愚痴を言わない。

経営者と対話をすることが仕事ですから、
よく経営者の愚痴に付き合わされることがあります。
しかしはっきり言って、愚痴は美しくありません。

内部環境に対する愚痴

税理士やコンサルの仕事をしていると、
よく経営者の愚痴を聞くことになります。
それを真っ向から否定しても建設的なことにはなりませんから、
上手に迂回して生産的な会話に持っていくようにするわけですが、
正直愚痴を聞かされるのは、
あまり気分のいいものではありません。

愚痴も二種類あって、
社内的な「内部環境」に対する愚痴と、
「外部環境」に対する愚痴があります。

そして、内部環境に対する愚痴で一番多いのは、社員に対するものでしょうか。

それをネタのように爽やかに話してもらう分にはいいのですが、
そこに社員に対する不満や不信などといったマイナスのものが込められていると、
「これはしんどいなぁ」
と感じます。

小零細企業においては、自社内での問題は、
その経営者自身が作り上げてしまったものに他なりませんから、
社内の愚痴をいうことは、
天に唾しているみたいなものです。

その状況を受けて、
「どうしていったら良いと思う?」
というのはわかりますが、
ただ文句を言う、ということでは
それは経営者の態度ではありません。

そしてそのような態度は、
必ず社員さんと接しているときに身体からにじみ出て
相手になんとなく伝わっているものだと思った方が良いでしょう。

そうなると、
経営者が「あの社員め」と思っているのと同じように、
社員も「経営者め」と思うようになり、
そこに二項対立が生じるという、
組織のあり方としては極めて非生産的な状態になります。

目的は社員を批判して自分の憂さを晴らすということではないはずです。

愚痴をこぼす、文句を言うという行動は、
組織のパフォーマンスを低下させます。
社員がこのような態度に出た場合、それはパフォーマンスを落とす行為を行っているということで
経営者はそれを正す必要がありますし、
それが正されないのであれば、その社員を会議の場から排除していく必要すら出てきます。

経営者自身がそのような存在にならないよう、
気をつける必要があるのではないでしょうか。

外部環境に対する愚痴

これも愚痴のパターンとして非常によく耳にします。
特に税理士の仕事をしていると、
税金に対する文句を聞かされることになります。

私が極力税務から離れた仕事をしていきたいのは、
もちろん「経営」という部分に焦点をあてることで、
その会社の改善や成長に直接関わりたいということが理由ですが、
このような文句を聞きたくない、というのも一つの理由です。

今でしたら、インボイス制度に対する説明をするたびに、
8割ぐらいの確率で愚痴を言われます。
基本、どこかで消費税の額が増えたり消費税を納める人が増えてしまう制度ですから、
気持ちはわかります。
私だって税金を支払うことが嬉しくてしょうがないわけではありませんからね。

しかしインボイス制度は
「本来の消費税のあり方に近づけよう」というものですから、
それに対して文句を言うのではなく、
今までその恩恵を受けていた人はラッキーだったね、で良いのです。

仮にそういった話しでないにしても、
こういった外部環境に対する愚痴の大きな問題点は、
「愚痴ったところで、その現状は1mmも変わらない」
ということです。

これを変えようと思うのであれば、政治運動を行うか、
自ら政治家になるかしかありません。

「石油が高くていろんな値段があがっている」
などというのも、この類いです。
その環境下で、非常に苦しい思いをされていることは、とてもよくわかります。
しかし、愚痴をたれても、周りにマイナスのオーラを放つだけで、
何一つ解決には向かわないのです。

むしろマイナスのオーラを放ってる分、
解決どころか良くない方向に進んでいるとすら言えます。

現状を受け止め、そのうえで何を行うか。

経営者として生産的な方向で物事を考えるのであれば、
内部環境・外部環境とも、それらを
「これが現状である」
と受け止めたうえで、
それに対してどのような手を打つか考えて、実際に行動に移すこと。

これが、前向きかつ現実的な方策です。

内部環境については、それは経営者が行ってきた経営の結果ですから、
逆に言うと自らの力で解決することができるものです。
外部環境については、
その環境の元で危機を乗り越えるために、またはその危機を無力化するために、
自社の経営資源を利用して何ができるか、ということを考えることです。

そちらの方向に進まず、
ただ愚痴をこぼしてそれに対する共感を得たい、ということであれば、
そこで思考は停止してしまい、
何一つ問題も課題も解決されることはありません。

経営者の方針に対して、
社員さんが「そんなんムリやん」などと言って愚痴をこぼしていたら、
経営者としては腹立ちますよね。
そうではなくて、
「どうやったら、できるんだろう」
という風に考えて欲しいですよね。

そんな後ろ向きな社員さんと経営者が
同じレベルであってはいかんと思います。

昨今のコロナ→円安→ロシア・ウクライナ情勢、
という三連発の悪環境が
経営にこれまでにはないレベルの強烈な陰を落としています。
そんな中でも結局は、
愚痴だけをこぼして何も行動を起こさない会社から
順番に酷いことになっていきます。

そうやって倒産した場合それは、これらの悪環境の影響だとされてしまいがちです。
もちろんその側面があることは否定しませんが、
まずは経営者自身がそれに対してどのように行動したのか、
という経営者の問題であると思うのです。

こんな状況だからこそ現状を正面から受け止めてその影響を冷静に分析し、
その影響を最小化する方策を考えていくことこそが、
経営者の仕事です。

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