「意味を持たせる」ことの大切さ

経営は、いろんな部分に「意味を持たせる」ことがとても大切です。
「意味」は、情緒的で、少し抽象的で、多様性があります。

尖りまくった車。トヨタでさえ、こんな車をつくっているのです。

会社の事業内容の「意味」

もし船を造りたいのなら、男たちをかき集め、木材を集めさせ、
のこぎりで切って釘で留めさせるのではなく、
まず「大海原へ漕ぎ出す」という情熱を植え付けねばならない。
サン・テグジュペリ


今でこそ、「経営理念」というものを掲げて経営している会社が
とても増えましたが、
一昔前までは、
「経営理念ではメシは食えない」
という認識でした。

まさに
「経営理念?何、それ?おいしいの?」
という状態です。

しかし今は多くの企業や組織が
経営理念の必要性を認識し、
それを実際につくって取り入れています。

まぁ、実体としてそれが組織内に浸透していない場合がほとんですが・・。

その浸透具合はまた別の問題として、
理念とは、まさに
事業内容に対して、
そして組織の存在について、
意味を与えているものです。

何のために、当社は存在するのか、という
理由の部分です。

その「何のために」という「意味」が正しく浸透していると、
それはモチベーションの源泉となります。

「うちの会社はこの仕事を通して顧客にこんな喜びを与えるんだ」
とか
「うちの会社はこの事業を通してこんな社会問題を解決するんだ」
といったものです。

これらがない状態で、ひたすら売り上げ目標を掲げられても、
その売り上げは何のため?
ということにしかなりません。

特に小零細企業は同族企業がほとんどですから、
「意味」が備わっていない事業で、
売上や利益があがることは、
経営者が儲かることとほぼ同義であって、
そのように受け止められてもしょうがないのです。

社員のモチベーションをあげるために、
会社の存在意義を定めるのではなく、
経営者自らが、事業内容に対する「意味」をその事業目的として
本気で思って、それに向けて動き出すことで、
その仕事は社員さんにとって、
仕事への喜びにつながるのです。

昔から経営資産を
「ヒト・モノ・カネ」と言ってきましたが、
モノもカネも、社内での総量は決まっています。

しかし、ヒトは、事業に意味を持たせることと、
その浸透具合によって、
その経営資産としての総量は変化します。

だからこそ、
事業に意味を持たせること、
存在意義を明確にすること、
経営理念を掲げることが、
大切なのです。

商品の持つ「意味」

狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、
その道も広々として、そこから入るものが多い。
新約聖書

狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、
その道も広々として、そこから入るものが多い。
 新約聖書

かつて(それも今から20年以上前でしょうか)、
この世の中にはモノが足りていませんでした。
人はまだまだ不便を強いられていました。

便利な商品がうまれても、
それが世の中に行き渡っていない段階では、
その商品の「役割(=機能)」が重要視され、
行き渡っていないだけに、
皆が同じようなものを作って売っていたとしても、
それらはちゃんと売れました。

しかし現在、
少なくともこの日本では、
一通りモノは行き渡り、
「絶対これがないと不便」という必需的な商品は
携帯電話以来、新たに生まれていないんじゃないでしょうか。

そういう状態になると消費者は、
その「役割」で商品を選ぶ必要がなくなります。

その商品にどんな「意味づけ」がされているのか、
そしてその「意味」に対して共感できる人が、
その商品の購買層となってくるのです。

ですからヨソと同じようなものを造るのではなくて、
経営者自身が
「こんな商品だったら欲しい!」と思える、
尖った商品開発をすることが求められるのです。

そしてその尖り具合が鋭ければ鋭いほど、
その市場は小さくなってきますが、
逆にその貫通力は高まります。

今の社会に求められるのは、そんな
「人の心に刺さる切っ先の鋭さ」です。

確かに市場は小さくなってしまいますが、
昔と違い、グローバルに商品販売が可能ですから、
市場全体の分母はかつてよりも広がっているのです。

とはいっても、ほとんどの小零細企業が、
自社の商品を隣の県にも販売できていないような現状ですから、
グローバルに意識を向ける前に
やるべきこと、できることはたくさんあるだろうと思います。

自分たちの愛せるものを作る!

現在においても、
「意味」のない、もしくは「意味」の薄い製品を作っている会社はあります。

しかしこのような業界は、
「機能」だけの勝負になりますから、
寡占・独占が進みやすく、
一人勝ちの状況を生み出しやすいものです。

もっともわかりやすいのが、
webの検索エンジンですね。
多くの国で、Googleが圧倒的な地位を占めています。

日本における車市場もそうでしょう。
意味が薄く、機能・性能が優れている車は、トヨタの一人勝ちです。

そのエリアで真っ向勝負をしても勝ち目はありません。

だからこそマツダは「意味」の要素を強める方向、
つまり独自路線へと踏み出して、
その世界観を共有してくれる消費者に向けて製品作りをしているのです。

当然小零細企業もこの
「情緒的に意味づけされた世界」
に向けて、商品・サービスを展開していくことが必要です。

スケールを求めて、いろんな人に好まれるものを作ったとしても、
それは魅力のない、フォーカスの甘い商品となり、
人の心に刺さる「切っ先の鋭さ」がないのです。

ですから小零細企業では、
商品・サービスは、
自社の好みに思いっきりこだわって、
情緒あふれる、感性豊かな商品を作り出しましょう。

ターゲットは、自分たち。
自分たちが「こんな商品であれば買いたい!」と思える、
自分たちの趣味満載の商品・サービスができあがれば、
自分たちと同じような人たちはきっと買ってくれます。

そんな人は自分たち以外にはいない、なんてことはないはずですから。

そこまで貫通力が高まると、
その刺さる面積が狭くなって、
売上が下がるんじゃないかと心配される方が多いですが、
ちゃんと尖っていると、それは
自分たちが考えている以上の人たちにも刺さります。

むしろ先っぽが丸まっていて、
設置面積は広いけどだれの心にも刺さらない商品の方が、
結果として売れなくなってしまうのです。

なぜなら、刺さらないから。

モノに満たされた私たちは、
かつての、モノが不足している時代の私たちではありません。
みんな、自分たちに刺さるモノを求めているのです。

だから、しっかりと、先っぽを研ぎ澄ませ、尖らせた、
「自分たちだからこそ、こんな商品が生まれました」
というものを作り上げていただけたらと思います。

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