自身の事業を考えるときに、
「負の解消」と「夢の実現」という切り口がとてもわかりやすく、
事業を通してそれらが実現できているか、ということが大切です。
事業とは、「価値」を届けること
事業を行う、ということはもちろん、
商品を提供することであり、
役務(サービス)を提供することです。
自身の会社や事業が、
どんな商品・役務(以下「商品」で統一します)を届けているのか、
それは当然ハッキリしていると思います。
しかしそれに対して顧客が求めているものは、
その商品そのもの、というわけではありません。
それは、セオドア・レビットの
「ドリルを買う人がほしいのは「穴」である」
という言葉が示すとおりです。
ドリルを買う人は、そのドリルそのものが欲しいのではなく、
「穴」が欲しいのです。
また、高級時計を買う人は、
時間を知るための道具が欲しいのではありません。
もちろんそれも求めているのでしょうが、
もし本当に求めているものがそれだけであれば、
高級時計である必要はありません。
正確な時間が知りたいのであれば、
安物の電波時計で事足りますから。
つまり商品を買う人は、
その商品を通じて「価値」を手に入れようとしています。
その商品を通して、自分の欲しい価値は得られるのか。
その商品は、その価値を与えるに充分なものなのか。
これが高付加価値な商品を生み出す発想の元になりますし、
自身の独自性を生み出す元になるのです。
そして「価値」というものは、2つの切り口で考えることができます。
それが、
「負の解消」と
「夢の実現」です。
「負の解消」
顧客に届ける価値として一つ目の切り口は、
「負の解消」です。
人間、毎日の生活をしていると、
いろんな場面でいろんな「負」を感じています。
「これ、もっと便利になったらなぁ」とか
「ストレスを感じるなぁ」とか。
こうしたマイナスのものをゼロにもっていくことができる、
またはゼロにはできなくとも大きく低減することができる。
それが「負の解消」です。
それではさらに要素分解して、
「負」とは何か、ということを考えてみましょう。
それはおよそ4つの種類に分類することができます。
「面倒」・・手間がかかるなぁ。
「時間」・・時間がかかるなぁ。
「お金」・・お金がかかるなぁ。
「精神」・・悩みが深いなぁ。
これが4つの「負」。
私は「4つのコスト」とも呼んでいます。
あなたの事業が負の解消タイプなのであれば、
その事業で扱う商品そのものが本質的な商品ではなく、
これらの負の解消という価値が、商品です。
税理士・コンサルの仕事で考えるならばそれは、
税務申告をするという面倒の解消であり、
経理を代行する(私はやってませんが)という時間の節約であり、
経営の悩みを取り去るという、精神的負荷の除去でもあります。
こういった「いかに負を解消するか」という価値に意識を向けることで、
自社の提供する価値をさらに高めていくためにはどうすれば良いのか、
ということを考えやすくなるだろうと思います。
「夢の実現」
もう一つの切り口は、「夢の実現」です。
先ほどの「負の解消」はマイナスをゼロにもっていく価値提供ですが、これは
ゼロをプラスに持って行くものです。
「夢の実現」という言葉がなんだか大げさに感じられるのであれば、
「幸福の提供」でもいいかもしれません。
私は月に一度、京都に経営の勉強会に行っているのですが、
その都度必ずと言って良いほど、ランチに立ち寄るうどん屋さんがあります。
勉強会よりもそのうどん屋を楽しみにしている、
と言っても過言ではないほどです(笑)。
そして食べ終わってお店を出るときに、
毎回とても幸せな気持ちにさせてもらえます。
1000円足らずで月に一度こんな幸福感を得られるのは最高だなと思うのですが、
これが「幸福の提供」なのだろうと思います。
つまり商品サービスを通して、
顧客が考える夢の実現に近づくことができたり、
普段は得られない幸福感を得ることができるようにする。
これが「夢の実現(または幸福の提供)」としての価値提供です。
先ほどの高級時計なんて、まさにこれですよね。
ただ単に正確な時間が欲しいのではなく、
その時計を身につけていること、
もっと言うとそれを所有していること、
それ自体に幸福感を感じて、
満足感を覚えているんです。
「夢の実現」というとBtoCのイメージが強いですが、
これはBtoBにも当てはまります。
自社の商品提供により、
その取引先が実現したいと思っていることができるようになることや、
コンサルタントを通して取引先のビジョンへの道しるべができあがる、
といったことも「夢の実現」です。
マイナスをゼロにもっていくことは、
顕在化している負を解消することですが、
潜在的なマイナスはそもそも相手方が負であると認識していないことですから、
これを解決してあげることは
ゼロをプラスに持って行く価値提供ということになります。
さて、皆さんの事業における商品・サービスは、
顧客にどのような「夢の実現」を提供しているでしょうか?
どのような「ゼロからプラス」を生み出しているでしょうか?
今提供している商品を通して、
こういった価値を提供することはできないでしょうか?
そんな切り口で自身の商品について見直してみたり、
新たな商品開発に取り組んでみると、
商品の機能ばかりに目を向けていたときとは全く違った、
本来の顧客の求める「価値」を届けることのできる、
高付加価値な商品になることだろうと思います。
「負の解消」と「夢の実現」、
この両方を満たさなければいけないということではありません。
自社の商品の提供している価値とはどういったものなのか、
そしてその商品をさらに深掘りしていくためにはどのような考え方が必要なのか、
ということです。
「顧客に届けるものは、『価値』である」
「価値には『負の解消』と『夢の実現』がある」
「商品を通して、顧客にどんな『価値』を届けよう?」
これらのことを、ぜひ意識してまいりましょう。