社内に経営者の家族がいる。
同族会社ではままあることです。
近い関係だからこそ良いところはありますが、
近い関係だからこそ悪いところがあります。
会社内で展開される家族ゲンカに、いいところはありません。
会社の空気が悪くなる.
同族企業の場合、経営者の家族や親戚が
会社内の役員や社員として働いていることが
普通にあります。
夫婦であったり、親子であったり、兄弟であったり、
その形態はさまざまです。
私の会社でも、
妻が一社員として仕事をしてくれています。
そして税理士や経営コンサルの立場でこのような会社に関わると、
家族がケンカをしている姿を、比較的高い確率で見かけます。
(ちなみにうちは極めて円満です)
近い関係だからこそ、腹を割って話せることもあるかとは思うのですが、
逆に近すぎるが故に、容易に感情的なものになってしまいます。
私のような外部の人間がそばにいるところでも
平気でケンカが展開されるわけですから、
日頃はおそらくもっとヒドイことになっているでしょう。
そしてこれは、会社にとって百害あって一利なし。
家族にとってはそれが日常なのかもしれませんが、
その場に居合わせる社員さんたちからすれば、
迷惑この上ないことです。
入社して間がない社員さんは、
びっくりもするでしょうし、
「なんだこの会社は」と思うことでしょう。
そしてそんなことに慣れきってしまっている社員さんは、
きっとその様子をみて
「また始まったよ」と呆れていることだろうと思います。
いずれにしても会社の空気は悪くなりますし、
経営陣に対する求心力も失われてしまいます。
会社が前に進まなくなる
経営者の家族が会社にいる場合、
その人たちは同じく経営陣に入っているか、
もしくは各部署の中で重要なポストについていることが多いでしょう。
そして複数の家族が会社にいる場合には、
それぞれが別々の部署の主要な役割を果たしています。
そんな中で家族同士のケンカが絶えないと、
当然のように組織はうまくまわりません。
例えば私が商品開発部のトップにアドバイスをしたとしても、
その兄弟である工場長に試作をお願いしても、
ケンカになって実行されない、
などということが普通に発生します。
つまり、会社内の組織間での横の連携が
全く取れなくなってしまうのです。
家族間でなく他人同士でも同じようなことになることはありますが、
経営者がそれを指摘し、指示をすれば
いやいやながらも動き出します。
しかし経営者の家族であれば、
経営者の指示すら疎ましくてケンカになったりします。
会社は、その組織内の変化・改善の積み重ねによって成長します。
ですからこれでは日々の改善は全くなされず、
組織としての成長は完全に阻害されてしまうのです。
こんなケースでは仕方がないので私が「緩衝材」として入り、
私が議長になって会議を行い、決定事項を確認して、
次回までに決まったことを実行してもらう、
ということをすることもあります。
コミットを家族間ではなく、私との間でしてもらうことで、
多少は前に進むようになっていくのです。
正直、あまりやりたい仕事ではありませんが(笑)。
家族間だけではお互いいがみ合ってケンカにしかならないようだと、
経営は1mmも前に進みませんので、
自身の会社がそんな環境になっているなと感じるのであれば、
コンサルなど第三者に入ってもらうようにしましょう。
誰かが大人にならねば。
ただ正直な話し、これは非常にレベルの低い話しで、
人によっては、
「本当にそんなことがあるのか」
と思われるかもしれません。
しかし会社組織よりも自分の感情を優先してしまう人は、
意外に多くいるものです。
そしてそのケンカは明確に誰が悪い、ということではないのが一般的です。
もちろん「主にこの人が悪いな」というのもありますが、
完全にその人だけかというと、決してそんなことはありません。
だから「喧嘩両成敗」というのでしょうね。
私が毎朝読んでいる、
「森信三先生 一日一語」という本に、こんな一節があります。
『夫婦のうち人間としてエライほうが、相手をコトバによって直そうとしないで、相手の不完全さをそのまま黙って背負ってゆく。夫婦関係というのは、結局どちらかが、こうした心の態度を確立する外ないようですね』
人間としてエライかどうかは置いときまして、
夫婦だけでなく、家族間の絶えないケンカを収めるためには、
そのときそのときで、どちらか一方が感情的にならず、
言葉を選んで、大人になるしかありません。
場合によっては、その役割を果たすのが
特定の一人であり続けるかもしれません。
強烈にストレスで、とても大変なことかもしれませんが、
そうでもしないと組織がまわらないのであれば、
そうしてもらうほかありません。
同族企業と言っても、
そこには家族以外の社員さんも働いています。
経営者家族のせいで前に進まず、成長しない会社に、
社員さんを巻き込んではいけません。
ぜひどなたかお一人が、
「よし、自分が黙って背負っていこう」と
覚悟を決めていただけたらと思います。
そしてそのストレスは「愚痴」という形ではなく、
別の形で発散するようにしましょう。
言葉には魂が宿ります。
愚痴をこぼしてそれを他人が共感すると、
その不満は自身の中で増幅し、
ストレスは増大することになりますからね。