相続対策としての贈与。

今日は久しぶりに税金のお話しを。
贈与税の非課税枠を活用した、今さら当たり前すぎる節税について。

DSC_0497

基本的な考え方

資産の贈与を受けた場合には、
その金額に対して税金を支払う必要があります。
これが贈与税。
そしてこの贈与税、その年の間にもらった資産の金額が
110万円までは税金がかからないという、非課税枠が設定されています。
その昔は60万円でしたが、20年ほど前(だったと思います)に
110万円に拡充されました。

そして非課税枠があるのなら、それを相続対策に活用しよう、
というのは自然な流れです。
「たった110万円」とバカにすることなかれ。
あげた側が110万ではなく、もらった側が「一人につき」110万円なわけですから、
全然バカにできません。

例えば、自分に子供が2人いるとします。
そしてそれぞれに配偶者がいて、
それぞれの家族に2人ずつ子供がいるとします。
つまり自分からみて孫が4人いる状態。
この場合、できるだけ多くの人に贈与をすると考えると、
まず自分の子供2人。
そして、孫4人。
さらに、夫婦円満で離婚の可能性がほぼゼロであるならば、
自分の子供それぞれの配偶者にも。
すると一回の贈与で
110万円×8名=880万円の贈与をすることができます。
これを10年続けたとすると、8,800万円もの贈与が可能になるわけです。
しかも無税。
8,800万円、そのまま何もせずにおいとくと、
他の財産状態にもよりますが、2,000万くらいは普通に税金がかかります。
それが無税なわけですから、早い内からこれを手がけておくことが
いかに大切かと言うことがわかっていただけるかと思います。

贈与による節税の注意点

このブログは節税ブログではありませんから、
比較的シンプルに説明していきたいと思います。
知識の補完は、ネットで調べていただけたら、ヤマのように出てきます。
たまに間違った情報もありますが。

贈与は諾成契約である。

これが一番大きなポイントです。
贈与は、財産をあげる方が「あげましたよ」、
そしてもらった方も「確かにもらいましたよ」という
この両方がそろって初めて成立する「諾成契約」です。
つまり一方通行ではありません。

よく親が、子供の名義で勝手に通帳をつくり、
ここにお金を毎年110万円ずつ入金していく、
ということをされていることがあります。
そして子供はその存在をしらない。
これは「贈与」とは呼びません。
ですからこの状態でその親が亡くなったときに、
この子供名義の通帳は誰のものと認定されるかというと、
親のものとなってしまいます。
ただ単に名義が子供なだけで、贈与は成立していないから、親のモノ、
ということです。
税務調査でも、めちゃ問題になります。
だから必ず贈与契約書を締結し、それぞれが署名押印することで、
これを立証できるようにしましょう。

自由に処分できるか。

名義が子供に移ったとしても、
その預金を子供が自由に処分できる状態でなければ、
それは「贈与」とは呼びません。
当然のことと言えば当然のことです。
ですから、贈与される通帳とその印鑑は、お金をもらった側が管理し、
お金を引き出す際には本人が手続きに行きましょう。
定期預金の開設など、
その筆跡が残っていたりしますので注意が必要です。

申告は必要か?

たまに、税務署に贈与があったことを立証するために、
110万円をちょっと超えた金額で贈与をして、
あえて贈与税を少しだけ発生させて申告・納付する、
というケースがあります。
またこれを推奨する記事などもたまに見かけます。

私の私見としては、これは全く無意味です。
いくら贈与の申告をしていても、
贈与をもらった側が「もらったこと」を認識していなければ、
そしてその財産を自由に処分できなければ、
それは法律上贈与ではありません。

逆にその条件をちゃんと満たしていれば、
税金なんて払わなくても、贈与は贈与なのです。

株式の贈与にも使う

小零細企業にももちろん株式は存在し、
多くの場合、その株主は社長となっています。
この株式は上場株式のように換金性のあるものではありませんから、
所有している経営者はそれが自分の財産である意識を
あまり持っていないことが多いのです。
これが大きな問題。

毎年しっかり利益を出している会社であれば、
年々その会社の財務がよくなっていきますから、
必然的に株価はどんどん上がっていきます。
最初1,000万円だと思っていたモノが、
気がついたら2億、なんてこともあるのです。
しかも換金性はありませんから、
これに相続税が課せられても税金を支払うことは困難です。

ですからこれを回避するために、
先の毎年110万円の非課税枠を活用して、
長い時間をかけて贈与をしていく、ということが行われています。
これ、やっていない方はぜひ一度、
自分の会社の株価を税理士に計算してもらってください。

現在は「事業承継税制」といって、
こういった株式に対する相続税を「猶予」する制度が存在します。
当初非常に使い勝手が悪かったのですが、次第に緩和され、
比較的使える制度になってきました。
それでもやはりいろいろ成約や注意点があることや、
一度この制度を使うとその先もずっとケアしていかないといけないという、
面倒くささとリスクがあります。
ですからやはり基本は、毎年贈与なんじゃないかと思っています。

もうすぐ使えなくなる!?

この非課税枠を利用した節税、
今は情報が行き渡り、相当多くの人がこれを活用して節税を行っています。
しかしそんな状態になると、国は黙っちゃいません。
数年前からこの節税方法に対して国はとても問題意識を持っていて、
今にもこの節税策に対する網をかけようとしています。

来年の税制改正で何がしかの対策が取られるのではないかというウワサもありましたが、
結果として、今回はスルーされました。
これは非常にラッキーなことです。
しかし、税制大綱に記されている文言からしても、
ここにいずれ手をつけてくることは時間の問題です。

ですから残された期間は短いものと理解していただく必要があります。
通常税制改正は4月から導入、という形になりますから、
この節税に網がかかるのが最短で令和5年4月とすると、
令和3年、4年、5年(の3月まで)の3回しか使えないこととなります。
それでも先の例でいうと、
総額880万円×3回=2,640万円を無税で移動できます。
今日は12月28日。銀行は30日まであいていますので、
あと2日の間であれば今年の枠は使えます。
銀行まで足を運ぶと、年末の混雑で大変ですが、
ネットバンクであれば、自宅でポチッ!でできることです。
株式であれば契約書面だけの問題です。
たった2日しかありませんが、のこされた貴重なチャンスです。
必要のある方はぜひ、フル活用してください。

改正に関してはあくまで予想ですので、はずれることも大いにあります。
しかし、1年でも早くやっておくことに越したことはないのです!

タイトルとURLをコピーしました