図書館の大魔術師

図書館の大魔術師。
ここしばらく、その内容抜粋することの多かったマンガですが、
改めての作品紹介。
まだ作品としては「起承転結」の「承」の入口に入ったくらいですが、
このままいけば間違いなく名作になるだろうものだと思っています。
少しマニアックですが。

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本にはあらゆるものの一生を大きく動かす力がある。

このマンガは、公式に「ビブリオファンタジー」と銘打っています。

つまり「本」が大きなテーマです。

一人の少年が、本の力で世界をつなぐ物語。

まだ序盤ですので、
そんな場面にはまだまだ辿り着いていません。
しかしとにかく作者の「本」に対する愛と、
「本の力」を信じる力に、あふれています。

ストーリーの設定が緻密に作りこまれていて、
かつ独創性が高く、
そして絵がとにかく美しい。

これだけの絵を、どれだけの時間をかけて書いているのだろうと
感じさせられるクオリティです。

作者は「画:泉光」となっていて、
原作「風のカフナ」
著「ソフィ=シュイム」
となっていますが、
原作も著者も実在しません。
ですからネット検索しても実在の人物としてはでてきません。
これ以上はネタばれになりますので、差しひかえますねw。

かの出口治明氏もおっしゃっています。
人は、「人・本・旅」に学ぶと。
それだけ人は、本に大きな影響を与えられ、
本によって学び、
人によっては本によってその人生が大きく動きます。

私も、本(マンガ含む)を読むのが好きということもありますが、
本で学んだことの実践で作り上げられている部分も
本当にたくさんあるだろうと思います。

この項の見出しである、
「本にはあらゆるものの一生を大きく動かす力がある」という言葉は、
作中の某登場人物による言葉ですが、
そういう意味で私の一生も、本によって大きく動かされているのです。

書を護ること、それ即ち、世界を護ることなり

基本はファンタジーですから、
このお話しの世界は、空想の世界です。
そしてこの世界ではかつて民族同士の大きな戦乱があり、
そこでその世界の勝者が敗者を支配するために、
文化と歴史と言葉を否定したという設定になっています。

そして偉大な魔術師がその事態を嘆き、
「誰かが先人みんなの想いを護らなくては」
ということで、
全ての書を護るための図書館を作ります。
全ての民族の記憶を残すための館です。
そしてその功績によってその魔術師は
「図書館の大魔術師」と呼ばれた、
という歴史設定。

支配者が都合の悪いものを否定するため
書をなかったものとする、
というのは現実この地球上でもかつてあったことです。
秦の始皇帝の時代に行われた、
「焚書坑儒」ですね。

このときは書だけでなく儒学者も一緒に生き埋めにされてしまったらしですが。

ですからこの作品の中で描かれていることは
非現実的なこと、ということでは全くないのです。

そして書を護ることで、
全てのこの世の歴史や文化は後世に引き継がれ、
多くの人がその書から多くの事を学び、
多様性のある世の中が作られていきます。

まさに書を護ることは 、世界を護ることなのです。

書が人を、世界を作ることになった。

これもこのマンガに出てくるセリフです。

最初の書は人が作ったかもしれない。
けれどすぐにその立場は逆になった。
書が人を創り、書が世界を創っているんだ。

図書館の大魔術師 第一巻より 泉光 著


この言葉を読んだときに、
今まで考えたことのなかった切り口に本当に驚かされました。

確かに、最初の書は、人が作っています。
論語も孔子の弟子が編纂したものですが、
その後現在に至るまで、
多くの人がこの書から影響を受け、
この世の中を創ってきました。

書は人に作られたものでありながら、
確かに世界を創っているものなのです。

だからこそ私たちは、良書から学ぶことは多く、
また良書から学ばなければならないのだろうと思うのです。

本の知識とは偉大なものだが、経験に勝るものはない。

このマンガの優れているところは、
「本」のもっている力について力説しながらも、
知識を得るだけでは何も生まれないことに触れていることです。

「本の知識とは偉大なものだが、経験に勝ることは決してできない」
フィル=アソブ

図書館の大魔術師 第一巻より 泉光 著

この「フィル=アソブ」という人物も、
どうせ作中だけの架空の人物でしょう(笑)。
そういった背景の設定が細かすぎて、
この本を読んでいると本当にそういった人が存在するかのように思えてきます。

この言葉も、とても難しいことでありながらも、
私が本当に大切にしようとしていることで、
どんな学びも実践してこそ、ということですね。

私が毎日のルーチンとして読んでいる
「森信三 一日一語」の中でも、
「読書は、実践への最深の原動力」
としながらも
「真理は現実の只中にあって書物のなかにはない」
と述べられています。

読書は極めて大切だけれども、
あくまで実践のための「原動力」。
実践してなんぼ、ということですよね。

しかしその実践をするにあたって、
書から学んでいるかそうでないかで、
おそらくその実践を通しての成果と深さというものが
変わってくるということなのでしょう。

「図書館の大魔術師」
あまりメジャーな作品ではありませんし、
まだ序盤も序盤ですから、
正当な評価はまだこれから、ということになるでしょう。

ただ、現在連載中で、今私がタイムリーに読み進めているマンガとしては、
この作品と以前紹介した「映像研には手を出すな!」が、
きっと名作となるであろうと私が考える二大巨頭です。

「映像研」はアニメ化・ドラマ化までされてしまいましたけどね。
ちゃんと作品として完成するまで、
コンテンツの浪費は避けてもらいたいものです・・。

あくまで私個人の感性によるものですので、
もちろん個人判断にお任せするところですが、
興味がありましたらぜひ一度、じっくり読んでいただけたらと思います。

先ほども書きましたが、
一枚絵も本当に美しいので、ストーリーだけでなく、
絵の美しさも堪能しながら読み進めてくださいますよう、
お願いいたします。

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