会社の収益性向上のためには、
「一人一時間当たり限界利益」を把握することがとても大切です。
なぜこんなに残業が多い?
たまにこんな質問を経営者の方から投げかけられます。
「なぜうちの社員は、こんなに残業が多いのでしょう?」
答えは、
「その情報だけではわかりません」
です。
残業時間が多くともそれで会社がめちゃ儲かっているということであれば、
それは社員さんが働くことで会社に利益を出してくれているわけですから、
それを改善するには、人を雇用して育成することが
次の成長につながるのだろうと思います。
しかし、こういった質問を投げかけてくる会社は、
だいたい儲かっていません。
「働けど、働けど・・」という状態に陥っていますので、
早急な改善が必要となります。
そして、何かを改善するためには、
まず現状分析が大切になります。
現状が正しく把握できていない「感覚」の状態で改善に手を打とうとすると、
その方向性を大きく間違ってしまう可能性があります。
勘も大事ですが、感覚だけというのは危険です。
だから最初にやるべきことは、
「どのお客さん」の「どの商品」の「どの工程」に
どれだけの時間がかかっているんだろう
ということを把握することです。
(この区分は、業態によって変わります)
そのためにはデータを集める必要があります。
これは会社の収益性を高めるために、とても大切な業務です。
2か月~3か月ほどデータを収集すると、
何がそんなに時間を要しているのかが一目でわかります。
それがわかれば、それをいかに短縮するか実際に行動してみて、
その後もデータ収集を継続すれば、その行動が
どの程度の成果をあげているのかもわかります。
ですからまず入口は、
「どんな仕事にどれだけの時間を要しているか」の測定とデータ収集。
これに尽きます。
粗利率が高ければそれでいいのか
よく会社の利益を高めるためにはどうすれば、
という議論の中で
「粗利益率を高める」
というものが出てきます。
これは半分合っていて、実は半分間違っています。
ここには「時間」の要素が入っていないからです。
1日の時間と人の労働時間が無限であれば、
この理屈は成り立ちます。
しかし、1日は24時間ですし、
人一人の労働時間は8時間です。
この決まった時間に、どれだけの粗利益を稼ぐのか、
が大切といえます。
例えば、同じ売上100万円の商品があったとします。このうち
A商品は粗利率60%で60万円の粗利益、
B商品は粗利率40%で40万円の粗利益とします。
これだけの情報だと、A商品の方が貢献していると判断してしまいますが、
ここに時間の要素を加えます。
A商品は製造工程で4時間かかり、
B商品は2時間かかるものとします。
するとA商品は1時間あたり15万円、
B商品は1時間当たり20万円の粗利益を出していることになります。
時間が有限であることを考えると、
B商品の方が貢献していることになります。
この考え方は製造だけでなく、小売りでも言えます。
例えばネットショップで最も時間を要するのは「発送作業」だろうと思います。
1発送当たりの粗利益額が大きかろうが小さかろうが、
梱包発送作業にかかる時間はそうそう変わらないでしょうから、
一個あたりの粗利益額の大きい商品がたくさん売れる方が、
圧倒的に利益効率は高くなります。
会社の成長と社員さんの給与に直結する。
以上から考えられることは、
会社の付加価値を最大化するために、
管理的な意味合いから考えられる最も有効な手段は、
「いかに一人一時間当たり粗利益(正確には限界利益)をいかに高めるかを追求する」、
ということです。
これをいかに高めるか、というときに考えられる手段が、
「いかにその商品の粗利益をあげるのか」、ということと、
「いかに時間を短縮するか」、
ということになります。
ここで初めて「粗利率」という要素が出てくるのです。
仕事に要する時間を減らしつつ、粗利率を高めることができれば、
時間当たりの利益額は時間と金額の両面から向上させることができます。
そして時間当たり粗利益が増えると、
それは社員さんの給与の向上につながります。
社員一人一時間当たりの粗利益が2000円だとすると、
仮に人件費以外の固定費がゼロ(絶対そんなことはないですが)としても、
最大時給2000円しか給与を支払えないのです。
しかも会社の利益はゼロ。
これが、一人一時間当たり粗利益が10,000円となると、
まったく話しは変わってきます。
その半分を社員さんの給与に充てることができるとすると、
時給は5,000円にできる。
この「一時間あたり粗利益10,000円」という金額が正解でもなんでもないので、
この金額にこだわる必要はないと思いますが、
とにかく一人一時間あたり粗利益を10,000円にする、と決めたら、
次はどうすればそうなるのか、ということに知恵を絞ります。
小零細企業にも、というか、小零細企業だからこそ、この考え方が必要です。
社員さんの稼働率を100%にしない
一人一時間あたり粗利益が向上すると、
全体に時間的余裕が生まれてきます。
会社の必要な粗利益を、すくない時間でさっさとあげることができる、
ということです。
これも経営者からよく聞くことですが、
営業社員なら営業の現場に、
工場の社員なら製造の現場に、
出勤して帰るまでみっちり働いていないと気が済まない。
売り上げたり、売り物を作っている瞬間だけが、
会社の仕事だと思っているのです。
そうではないですよね。
そこに余裕がない状態、つまり稼働率100%であるということは、
未来への成長の余力がそこにはない、
ということを意味します。
「こんな風に工夫をしてみよう」
とかいう発想の余裕も生まれませんし、
スキルを高めるために外部研修に行く時間もない。
今はそれでもいいかもしれませんが、
近い将来の収益性が失われているのです。
だから発想の逆転で、
いかに社員が良い意味で「遊べる」時間を作れるようにするか、
ということが大切です。
今必要な利益はさっさと稼いで、
あまった時間は将来の投資に充てるのです。
どうすれば、必要な利益をさっさと稼げるのか。
そのためには一人一時間あたり粗利益の向上です。
そしてその実現のために、まずは現状の分析が必要なのです。
とても根気がいることではありますが、
それだけの手間暇をかけるだけの価値があると
私は思います。