先日、オリンピックで日本のカーリングチームが銀メダルを取りました。
スキップ(キャプテンみたいなもの)をつとめる藤沢五月選手の座右の銘は
「らくばる」らしいです。
なぜ「頑張る」ではないのか。
この「らくばる」という言葉、
本人の解説をきいたことはないので、その本意がどういったものかはわかりません。
しかし私が「頑張る」とか「努力」とかいう言葉に違和感を覚えるのと同じ意味合いが
ここにあるように思えて、とても共感しています。
「頑張る」とか「努力」は大切です。
めちゃ大切です。
自分の夢であったり、それほど大げさなことでなくても、
自分の実現したいことを形にするためには、
そこに「頑張る」や「努力」ということは言うまでもなく絶対に必要なことです。
そして人間若いうちに一度は、
死ぬほど頑張ったという経験をしておいた方がいいと思っています。
若い人に説教してるおっさんみたいでイヤですが。
やはり、その本気の努力の向こう側にしか、
自分の本当に手にしたいものは落ちてないんだろうと思います。
だから「頑張る」「努力」という言葉に私が違和感を感じているからといって、それは
「頑張らない」とか「努力しない」とか、
あらゆることから目を背けてダラダラ生きるとか、
ということではありません。
しかし、
「頑張る」とか「努力」という言葉のニュアンスの奥に、どうしても
「ムリをする」とか
「義務感」とか
「やらされている感」とかいうものが
感じ取れるのです。
一つの言葉でも文脈によってそこにはいろんなニュアンスが含まれますから、
この言葉が常にこれらのニュアンスをまとっているわけではありません。
しかし、その「ムリをしている」という意味合いを含む努力や頑張りは、
決して自分自身の人生を本当に豊かなものとしていくためのものには
つながっていないように思います。
自然体で取り組めるかどうか
私も47年生きてきて、いろんな形の努力をしてきました。
18歳くらいまでは目の前の壁から目を背けて生きてきましたが、
それ以降はそれなりにいろいろ頑張って生きているように思います。
そしてその経験の中で確実なのは、
自分にとって自然体なものであるほど結果がともなう、
ということです。
やってて、自分自身、
「つらいなー」
「しんどいなー」
と思っていることは、
そこに注いでいる労力のわりに、全く身についてきません。
「つらい」「しんどい」と思っているということは、
それは身体が拒絶しているということですから、当然ですよね。
逆にそこに取り組んでいることが
ハタから見てめちゃ努力をしているように見えているけれども、
本人はその状況を楽しんでいて、
それが自分の生活の一部くらいにしか考えず、
楽しみつつ真剣に取り組んでいるものは、
自分自身飛躍的に成長しますし、
考えられないような、ものすごく大きな成果につながります。
しかも本人はそれを「頑張った!」とか「努力した!」とかあんまり思っていない。
何かにつけ、これがとても大切なんだろうな、と思います。
その頑張りには悲壮感やストイックさというものが感じられないのです。
だから仕事でも経営でも、
今やっていることが本当に楽しくて、自然体で使命感をもって取り組めているものかどうか、
ということが、とても大切なんじゃないかと思います。
藤沢選手だって、オリンピックで銀メダルを取るほどの偉業を達成されたわけですから、
頑張っていないわけがないですし、努力を重ねていないわけがありません。
逆にめちゃ頑張ってるし、めちゃ努力をしていることは間違いないでしょう。
私なんかよりも遙かに努力を積み重ねてきていることでしょう。
それでも「らくばる」という言葉を自分の座右の銘としているということは、
「ムリがある」頑張りを否定したいんだろうな、と思います。
そして頑張って練習に取り組んでいるときにふと自分を追い詰めてしまって
しんどくなってしまうようなことになったときに、
もっと自然体で楽しみながら頑張らなきゃ、という場所に戻ってくるために、
これを座右の銘にされているんだろうな、と思いました。
私の妄想かもしれませんが。
組織自体が「らくばる」になれているか。
「頑張る」とか「努力」とかというのは、個人の思いと行動に帰属するものですから、
個人の問題と捉えがちです。
しかし、人間の身体の中にもいろんな組織がそれぞれの役割を果たして
一つの人間を形づくっているように、
会社組織も一つの生命体と捉えることができると思うのです。
そう考えたときに、この会社組織自体が
「自然体の努力」のもと経営を行うことができているかどうかというのは、
とても大切なことなのだろうと思います。
つらく苦しい経営の先に、
大きな成果が生まれるとは思えませんし、
それがその組織に所属する一人一人の豊かな人生につながっていくとは
到底考えられません。
組織全体が頑張っているけど、
全然ムリがなくて、
とても自然体で、
なんだかワクワク前に進んで行ってるぞ、
という状態をいかにして作り上げていくのか。
おそらくこれが経営者の仕事なんじゃないかと思います。
そして組織は結局はそこに所属している人たちの集合体ですから、
その個人個人の人生がどれだけ充実しているか、
ということがとても大切なんだろうと思います。
上司や経営者は部下や社員さんのプライベートに
自分から踏み込んでいくことはできませんし、してはいけませんから、
せめて仕事の場だけでも、
「明日も行きたいな」と思ってもらえるような会社にしていこう
とすることが大切です。
どうすればもっとみんな
愉しく働けるんだろう。
気分良く働けるんだろう。
経営者はそこに気を配り、ぜひ
「ストイックな会社」ではなく
「らくばる会社」を目指していただけたらと思います。
それが会社自体の成果と、
そこで働く一人一人の豊かな人生につながっていくのだろうと思います。