小規模経営という選択肢

会社にとって、「規模」はもちろん大切です。
数は力を生みますから。
しかし規模がおおきければいいということでもありません。
かつて私も「30人規模の事務所にするんだ!」という野望に燃える時期がありました。
今から思えば、非常に若かったなぁとも思うのですが。
なぜ私が小規模経営を選択しているのか、お話しをいたします。

小さなサンタ(季節はずれですが)

私の事務所

未来創造マネジメント株式会社は私が代表取締役をつとめる株式会社ですが、
私は、税理士法人トレイスという税理士事務所の代表税理士(私のほかに2人の代表がいる)
でもあります。
この税理士法人は少し変わった形態となっております。
大阪に2事務所、奈良に1事務所。
そのうち奈良事務所が私の事務所で、私がそこの代表をつとめている、という形となっております。
3事務所ありますが、もともと3つの別々の事務所であったものが一つになったという経緯があり、
またそれぞれの企業文化ができあがっていましたから、
「お互いの企業文化は、必要以上にまぜないでおこう」
という趣旨で進めております。
結果として互いの事務所の交流はあまり深まりませんし、
得られるスケールメリットも限定的ですが、
この環境で得られる限りの税理士法人としてのメリットを享受して
それぞれの事業に活かしている、という形です。
もちろん完全独立採算制となっているため、
どのような業務を行うかも、どんな経営方針で進めるかも、
法人全体の評価を貶めたりすることで他事務所に悪影響を与えない限り自由です。
その中で奈良事務所(=私の事務所)は、
小零細事務所でありつづけることを選択しました。
構成は所長である私とパート社員さんが2人(うち1人は私の妻)という構成です。
そして「理想の零細会計事務所」という姿を目指して、
日々経営に取り組んでいます。

小規模であることのメリット

これまでの企業経営は、
大きくなることが「良し」とされてきたように思います。
もちろん、大きくなる(=社員が増える)ことで会社としてできることが増えていきます。
ただ、これからの時代、大きくなることが良いことである、
といことではありません。
小さいなら小さいなりの強み・メリットが存在し、
それによって顧客から大きな信頼を得る、
企業として生き残ることも可能となります。

小さい会社であることのメリットは次のようなものがあげられます

①社員全員に経営者の声が行きわたりやすい

大きな組織になると、必然的に組織の階層が増え、
経営者自身の考え方が直接全社員にいきわたるのが困難となります。
経営者が事業を進めていくにあたって、
会社全体の方向性をできるだけ一つのに統一することが必要です。
自社の考える「経営理念」、
社外に向けての「メッセージ」、
商品・顧客に対する考え方など、
社員それぞれがその根底の部分で同じ方向を向いていないと、
バラバラな組織となってしまいます。
大企業だと、組織の隅から隅まで社長の声を届けることは不可能です。
ただ零細企業であればそれを丁寧に行うことができるため、
皆で同じ方向を向いた強力な組織を作り上げることが
比較的容易になると思います。

②小規模であるがゆえに小回りが利く

組織が大きくなると全体で大きな力を発揮することができますが、
大きいがゆえに方向転換にも時間がかかります。
非常に小さい組織であれば、経営者が
「これまでこの方向だったけど、〇〇の理由で方針をこっちに変更します!」
となると全員でその瞬間ピッと方向を変えることができます。
社会の変化が激しい昨今、この能力は非常に大切です。
大企業でもこれは同じで、方向転換が必要に迫られたとき、
組織全体でどれだけ早く向きを変えることができるか
その能力が組織として問われます。
もちろん「〇〇の理由」という部分を
社員全体に理解納得してもらう必要があることは言うまでもありません。
またそれがちゃんと伝わるかどうかは、
日ごろの社員との信頼関係がモノを言います。

③組織作りがシンプルである

会社運営には組織作りがとても大切です。
これは少人数であっても不要なわけではありません。
2人なら2人なりの組織の作り方が必要です。
大きな会社になればそこに所属する社員はとても多くなりますから、
その分組織作りは複雑になりがちです(だからこそ、これをいかにシンプルにするかが問われます)。
小さい組織であれば業務の流れもシンプルですから、
組織づくりは非常に容易になります。
そしてその分、兼務が増えます。
②に関わる話しですが、
業態変更や新規事業による組織変更にも容易に対応が可能です。
組織が複雑になると、その分情報共有が必要になりますし、調整も必要になりますし、
その共有・調整の場として会議が増えます。
この「会議」というものが曲者です。
「会議」のあり方についてはまた別の機会にお話しするとしまして、
いずれにしても会議が増えると基本的には効率が下がります。
小零細であれば、会議を招集までもなく、上記のようなことが可能となります。

④限定された人材を経営者自身が育成できる

社員教育は極めて大切なことです。
小零細ではこれを経営者自身が行うことができますし、
経営者自身が教育のあり方自身をコントロールすることができます。
経営者から距離があればあるほど、経営者の考え方は伝わりにくくなりますから、
その経営者の考え方が伝わりきっていない経営幹部が教育をすることで、
経営者の想いは、どんどん薄れていきます。
経営者の想いを直接伝えつつ、技術を伝えることができる。
これは極めて大きなメリットであると考えます。
これだけ聞くと「多様性が失われる」と思いがちですが、
そういうわけではありません。
個性を消すことが目的ではなく、その個性を生かせるカタチで
会社にとって必要な考え方と技術をインストールすることは可能ですし、
そうでなければ社員の力を最大限生かすことはできません。
これらのことが大企業では難しく、
それが実現できていない硬直した組織がいわゆる「大企業病」というわけです。
ただ、逆に言うと以上のことが実現できていなければ
零細企業でも大企業病に陥る可能性があるということです。
経営者の皆さんは一度わが身を振り返ってみてはいかがでしょう?

経営をしている過程で売り上げが増大し、それに応じて社員をこようしていけば、
自然と会社の規模は大きくなります。
ただこれを「成長」と呼ぶかどうかは別物です。
単なる「膨張」に陥っている場合も、ままあります。
かく言う私もそうでした(そんなに大きかったわけでもないですが)。
会社というのは気が付けば、
本来あるべき姿とはかけはなれた状態で「膨張」していることがあります。
そして一度膨れ上がった組織をその後小さくしていくことは、
大きくしていくよりも難しいことなのです。
ですから、経営者は自社の業態や自身の性格を考えあわせて、
自社にとって最適な会社のサイズとはどのようなものなのかということを
考えなければならないのです。
「最大」であるよりも「適正」であることが大切です。
自社にとっての適正規模とはいったいどういうものか。
常にそれを意識しておきたいものです。

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