「極端」に学ぶ、その1

あるマンガの登場人物が言ってました。
「ストレートは相手の後頭部のさらに後ろを狙って打つらしい」
ボクシングマンガでもないマンガの登場人物が「らしい」と言っているあたり、
本当にそれが正しいのかはわかりませんが、
「それくらい行き過ぎるのが、効果が高い」
ということには共感できます。
それがちょうどいいのかどうかはまた別ですが。

今回はそんな「極端」から学ぶ、その1です。

20年間でたった231例の、ライム病。このグラフの奈良県の「たった一人」は、この私。

医療現場に学ぶ

私はこれまでの一生で一度だけ、
比較的長期(2週間程度)の入院を経験しています。
もう8年ほど前になりますが、
ライム病から髄膜炎を発症しての入院です。

ちなみにライム病は私が奈良県で初症例。
レアな体験をしました。

そのとき病室でベッドに横たわりながら、
その状態でもできる範囲の仕事をし、
自分自身に対する診断からその治療に至るまでの
病院の動きや仕組みを、
経営者目線・コンサル目線でずっと見ていました。

そして、これはすごいな、よくできてるなと感心したものです。

病院は、人の命がかかっています。
判断一つ間違えても人が死にますし、
情報共有一つミスっても、場合によって人が死にます。

「人の死」というこれ以上ないリスクを最小限に抑えるために
その仕組みは作られていますから、
当然それは、とても良くできているわけですね。

これをそのまま通常の企業経営に持ち込むのは、
「そこまでしなくていいだろ」という意味で「極端」なのですが、
逆にその一部でも経営に取り入れることができれば、
それは素晴らしいと思うのです。

看護師が患者との接点のほとんど

患者に対して、もちろん最初は医師が診断をくだすわけですが、
その後入院してから、私との接点があるのは、
ほとんど看護師さんです。

当然看護師さんも非常に高い技術と知識を有したプロフェッショナルですが、
私の治療に対して最終責任を負っているのは、
担当医師であるはずです。

しかし日常の私に対するケアは、
そのほとんどが、看護師によってなされているのです。

これは凄いことだな、と思いました。

さらに、やってくる看護師さんは一人ではなく、
毎日とっかえひっかえ違う人がやってきて、
私のケアをして帰って行きます。
もちろん若い人からベテランまでさまざま。

そのどちらであっても、患者目線からは、
さほど遜色ない対応がなされます。
(注射の上手・下手は明確にありましたが)

この場合、会社に置き換えると、
医師は経営者や幹部、
そして看護師は現場の担当者、ということになるでしょうか。

そして現場の仕事は誰がやっても
ある程度一定水準のサービスが提供されるのです。
「全体の情報共有」
そして、
「業務の標準化」
が素晴らしく行き届いているな、と
その仕組みに心の底から感心しました。

電子カルテとカンファレンス

現実の経営現場でもそうですが、
業務を標準化しようとしても、
やはりある程度のイレギュラーは発生しますし、
特殊な事例というのは少なからず出てきます。

それを全て「標準化」しようとすると、
それはそれは膨大なマニュアルになって、
それはもはやマニュアルとは呼べないものとなってしまうでしょう。

ですから、標準化というものは
ある程度のところで止めておく必要があります。

一から百までマニュアルというのは、
通常考えられないものなのです。

ただ、だからといってそのままにしていると、
特殊事例が出てきたときに、
担当者が「何をどうしたらいいのか」というところで悩んで
何もできなくなります。

これを解決しているのが、
医療現場では「カルテ」と「カンファレンス」なんじゃないかと思います。
医療現場における「カンファレンス」とは、
患者の担当者が集まって治療方針を定め、
情報共有を通してよりよい医療ケアを実現するため行う
打合せ・会議のことです。

ここで全体の方針を定めて共有するからこそ、
各担当者は、自分の役割が明確になって、
患者に対してやるべきことがはっきりします。

そして現場での患者との対応・検査などの情報をカルテに記載することで、
その内容がほかの担当者に正しく伝わり、
その後の治療に生かされていきます。

特に今はほとんどが電子カルテですから、
その情報は瞬時に、
すべての担当者がいつでも見られる状態になっているのです。
これは、複数の役割の異なる担当者が一人の顧客に対応するような業種では、
そのまま活用できる仕組みです。

マニュアルがあったとしてもそれだけでは、
それぞれの案件の特殊性に対応できませんし、
方針が定まっていても、情報共有がなされていないと
各担当者は仕事になりません。

カンファレンス(担当者会議)と電子カルテ(情報共有のための顧客台帳)。
この2つを実装し、正しく機能させることが、
最大のポイントです。

電子カルテといっても、そんな大層なものではありません。
クラウドを活用すれば、比較的容易にできますよね。
エバーノートでも、GoogleSpreadsheetでも、
ちゃんとフォーマットを定めて記載して蓄積すれば、
それは立派なカルテになります。

「複数の担当者で、特定の顧客に対応する業種」の方は、
一度自社での活用の仕方を考えてみていただけたらと思います。

ちなみにこの医療現場の様子は、私が
入院ベッドの中とネットの中から収集しうる情報で想像したものですから、
実際には異なる部分もあるかもしれません。
そこはどうぞご了承くださいませ。

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