事業の定義が、有効であるためには。

タイトルはドラッカーの著作からの一節です。
わかりにくい表現ですが、要は、
「事業がちゃんと事業として成立するためには」
ということです。

ペンギンは、本ブログ内容に、一切関係ありませんw。

事業の定義が有効であるための条件

先ほどの書き方でもまだわかりにくかったかもしれませんが、
誤解をおそれず意訳するならば
「その事業内容で事業として稼ぐことはできますか?」
ということです。
そして、事業が有効であるための定義として、
ドラッカーは次のように述べています。

事業の定義が有効であるには、4つの条件を満たす必要がある。経営環境・使命・強みについての前提が、 現実と一致しなければならない。 それらの前提が互いに合致しなければならない。 周知徹底されなければならない。 そして、たえず検証されなければならない。


これについて、一つ一つ私なりの解釈を。

経営環境・使命・強み

「経営環境」とは、
いまその事業者が経営を行うにあたって置かれている環境、
つまり外部環境です。
社会経済・業界業際・消費者生活者です。

そして「使命」は、
これら外部環境から導き出される、「社会が求めること」であり、
その会社が果たすべき役割です。

「強み」に関しては言うまでもないですね。
その会社が保有している固有の強みのことです。

そしてこれらは、会社がどんな事業を行うか、
ということの前提となります。

いま現在、こういった経営環境にあって、
自社にはこんな強みがあって、
社会がこんなことを求めているので、
それを満たすために自社はこんな役割を果たすことができる。

これが「事業」ということです。

・4つの条件

「経営環境」「使命」「強み」
これら3つが4つの条件を満たしてはじめて、
事業は事業として成立するということですね。

条件① 現実と一致しなければならない

その考えている経営環境は
本当に現実の外部環境を表したものでしょうか?
その使命は、
本当に社会が求めているものでしょうか?
その強みは
本当に他社と比較して強みと呼べるものでしょうか?

単なる主観的な思い込みではないですか?
ということです。

事業の前提が現実とズレていれば、
当然事業はうまくいきませんよね。

条件② それらの前提が互いに合致しているか。

事業はこれら3要素の接点に生まれると
ドラッカーは定義付けています。

その「使命」は外部環境から導き出されたものでなければなりませんし、
その「使命」のうち、自社の強みが生かされるものでなければ、事業とはなりえない、
ということです。

そして逆に、その強みが本当に強みであるとしても、
それを社会が求めていなければ事業としてうまくはいかないのです。

条件③ 周知徹底されなければならない。

自社がどんな経営環境におかれているのか。
自社に与えられている使命がどういったものか。
自社の強みはどういったもので、
それを事業にどのように活用するのか。

これらが社内で共有され、
共通認識となっている必要がある、ということです。

社員にとって自社が行っている事業内容は、
普通に仕事をしていればわかることですが、
「なぜこの事業を行っているのか」ということは案外わかっていません。
これがわかっていないと、
事業を進めていくにあたってどのように意思決定すべきか、ということがブレますし、
個人ごとに解釈が違ってきます。
全社が向かうべき方向性・コンセプトを共通認識とするためにも、
「なぜ、この事業を?」という周知徹底は大切なのです。

条件④ そして、たえず検証されなければならない。

経営環境も使命も、そして会社の有する強みも、
時の流れとともに変化します。

経営環境については言うまでもありませんよね。
そして経営環境が変われば、求められるものも変化しますから、
使命は変わります。
そして事業活動を行う中で自社が新たに獲得する能力(強み)もあるでしょうし、
逆に外部環境の変化により、
これまで強みだったものが無力化することもあります。
こうして強みは内外の影響を受けてどんどんと変化していくのです。

どんどんと変化しているにも関わらず、
一度定義づけたこれらのものを、変化していないと思いこんで事業を継続すると、
気が付けばその事業が陳腐化している、
ということになります。

ですからこれらは常に検証し続けて、
その変化に応じて事業も変化させていく必要があるのです。
少なくとも1年に一度はこれらをゼロベースで見直して、
事業内容の再構築を行うようにしたいものです。

小零細企業にとっての、もう一つの「前提」

ドラッカーは事業の前提として、
「経営環境」「使命」「強み」をあげていますが、
私が師事した経営コンサルタントである故 池田重樹氏は、ここに

「したいこと」

を追加しています。

そして「使命」は「経営環境」から導き出されるものですから、
池田氏は、
「求められること(使命)」
「できること(強み)」
「したいこと」
の3点の接点を
有効な事業と定義しました。

小零細企業においては、この「したいこと」というのは、
とても大切なことだろうと思います。

小零細企業は経営者の思いや社員一人一人の考え・感性を
そのまま経営に即座に反映させることができるのが、強みです。
そして「したいこと」は、人が最もその能力を発揮できること。
逆に「したくないこと」は苦手なことでもあるので、
それを事業とするのはよくありません。

このように経営者や各個人の思いがそのまま色濃く表れるのが、
良くも悪くも、小零細企業の経営なのです。

そうであれば、せっかくですから
「したいこと」を事業にしましょう。

経営者のしたいこと。
社員のやりたいこと。
会社のやりたいこと。

それが本当にやりたいことであり、
それが社会の求めることであって、
自社の強みを生かすことのできるものなのであれば、
それは事業として立派に成立します。

ドラッカーの要素に入っていない、この「したいこと」、
ぜひ大切にしていただければと思います。

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