株式に機能を持たせる~種類株式①

さて今日は少し、会社法のお話しです。
会社法というとすこし敷居が高いですが、
その中でも
「株式に機能を持たせる」、
という内容です。

小零細企業であっても、事業承継の場や社員持ち株会のつくる場合など、
いろんな株式戦略に活かすことができます。
まずは今日明日くらいで、その概要解説をしたいと思います。

一つ一つに特色があります。

種類株式、という自由度。

あまり会社法のことなど考えたことのない方は、
会社の発行する株式は一種類であると
思っておられるだろうと思います。

しかし、実はそんなことはなく、
会社の資本戦略に幅を持たせるため、
株式に、いろんな特徴を付与することができるよう、
会社法にて定められているのです。

その株式の種類は全部で9種類あり、
こういった特徴を付与された株式のことを
「種類株式」
と呼びます。

種類株式の全体像

種類株式に付与される特徴は、
大きく分けて
 ①分配の優先
 ②機能の制限
 ③株式の取得
 ④会社の支配
の4つに区分されます。

それぞれの区分の中で、次のような種類株式を
発行することが可能です。

①分配の優先については
 (1)剰余金配当優先株式
 (2)残余財産分配優先株式

②機能の制限については
 (3)議決権制限株式
 (4)譲渡制限株式

③株式の取得については
 (5)取得請求権付株式
 (6)取得条項付株式
 (7)全部取得条項付株式

④会社の支配については
 (8)拒否権付株式
 (9)取締役・監査役選任付株式

これらのうち、
小零細企業でも比較的活用される頻度の多いものについて
順次解説してまいります。

配当の支払いに強弱をつける

上記(1)の剰余金配当優先株式(以下「配当優先株」)とは、
普通の株式に比べて、
配当の金額を増やすことのできる株式です。

配当とは、会社の出した利益(税引き後)の中から
出資者にその利益を分配することを言います。

会社が利益を出すと、
その会社の株式を保有している株主は、
その利益に応じて配当を受け取ることができる、
ということです。

そして配当は通常、
「1株あたり〇円」という形で
その保有している株数に応じて受け取ることができますし、
逆に
「この人には配当を手厚く、この人には配当を支払わない」
というような、配当の強弱をつけることはできません。

しかしこの配当優先株を発行することで、
その配当優先株を保有している人と、
普通の株式を保有している人で、
配当に差をつけることができるのです。

小零細企業の場合、経営者がその会社の株式のほぼ全てを
保有していることが多いですから、
利益をだしても「配当をする」という発想はほとんどないので
あまり身近なことではないでしょう。

しかし経営に関わらない株主がいる場合には
配当を出すこともありますので、
そのときにこの種類株式が力を発揮します。

議決権をつける、はずす。

基本的に、株式には
「議決権」というものがセットになっています。

会社に出資をすると、
その出資金額に応じて株式を取得することができ、
株式を保有することで、
その会社の株主総会において「議決権」という形で、
会社の経営に影響力を及ぼすことができます。

ですから小零細企業においても
経営者がどれだけの株式を保有しているか、ということは、
とても大切な事柄です。

しかし、種類株式が発行できるようになってから、
株式に「議決権の有無」を設定することができるようになりました。

議決権がセットになっている株式が通常の株式ですから、
議決権が与えられない「(3)議決権制限株式」が、
種類株式ということになります。

この株式は保有していても議決権が付与されませんから、
株主を分散させる必要があるときに活用されます。

譲渡制限をかける、はずす。

株式は通常、その譲渡・贈与などの所有権の移転を
所有者の意志で自由に行うことができます。

しかし同族企業などにおいて、
その株式が自由に取引されて、
気が付いたら全く得体のしれない人の手にわたっていた、
などということになっては
とても困ったことになります。

得体のしれない人でも株式を保有している限り議決権が存在してしまいますから、
うっかりその人が多数の株式を保有することになってしまうと、
会社運営にあたって思わぬ権限をもってしまうということが
危惧されるのです。

そこで会社は、「(4)譲渡制限株式」というものを発行することで、
株式の取引に制限をかけることができます。

今回「種類株式」というものを解説するにあたり、多くの人が
「私には関係ないことだよ」
と思われたことだろうと思います。

しかし実は、同族会社の株主たる経営者の皆さんは、
いつの間にか種類株式を発行し、それを保有しているのです。
それがこの、譲渡制限株式です。

同族会社においては、先の理由から、
通常、法人の設立時において、
この「譲渡制限」というのを最初から設定して
株式を発行していることがほとんどです。

この制度がなかったような、ずいぶん昔からある会社は別ですが。

一度みなさんの会社の登記簿謄本をご覧になってください。
きっと「譲渡制限」というものがついているだろうと思います。

ここまで3種類の種類株式を解説してまいりました。
少し長くなってまいりましたので、
続きは次回。できれば明日に。

一通りの解説ののち、その活用方法など
後日ご紹介できればと思っております。

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