違いは「少ない方」から生まれる。

事業は独自性を追求しなければいけません。
小零細企業は、特にそれが求められます。
なぜそうなのか、ということと、その実践について。

独自性とは何なのか

最近、こんな言葉に出会いました。

「森の中で道が二つに分かれていた。そして私は人があまり通っていない道を選んだ。そのためにどんなに大きな違いができたことか」
ロバート・フロスト

正直、詩などに興味のない私は
この言葉もロバート・フロスト氏が何者かも知りませんでしたが、
ふとこの言葉を読んで、
「ああ、いい言葉だなぁ。小零細企業の事業もそうあるべきだなぁ」
と感じました。

事業経営を考える時に、私は
「価値」という言葉に強く光を当てています。
一般的な言葉に置き換えるとこれは「商品」となるわけですが、
これをあえて「価値」と表現することがあります。

たとえばある消費者が、同じような商品がたくさんある中から、
ある特定の商品を選んだときに、
そこにはその消費者がその商品を選んだ理由があります。

その理由こそが、この消費者の感じ取った
「価値」なのです。

価値にはもちろん大小もありますが、
「価値がある・ない」の一次元だけでなく、
その価値自体がどんな価値であるのか、ということを考えると、
その方向性は無限です。

そして消費者に選んでもらうためには、
その理由としての「価値」が必要なわけですが、
その「理由」が他社と同じであって、一般的であればあるほど、
そこには競合が多くいることとなり、
必然的に価格競争や資本の論理に呑み込まれてしまうことになります。

そんな中で自社が輝くためには、
その価値が他と違うものである必要があります。

そしてその「他と違う」ということが、
その会社の商品の独自性となり、
その独自性が「価値」を生み出すのです。

大企業には大きな市場が必要。

大きな企業、少なくともその業界で相当のシェアを確保しているような企業は、
その規模を維持する必要がありますから、
商品を多くの人に購入してもらう必要があります。

結果として大きな企業は、
ある程度無難な商品を開発し、
その独自性は、
多くの消費者に共通して共感してもらえるものでないといけません。

独自性があまりに尖っていて、
少数の人にしか理解できないものであると、
その商品は、大きな企業にとっては販売力のあるものとされないので、
そういった商品開発は一般的には行われません。

例えばトヨタの開発する車のデザインは、
誰にでも受け入れてもらえるものである必要があるので、
奇抜なデザインの車が開発されることは、あまりありません。
一方でどこに独自性・競争力を持っているかというと、
いろいろあるでしょうが、
徹底した製品管理に基づく安全性といったような、
誰もが共通して求めるものに焦点があたります。

最近は市場が細分化してきたので、
大きな会社でもマニアックなものを開発してくることがありますが、
そうは言っても、市場規模の小さいところへは、
まだまだ大企業は入り込んできません。

「少ない方」を選ぶ

従って、逆にこの「小さい市場」が、
小零細企業の独壇場となります。

市場を思い切り細分化して、
その細分化されたターゲットに徹底的に共感してもらえる
尖った商品を生み出すことで、
特定の消費者に
「あなたのその商品でないとイヤ」
という状況をつくり出すのです。

そうなると、それは他にはない商品ですから、
必然的に価格競争にも呑み込まれず、
利益率の高い事業を行うことが可能となります。

その時に冒頭の詩にあるような、
「人があまり選ばない道」を歩む必要が出てくるのです。

人と違うことは大変です。
なんせそれを受け入れてくれる人は少ないですし、
世の中に認められたり、その価値を理解してくれる人に届くまでに
時間がかかりますから。

しかし、人と違うことは、素晴らしいことです。
そこにあなたの独自性が宿るから。

私も「多い方」と「少ない方」が選択肢としてあがったら、
敢えて少ない方を進みます。
いかに税理士らしくない税理士になろうかと、ずっと考えてますし、
一般的な税理士がやっていないことに取り組んで、
そうやって手に入れたノウハウを顧問先に提供することで
税理士業とその他事業の相乗効果を持たせるような展開をしていこうと、
いつも考えています。

これも、私が「大きな税理士事務所にする」という野心を
捨てているからできること。

ちゃんと私の提供しようとしているものに共感してくれる、
そしてそれをおもしろがってくれる、
そんな人に私の仕事を提供することで、
私の価値を感じてもらいたいと思っています。

ちなみに小零細企業でも、大企業の下請けという形になっている会社は、
大企業の市場戦略に乗っかる必要がありますので、あまりに独自性の強い企画は
通りにくい傾向にあると思われます。
そこは自社がどこを向いて事業を行うかによる、ということですね。

少ない方を選ぶ注意点

しかし、やみくもに「少ない方」を選べばそれでいいかというと、
そうではありません。

これは事業領域の決定、「ビジネスシナリオ」に関わる話しです。

ビジネスシナリオは、
これまで何度もこのブログで取り上げてきましたが、
その中で定められる事業領域は、
「求められること」
「したいこと」
「できること」
の接点に生まれる、
ということをお話ししてきました。

少ない方を選ぶにしても、
それが自社の得意なこと・強みでなければ
優れた価値を生み出せる事業になりませんし、
少ない方を選ぶにしても、
それが自社(経営者)のやりたいことでなければ
続きませんし、
少ない方を選ぶにしても、
それが社会に求められるものでなければ、
自身が「価値」と考えるそれは、
誰の元へも届かず、共感も得られません。

しかし逆に「やりたくない」といって
目を背けていては、
いつまでたっても、人のあまり通らない道を選ぶことはできません。

そんな意味で、小零細企業として生き残り、強い会社となっていくためには、
いばらの道かもしれませんが、
それが自社の強みが活きる道であり、
それを求める人がいる道なのであれば、
多少の勇気と覚悟を持って、
「人があまり通っていない道」を選びましょう。

それがその事業に独自性と価値を与え、
その事業の将来へとつながっていくのです。

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