歯車であることに誇りをもつ。

歯車であることに誇りをもつ。

組織の中で「歯車」というと、
「自分なんていなくてもいい存在」
という否定的な意味合いで使われますが、
歯車って結構大事です。

歯車の意味。

昔、私が小学校高学年や中学生だったころ、
動かなくなった器械を、なんとか治せないものかと分解するのが好きでした。
昔のものは結構シンプルな作りですから、
とりあえず分解して仕組みを理解することで、
なんとなく治すことができるものも多かったように思います。

あるとき何かの拍子に目覚まし時計の針が動かなくなって、
修理を試みようと分解してみました。
歯車の位置がちょっとずれて、動かなくなっていただけでしたので、
それを正しい位置に戻して無事、時計は動き出しました。

で、元通りに戻してみると、
一つネジが余っていることに気が付きました(笑)。

「あら?ネジ一個あまってしもた。でも時計は動いてるしまぁいいか」
ということで、
それ自体はあまり気にしなかったのですが、
その時ふとこんなことを思いました。

「組織の歯車っていうけど、
 よく考えたら歯車ってどんな小さなものでも
 なくなったらその器械は動かない。
 でもネジは何本かあまっても動く。
 こんなときの適切な表現は
 『歯車』じゃなくて
 『ネジ』なんじゃないか」

まぁ正直どちらでもいいとは思うのですが、
この「歯車」という言葉には
「いくらでも替えが効く」
という意味もあるんじゃないかと思います。

そしてネジがあまっても時計は動いていましたが、
確実に強度はいくらか低下しているでしょうし、
たまたま問題ない部分のネジだったからいいものの、
一本ないだけで全体が瓦解してしまうような大切なネジもあります。

結局ネジにしても歯車にしても、その重要性の程度はあれ、
その器械がちゃんと機能するために必要だからこそ、
そこにあります。

大切なネジであることに徹する。

会社組織で考えたときに、
経営者はその組織の大黒柱です。

経営者が抜け落ちてしまうと大ダメージどころか、
組織によってはその瞬間全く機能しなくなることもありえます。

だからこそ経営者は目立つし、
給料も高いし、
いい会社を作ったときには、
「すごい経営者だ」と
外部から評価もされます。

しかしそれはやっぱり背負ってるものが大きいから。

自分になにかあったら会社の成長は止まるし、
多額の借金の保証人にもなっているわけです。
ですから、社長は別にいい思いばかりしているわけではありません。

しかし、経営者一人の会社はさておき、
社員が何人かいるような組織になると、
経営者一人でその会社が回るわけではありません。

建物には大黒柱だけではなく、
そこには脇柱も金具も釘もネジも必要なわけです。
そしてそれらが重要な仕事を果たしてくれればくれるほど、
その建物はしっかりとした建物になります。

ですから、釘もネジも、大切なのです。

ネジであることは、
それ自体何も卑下することでも価値がないことでもありません。

自分はネジだから、と卑下するのではなく、
自分はネジだ!ということにプライドをもってそれに徹してくれ!

ということです。
経営者は、もし自分のところの社員さんに、
自分の仕事での役割に疑問を抱いているような人がいれば、
そんな言葉を投げかけていただきたいものです。

いなくてもいい存在で、良い。

先ほど、
「替えが効く存在である」
ということにも触れましたが、
この「替えが効く」ということも、
それ自体なんら卑下することではありません。

逆に「替えが効かない」ということは、
あなたがいなかったら本気で会社が回らない、
ということです。
そんな会社は、
社員さんがちょっとした長期休暇すらとれない、
ということを意味します。

替えが効かないよりも、替えが効く方が、
組織のあり方としては健全なのです。

逆に自分の重要性が低下するのを恐れて、
人に自分の仕事を共有するのを嫌ったり、
部下に仕事を任せることを嫌がる人がいます。
こんな人こそ、
会社の成長を阻害し、
会社の安定感を乱す人ですので、
どれだけ能力が高かろうと、問題です。

経営者は、ある程度のサイズの組織にしていくのであれば、
誰かがいなくなってもちゃんと替えが効くような組織を
目指さなければなりませんし、
社員さんも、
どれほど自分の仕事が他の誰でもできる替えの効く仕事であろうと、
「自分の役割はネジだから、組織のためにネジであることに徹するんだ」
という思いをもって仕事をしてくれれば、
その人は組織にとって、極めて貴重で大切な人なのです。

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