機長の事故率は副操縦士より高いらしい。

最近読んだ本で、飛行機の事故率は
機長が操縦しているより副操縦士が操縦しているときの方が低いそうです。
このことが示唆していることについて考えたいと思います。

機長の方が事故率が高い。

普通に考えれば、機長の方が副操縦士よりも、
圧倒的に操縦技術・判断力は優れているのが一般的ですし、
もちろんそれは実際にその通りです。

これまでに積み重ねてきた経験・知識から考えて
当然のことでしょう。

しかし、実際に過去の航空機事故の統計から確認してみると、
機長自身が操縦しているときよりも、
副機長が操縦桿を握っているときの方が、
圧倒的に事故率は低いそうです。

この事実だけ聞くと、非常に不思議な話しですよね。

二人で操縦することの必要性

それではまず、
なぜ飛行機を操縦するときには、
機長と副機長が同席しているのか、ということから考えてみます。
私は飛行機操縦の経験も知識もありませんから、
不確かな推測かもしれませんが、
おそらく
・不測の事態への対応
・副操縦士への指導と経験UP
・意思決定に対する相互チェック
といったところなのだろうと思われます。

このうち一つ目と二つ目は置いておくとしまして、
問題は三つ目です。

飛行機は判断を間違ったら落ちてしまいますから、
より的確な判断をするために、
互いの判断や行動に対して相互にチェックして、
問題がありそうだなと思ったときには、
互いに指摘することで、
よりクオリティの高い意思決定ができるようになっています。

機長の事故率が高い原因

このように互いにチェックし合って、
問題があるときにはそれを指摘し合う、ということで
意思決定の質を担保しているということですから、
副操縦士が操縦桿を握っているときにはどんな状態が生じているかというと、
この「コクピット」という狭い狭い組織の中で、
組織上の地位が高い機長が副操縦士に対して問題を指摘をすることは、
非常に容易に(というか当然のように)行われ、
それによって、互いのチェック機能が適切に働いています。

しかし機長が操縦桿を握っているとなると、
少し状況は異なります。

人間誰しも、組織上、上位の人間に対して、
その問題や間違いを指摘することは、なかなか困難です。

さらには、
「機長の判断は自分の判断よりも常に正しい」
という思い込みから、
「何かおかしいが、機長のやっていることだから、これで間違いないのだろう」
と判断してしまうかもしれません。

つまり、副操縦士が操縦しているときは、
操縦桿を握っている手は一人分ですが、
それに対して判断力は二人分ということになります。

しかし機長が操縦しているときには、
操縦桿を握っている手は変わらず一人分ですが、
機長に対して意見を述べる、ということができなければ、
判断力は実質一人分なのです。

いかに機長の方が判断力が優れているとはいえ、
一人分は所詮一人分ですし、
実際に操縦していないからこそ得られる、客観的な判断力を
反映させることができません。

わざわざ二人という「組織」として運用している意味が
なくなってしまうのです。

経営者の仕事に置き換える

この飛行機事故の統計の例は、
上長が一人で判断するより、
組織で意見を出し、正しく指摘をしあって判断する方が
より正確な意思決定ができることを示唆しています。

それでは会社はどうかというと、
経営者一人でやっている会社は、
一人で何もかも判断せざるを得ませんが、
たとえパートさんであるとしても
「組織」になっているのであれば、
広く意見を求めたうえで議論し、
その中から経営者が最終決断をする方が、
より確度の高い決断ができる、ということです。

もちろんこれは社員さんの意見を全て採用するということではなく、
ちゃんと意見を聞いたうえで、
公平客観的な視点で最終的な意思決定をする、ということです。

特に組織が大きくなればなるほど、
現場のことは経営者の目に届かなくなりますから、
経営者だけの考えで判断することは
現実とのズレが生じる結果となってしまいがちです。

ですから、経営の現場で、より正しい意思決定を行うためには、
社員さん・パートさんの隅から隅まで意見を集めること、
そして忌憚なくそのような意見を具申することができるような
環境を整えることが大切です。

いかに、「みなさん、意見があったら言ってください」
と伝えていても、
経営者に対して自由にものを言いにくい組織であれば、
実際にあがってくる意見は悪い意味での忖度の塊となってしまうでしょうし、
「実は意見あるけど、ありません」という状況が生まれてしまうでしょう。

情報や知識というものの価値が極めて薄れてきている現在では、
経営者自身のもつ知識・経験だけで経営を推し進めることは、
とても心もとないもの。

できるだけ広く意見・情報を求め、
その中から意思決定を行うことが大切だろうと思います。

どんな脳みそでも、その数は多いに越したことはないのです。

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