永遠のラットレースからの脱却。

多くの経営者さんを見ていると、
その多くがラットレース状態だな、と感じることがあります。
ここから抜け出したければ、抜け出そうと思わなければいけません。
当たり前ですが。

ラットレースとは。

まず「ラットレース」とはどういう意味かというと、
wikipediaで調べると、
「働いても働いても一向に資産が貯まらない状態」
と書いています。
要はネズミが飼育かごの車輪の中をグルグルと同じ場所で走り続けている、
このイメージですよね。

またコトバンクでは
「無意味な激しい競争、過当競争、生存競争、また同僚間の栄進の競争」
とあります。
グルグルしているイメージが伝わってきませんが、
資産が貯まるか貯まらないかというのとは別の視点ですね。

私の感覚はこちらの方が近くて、
「同じ場所をグルグル」といいましても、
その「場所」というのが経済的な意味だけではないように思うからです。

同じ場所でなく「上昇」していればそれはラットレースではないわけですが、
たとえ資産が着実に貯まっているとしても、
激しい競争にさらされ続けているのはやはり、
同じ場所をグルグルしている状態ですよね。

つまりラットレースであるかどうかは、
資産の蓄積どうこうよりも、
幸福度が上昇していない、ということと、
他社との競争の目線で走り続けている、ということ。
これが私のラットレースの定義です。

小野龍光さんと宍戸梅軒

最近youtubeで、小野龍光さんという方のお話しを聞きました。

バリバリのエリートで、
ITベンチャー隆盛の最前線で活躍し続け、
ベンチャーキャピタルを運営し、同時に
「17LIVE」日本法人の社長をされていた方です。
そしてわりと最近、いきなりVCもその法人の社長もやめて、
その後いきなりインド僧侶になった変人です。

その小野さんがなぜ投資家からインド僧侶になったのかというと、
自身のやっていることが、
「みんなのドーパミンを燃やし続ける永遠のラットレースにみんなを走らせ続けている。それによって不幸を感じる人を増やすことに加担していた」
ということに気がついたからだそうです。

人が幸せになるお手伝いをしていたはずが、
不幸な人を拡大再生産していた、ということですね。

この話しを聞いて、私の好きなマンガ「バガボンド」に登場する
宍戸梅軒(辻風黄平)のエピソードを思い出しました。

以前にもこのブログで取り上げましたが、
彼は元々、「誰よりも強くなる」ということを目標に修羅の道を歩みます。
しかし宮本武蔵に敗れたとき、本当に自分が幸せになれる道をみつけるのです。
そのときの台詞が、

「殺し合いの螺旋から、俺は降りる」

彼も「強くなりたい」という自分の思いの元で生きていたつもりが実は、
他人との比較、永遠の激しい競争にさらされて
「ラットレース」を繰り広げていた、ということですね。

人間、自分の目標に向かって努力しているようでも
気がつけば他者との比較でラットレースを展開している状態になってしまいがち。
だから私は、この台詞が大好きです。

ラットレースから脱却するために。

ですから、
「会社を大きくしよう」とか
「もっと利益をあげよう」とか
そんなことを目標に経営をしていると、
大きくするにも利益をあげるにも常に上はいますし、
人間の欲望には際限がありませんから、
気がつけばラットレースにはまり込んでいるということが
あるのだろうと思います。

一度そうなると、そこにその経営者の幸せは落ちていません。
本人が気がついているかどうかは別ですが。

しかし経営をしている以上、
基本的に経営の現場から飛び降りて
小野龍光さんみたいに僧侶の道を歩むなんてことはできませんよね。
する必要もないでしょうし。

それではそうではない形でラットレースから脱却するには、
何が必要なのでしょう?

私が考えるに、それが、
・他社との競争に焦点をあてない
・売上や利益や規模を目的にしない
・自分が楽しいことで喜んでもらう
ということなんだろうと思います。

要は、いかに他者ではなく自分の世界で経営をするか、
ということですね。

もちろん経営ですからそこには、
売上も規模も競争も存在しますし、重要なことです。
そこから完全に目を逸らしてください、
というような無茶なことをいっているわけではありません。

まずは自身の会社の独自性をどれだけ磨き上げるか。
それが大切です。
「自社の生きる道はこれだ!」ということがはっきりしていれば、
他社が何をしようが気にならなくなります。

独自性に価値があり、顧客がその価値を認めてくれれば、
自社の世界観の中で経営ができます。

そしてその経営活動が自分にとって楽しいことであって、
それを通して顧客に喜んでもらうということに目的があると、
楽しいことをして、人に感謝されて、となりますから
そんなにうれしいことないですよね。

利益をあげるために顧客に喜んでもらう、という順番でなく、
顧客に喜んでもらうことを通して、利益を上げる
という順番が大事なんだろうと思います。
人に喜んでもらって利益がでないのは、経営ではなくてボランティアですから、
そこは間違いのないように。

ただしそのような「独自の世界観」を作り上げるには、
業界業際分析は絶対に必要です。

他社と同じことをしていれば、それはラットレースの入り口。
他社の分析は比較のためではなく、
自社の居場所としての独自性を明確にし、
それを徹底的に磨き上げるために、必要なのです。

タイトルとURLをコピーしました