競争ですから、
特定の事業領域において、
他社よりも優位に立つ必要があります。

ですから、他社がどのような弱みを抱えているか、ということを考えることは
とても大切なことです。

そして他社の弱みが見えてきたときに、
これを積極的に攻める、ということではなく、
他社の弱みであって、自社の強みにあたる部分は何だろうか、
と考えるのです。

他社にとって弱みということは、
少なくとも他社はその領域において
事業を伸ばしてくる可能性は低いですし、
伸ばしてくるとしても、所詮弱みですから、
それほど伸びては来ません。

それが自社にとっての強みである場合には、
この領域は競合他社に対して
圧倒的に優位に立つことができる場所です。

これは相手をどうこうすることではなく、
自社の強みを伸ばす、ということですから、
卑怯なことでもなんでもありません。

強みについて、闇雲に手を付けるではなく、
競合が伸びてこない部分について伸ばす、
ということをぜひ考えてみましょう。

他社の弱みに取り組む

そして次に考えるべきことは、
他社にとっての弱みと考えられる部分について、
それが自社にとって明確な強みというわけではないけれども、
敢えてその部分を伸ばしにかかる、ということです。

競合にとっての弱みは、
先ほども述べたとおり所詮弱みですから、
ここの部分はそれほど伸びてきません。

翻って、自社で考えたときに、
確かに現状の自社にとっては
強みでもなんでもないことであっても、
そこに手を付けることが、それほど苦痛でもなければ
無理なことでもないし、違和感もないということであれば、
そこは積極的に伸ばしていくべきポイントかもしれない
ということです。

自社にとってもゼロに近い状態からのスタートですから
少し時間のかかることかもしれませんが、
それを地道に着実に伸ばし続けることで、
それがいつか、
自社にとっての強みに育つ可能性があるのです。

他社にとっては弱みなわけですから、
着手し続けることで、
確実に他社との差を広げていくことができます。

前項含めてこの「他社の弱みを考える」というのは、
SWOT分析ではなく、3C分析の一部ですが、
「弱みに光を当てる」ということから考えられる、
非常に有益な戦略なのです。

どんな会社も、長期間継続していくためには、
環境の変化に応じて自らの事業領域を変化させていく必要があります。
そのときにはぜひ、自社の強みを考えるとともに、
他社の弱みについて考えてみることをオススメします。

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