なかなか、現状の事業領域で利益を出せない方がおられます。
そんな人が隣の芝が青く見えて新しい事業を始めても、多くの場合うまくはいきません。
その理由を説明したいと思います。
事業領域はどのように決めるべきか
自社がどのような事業を行うことで
顧客を創造し続けるのかを決めることは、事業の入口です。
どんな事業をするか決まってなければ事業ははじまりませんから、当然です。
このように、自身が現在から将来にわたって、
どのような事業を行っていくのか考え、思い描くことを、
「ビジネスシナリオ」といいます。
この「シナリオ」がよくできあがっていると、
そのシナリオに基づく事業はスムーズに進んでいきますが、
シナリオのできがよくないと、
役者は踊らず、ろくな事業になりません。
それでは、良くできたビジネスシナリオがどのようなものであるかというと、
そのシナリオによって描かれるビジネスが、
「求められること」
「したいこと」
「できること」
の接点にあるように、組み立てられているときです。
社会が求めていないことは、
どれだけ自分がやりたいことであっても
趣味にはなりますがビジネスにはなりえません。
どれだけしたいことであっても、
その能力に欠けていれば事業はうまくいきません。
また、自社のできることであっても、
その事業がすきになれなければ続けられません。
この3つの要件をうまく満たしていることが、
自社のビジネスを考えるうえで、とても大切なのです。
隣の芝に当てはめてみる。
それでは、青く見える隣の芝に、
この要件を当てはめてみましょう。
まず「できること」ですが、
これは自社の「強み」とも置き換えることができます。
他者に比べて抜きんでているからこそ
それは自社の事業として成立するのです。
その隣の芝は果たして、自社の強みが活きるものでしょうか?
何だか隣の会社は簡単に儲けているように見えるので、
自分でもできそうな気になってしまいますが、
現実はそんなに甘いものではありません。
現在の自社の事業と直接関りがないようなものは特に、
自社の中にそのノウハウは蓄積されていませんから、
決してそんな簡単にことは運びません。
そもそも本当に簡単に儲かるものなのだとしたら、
みんなが手を出してみんなが儲けているか、
みんなが出来るのですぐに儲からなくなる仕事です。
次に「したいこと」ですが、
果たしてその隣の会社の事業は、
その会社、特に経営者が「やりたい」と思っている事業でしょうか。
とても青く見えるので、その事業を自分はやりたいのだ、
と勘違いしてしまいますが、
それはその事業を「やりたい」のではなく、
「簡単に儲けたい」と思っているに過ぎません。
「儲けたい」という思いからその事業を
「やりたい」と思い込んでしまっているのです。
純粋にその仕事を通して人に喜んでもらおう、などとは
思ってはいないのです。
最後に「求められること」ですが、
隣の会社がその事業をしていて、現に儲かっているのであれば、
それは確かに求められることなのでしょう。
しかしいかに社会に求められているものであったとしても、
自分にその事業を行う能力がなく、特に得意というわけでもないのであれば、
その事業を通して違いを生み出すことはできません。
その事業が根本的にやりたいことでなければ、
その事業を深く突き詰めていくこともできませんし、
長く継続することもできません。
そもそも、隣の会社が現状その事業で儲かっているということは、
これから先を考えたときには、すでに遅れているのかもしれません。
その場合、その事業が社会に求められているかということについても、
微妙になります。
このように、隣の芝が青く見えて、その事業を自社で行ったとしても、
それは非常に出来の悪いビジネスシナリオであることがほとんどなのです。
他人がうまくいくから自分もうまくいくと思ったら大間違い。
それは上記のような理由があるからなのです。
青い芝を維持する努力。
結局は隣の芝が青いのは、
隣の会社が、その芝を青い状態で維持し続ける努力をしているということに
他ならないのです。
芝を青い状態で維持することは、大変な作業です。
ただその事業を行うことが好きだから、やりたいことであるから、
それほど苦も無く維持することができるのです。
本人はそれほど努力をしているつもりはないように見えて、
実は大変な労力を注ぎ込んでいるのです。
その事業自体ではなく、お金に目がくらんだ人に、その努力はできません。
そして青い芝を維持している会社は、
その事業を行うこと自体が、得意なことであるから、
簡単に青い芝を維持できているように見えるのです。
本当はその状態を維持することが難しいことであったとしても、
そこにその会社の持っている技術力やノウハウ、
経験と知識がそこに活かされているからこそ、
一見楽に維持できているように見えてしまうのです。
それだけの技術力等を身につけるまでには
相当の時間と努力が必要だったかもしれません。
しかし傍からはその過去の努力の部分は
すっかり横に置いとかれてしまっているのです。
このように青い芝は何も簡単に青く維持されているわけではなく、
その事業に取り組んでいる会社の不断の努力(本人がそう感じているかは別として)によって
作り上げられているのです。
自身が心血を注ぐことすらできない事業は
うまくいくはずがありません。
人間お金には目がくらんでしまいがちですが、
そこのところを冷静に見極めることが大切なのです。